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〈はぐ〉保活の時代――勤め先が最後のとりで

2010年5月7日15時19分

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写真母親の小泊瑠美子さんが迎えに来ても、社内の保育所で楽しそうに遊ぶ長男の大ちゃん=東京・丸の内、越田省吾撮影

 スーツ姿の男女が闊歩(かっぽ)する横を、カートに乗った1、2歳の子どもたちがガラガラと通り過ぎる。東京都心のオフィス街で、そんな光景は珍しくなくなった。

 保育園に入れない待機児童が増えるなか、「人材確保とイメージアップに」と、オフィス内に保育所を開く企業が増えているからだ。千代田区内だけでも、文部科学省、日本郵船、新生銀行、リクルート、三井物産など。4月には、丸の内北口ビルに複数企業が利用を契約できる事業所内保育所も開業した。

 「ここがあったから復帰できた」。東京駅の近くにあるリクルートの社内保育所に長男の大(ひろ)ちゃん(1)を預けている同社社員の小泊瑠美子さん(32)は言う。

 昨年3月に長男を出産。今年4月の職場復帰に備え、2カ月後に会社から徒歩二十数分の中央区内のマンションに引っ越した。都心のため小児科が遠く、スーパーも割高。子育てに適した住環境とは言い難い。ここを選んだのは、保育園に入れなかったら社内にできた保育所が「最後のとりで」になると思ったからだ。

 予想は的中した。昨秋から認証保育所を見学したが、「40人待ち」はざら。認可保育園は第3希望まで申し込んだが、落選した。社内の保育所も初めは補欠だったが、3月に入って空きが出て、何とか4月に仕事に復帰できた。

 こども未来財団(東京)によると、昨年の時点で全国の事業所内保育所は3766施設。1997年以降で初めて増加に転じた。子連れでの電車通勤が大変だという声を受け、マイカー通勤を認めたり、お昼寝用のシーツなどを用意したりする施設もある。

 とはいえ園庭はなく、同年齢の子も少ない。地元で預け先が見つかるまでの「緊急避難所」的な役回りの施設が大半だ。リクルートの保育料は預ける時間によって月に7万〜9万円かかる。これまでの在園期間は最長で1年。「地元で見つけ、転園するのが原則」(広報部)という。

 連休中、小泊さんは地元に6月にオープンする認証保育所の説明会に行った。翌日、入園許可の電話。ひとまず、ほっとした。だが園庭はない。子どもの環境を考えると認可園はあきらめがたい。「保活」からは、まだ逃れられそうにない。(杉山麻里子)

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