有識者調査会の答申は、小選挙区6減、比例区4減というものですが、アダムズ方式による定数配分を求めるもので、小選挙区では実質的には7増13減の提案というものでした。
定数の不均衡是正は良いのですが、何故、定数自体を削減しなければならないのかということが実は一番の大きな問題です。
初めから定数削減ありきなのです。
議会による行政に対する抑制機能を考えるときは、定数削減は議会制民主主義の自殺行為でしかありません。
本来、憲法が予定していた行政と立法の相互の抑制機能は、議院内閣制(多数派が内閣総理大臣を指名する)と政党政治によって、議員が組織化されたために議会による抑制機能は低下が顕著となりました。
そのため重要なのが野党による抑制機能なのです。当然のことながら野党は少数派です。
定数削減と定数是正はもちろん異なる概念です。
定数不均衡が是正されると一番、損をするのは一番、議席の多い自民党、損をしているのは死票の多い野党となります。
「衆議院定数不均衡と定数削減の過ち 自民党は定数不均衡と死票によって支えられている」
これに対して、定数を削減して特をするのは比較第一党の自民党です。死票の多い小選挙区の削減であれば自民党が損をするということになりますが、比例区(衆議院、参議院)や複数区(参議院)では定数が少なくなることによって死票が増えるからです。
反面、死票が増えることによって一番、影響が大きいのは共産党、社民党です。
この問題が意図的にかごちゃごちゃに論じられることがあるので要注意です。
定数不均衡の是正のために議員定数を減らす必然性はありません。
議員歳費の問題も同様です。
小選挙区制導入と同時に政党助成法なるものができました。議員歳費とは別に政党に対して助成するというのです。
議員歳費は憲法上の根拠に基づくものですが、政党に対する助成についての憲法上の根拠はありません。お手盛りそのものです。
議員歳費が相応の額でなければならないのは当然のことです。議員としての活動にはお金が掛かりますし、この歳費がなければお金のない人たちは国会議員にもなれないということになります。
歳費は議員活動のためのものであって、労働者の給与とは全く異なります。
本年3月8日、名古屋市議の報酬増額が自民、民主、公明の3党の賛成多数で可決されました。
河村たかし市長の公約であった報酬削減ですが、ここに終止符が打たれました。
名古屋市民は、河村氏の主張する議員報酬の削減には共感していたようです。
しかし、本当にそれで良いのでしょうか。
生活できればいいという一般市民と同レベルにまで下げるという河村たかし市長の発想は、報酬を単なる生活費としてしかみていない暴論です。
議員報酬を自分の私的利益のために使える額は限られています。生活一般とすり替えるような議論の仕方は悪質です。
もっとも、今回の自民、民主、公明の3党による採決には様々な問題はありました。
「議員報酬増額問題の核心」(山本洋一のとことん正論)
この名古屋市議会の場合も議員報酬の引き上げと定数削減がセットになっていました。この定数削減は、議員自身が痛みを伴うみたい言い方に代表されていますが、そのようなことは事実に反するということです。
定数削減によって、どのような不利益が起きるのかという問題です。
名古屋市議会では、このようになっています。
「第二のポイントは「定数を削減して身を切るんだから、報酬を増やしたっていいだろう」という理屈の妥当性です。今回、定数を削減する7つの区の直近の選挙結果を見ると、最下位当選は共産党4区、減税日本2区、自民党1区となっています。」(前掲山本洋一のとことん正論より)衆議院選挙では比例区の削減を自民党などは声高に叫んでいますが、自分たちの議席は小選挙区制によって支えられているからです。
比例区は、数合わせの候補者を集めなければならないだけなので、比例区削減は何の痛みもありません。
今回、衆議院での議員定数不均衡問題で安倍自民党が定数是正に応じないのは小選挙区の削減の比重が大きいからだけです。
定数削減というときに「議員自身の痛み」というのは誤りであり、どの政党がどのような理由で反対しているのかを指摘しなければ、少数派を閉め出すことにしかなりません。
議員歳費と定数削減の問題、すべて少数派の締め出しに直結しています。
議員一般を念頭において削減せよ、というキャッチフレーズに乗ってしまっては、極論すれば、一番効率のよいのは代表者1人を選挙で選べばいいということになりかねません。
民主主義のコストは必要なものです。
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