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「どうせ言っても先生は聞いてくれない」

全校集会に参加するため、学校に向かう生徒たち=広島県府中町で2016年3月9日午前、山田尚弘撮影

 広島県府中町立府中緑ケ丘中3年の男子生徒(当時15歳)が誤った万引き記録に基づく進路指導を受けた後に自殺した問題について、学校側がまとめた報告書が10日、開示された。報告書は、万引きがあった場合の面談など、内規に定められた手順をすべて怠っていたと指摘。また担任教諭の進路指導に関し生徒が「どうせ言っても先生は聞いてくれない」と保護者に打ち明けていたことも明らかにした。報告書は生徒の自殺に関し「学校としての責任がある」と結論づけている。

 開示された報告書は2月29日付で、約50ページ。坂元弘校長ら5人が調査してまとめた。

 報告書によると、万引き事件があったのは2013年10月6日。広島市内のコンビニエンスストアから、1年生の男子2人が万引きをしたと学校に電話があった。日曜日だったが、出勤していた教諭が店に出向き、2人の保護者を呼んで謝罪させた。教諭は翌7日、生徒指導担当の教諭に口頭だけで報告。生徒指導担当の教諭はパソコンに入力する際に名前を間違え、自殺した生徒の氏名を記入した。

 学校は内規で、万引きの報告があった場合には、生徒、保護者、担任、学年主任、生徒指導主事の5者面談や別室指導、奉仕活動などの指導をすると定めている。

 しかし、7日に1年生による校内暴力事件が発生。生徒指導担当教諭らはその対応に追われた。8日の会議で、他の教諭から氏名の誤りが指摘されたが、元データは修正されることなく放置された。本来なら実施されるはずの5者面談など内規に沿った対応はすべて行われなかった。

 一方、自殺した生徒は、進路をめぐる一連のやりとりについて「どうせ言っても先生は聞いてくれない」と保護者に話していた。保護者が担任と面談した際に明かされたという。これまでに、生徒が専願での高校進学を望んでいたのに対し、担任が万引きを理由に複数校を一般受験するよう勧めていたことが分かっている。報告書はこれについて「教職員の誰にも相談することはできなかった。このような思いを抱かせる不十分な教育相談体制になっていた」と分析している。【真下信幸、石川将来、安高晋】

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