マイナス金利の是非はまだ語れない
1月29日の「マイナス金利政策」導入以降、為替レートは円高、株価は低下基調で推移している。2月の終盤から若干の戻り局面を迎えつつあるが、楽観は許さない状況である。
2月4日、11日の当コラムでも言及したように、筆者は、マイナス金利政策は、日銀が、ゼロ金利の「壁」を打ち破って高値で国債を購入できるようにした点に意味があるのであって、近い将来におけるQE(量的緩和)拡大に向けた「布石」であると考えている。
ただし、これはあくまでも筆者の個人的な見解に過ぎないのだが、株式の「買いオペ」(ETFの購入枠拡大、もしくはバスケット取引でインデックスに連動させるなど)を拡大させていけば、QE政策はまだまだ有効であるし、出口政策にも有効であるし、マイナス金利政策を導入する必要もなかったのではないかとも考えている。
例えば、当コラムでも度々指摘した、1936年から1937年にかけての米国では、株価の急騰が将来の「バブル」につながるとの懸念が、FRBの出口政策を拙速なものにさせ、その結果、その後に禍根を残す出口政策の失敗につながった。
だが、株式の買いオペによる量的緩和の拡大であれば、株価の上昇局面で株式の売りオペを適時行うことは、「冷やし玉」(株価の過熱を抑えるために株式を売却する)としても有効ではないかと考えている。その意味で株式の買いオペは将来の出口政策を考えた場合にも有効ではないかと考えている。
だが、日銀は、株式の購入には積極的ではないようにみえる。その理由は筆者には伺い知ることができないが、何らかの制度的な制約があるのかもしれない。もし、そのような事情があるのであれば、国債買いオペの効果をより高める今回のマイナス金利政策は、「次善の策」としては評価できるだろう。
その意味で、筆者としては、マイナス金利政策は、従来のQQE(量的・質的緩和)の「代替手段」ではなく、あくまでも「補完手段」であり、これが、2%のインフレ目標実現に向けて機能するためには、QQEの拡大が必要だと考えている。従って、QQEの拡大が実施されていない現段階で、マイナス金利政策について評価をすることはできないのではないかというのが率直な意見である。
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