【甘口辛口】
■3月10日
あまりにも非道い、とあえて漢字で表現したい。広島県府中町で昨年12月、中3の男子生徒が自殺した問題だ。学校側が「万引きした」という誤った資料をもとに「志望校への推薦はできない」と告げ、保護者にも伝えられた日に生徒は自殺した。町の教育長は「他に(自殺の)要因が見当たらない」と会見で認めた。
学校側は生徒が1年生のとき、別の生徒が起こした万引きを生徒の行為として記録。生徒指導会議で口頭で訂正したが、記録の内容を保存した電子データは修正せずそのままだった。個人情報保護に世の中が神経質になっている時代に、情報の取り扱いが信じられないくらいずさんだ。
この誤った記録をもとに担任は「間違いないか」と教室前の廊下で本人に確かめたという。廊下で聞くような話ではない。最初に別人と間違えた無責任教師、誤ったデータで進路指導した担任。教師が人の一生を左右することもある仕事と、どれほど自覚しているのか。濡れ衣を着せられ志望校への道を閉ざされた生徒の絶望感は察して余りある。
北方担当なのに「歯舞群島」が読めない大臣や、オバマ大統領について「黒人の血をひく奴隷」と暴言を放った参院議員もいる。それでも平気な顔で居座っているいまの政治の劣化は日本全体のタガの緩み具合を象徴しているが、教育現場のそれもご多分に漏れず相当緩んでいる。
1年生のできごとを3年生になっても勘案対象とし「ノー」を出すのなら機械でできる。「1年で問題があったけどよく頑張ったね」と見てあげるのが教師の裁量というものだ。正しい筋道から外れて起きた問題。教師は自分たちの非道さを悔い改めてもらいたい。(今村忠)