三
次に来日したのは、韓国で『龍ノ王』の運営リーダーをしていたというロン毛でヒョロッとしたYという男と、しっかり者風情のエンジニアでJという男の二人だった。初日はPの家に泊まったが、すぐウィークリーマンションを契約して二人をそこに住まわせることになった。
Jは本当に真面目な男で、サーバーのセットアップや、必要な管理システムの構築に何度も徹夜をし、例のAが放置した決済システムをも見事に接続して動かすところまでやってのけた。
どうしてそんなに会社に泊まり込んでまで仕事をするのかとJに聞いたところ、一緒に住んでいるYがウィークリーマンションに女を連れ込んでくるので帰りたくても帰れないのだという回答が返ってきた。たまに「帰ったフリ」をしている時は、知り合いの韓国人の家に泊めて貰っていたのだという。
一方Yは、オタクっぽいロン毛をバッサリ切り、スポーティーなカットにして髪染めをし、タンクトップに多分軍隊で鍛えられたのであろう隆々とした筋肉を光らせ、どこでそういう趣味が身につくのか、金のネックレスをジャラジャラさせるようになっていた。
Yは昼過ぎに出社して、当時韓国で流行していたネトゲ野球に興じ、夕食はコンビニ弁当で済ませ、その後Wowをプレイして深夜に帰るという生活を始めた。その間、仕事は一切していない。
そしてそんな日が続いたある熱帯夜、私はスタッフから「Yが警察に捕まった」という電話を受けた。
おおかた深夜徘徊で職務質問に遭ったのだろう、という予測どおり、Yはパスポート不携帯で日本橋警察署に身柄を拘束されていた。
当時ゲーム運営のディレクターをやっていたHくんが引き受けに行った。詳しい話を聞くと、Yは夜遊びが嵩じ、酔いもあり自宅のオートロックを開けることができず、仕方なく会社にやってきたが正面玄関が閉まっており、非常口から侵入しようとあれこれしていたところを近隣の住民に通報された、ということだった。
警察に捕まって多少は懲りたかと思ったのだが、Yはその後も悪行収まらず、元からいたウェブ担当の韓国人女子社員をたぶらかした上でWow仲間にして、会社でプレイ、家に連れ込んでは「プレイ」に興じていたようだ。
その頃Jは、銭湯に行ったついでに洗濯してくることなどを覚え、「住み込みエンジニア」として『龍ノ王』日本版がサービスとしてほとんど動くところまでやってしまっていた。
珍しくYが仕事らしい仕事をしたことといえば、ゲームの管理ツールのレクチャーである。一通りそのツールのレクチャーを運営スタッフにし終えた後、YはWowの世界に戻っていった。