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【大相撲】4年ぶりはなわVS琴奨菊 はなわの相撲ヲタク対談2016年3月9日 紙面から
10年間続いていた外国出身力士の優勝を、初場所でついにストップさせた大関琴奨菊(32)=佐渡ケ嶽。今回の春場所には、1998年若乃花以来の和製横綱誕生が懸かります。大相撲ファンが待ちかねている久々の偉業へ、当の琴奨菊はどんな思いでいるのか。はなわVS琴奨菊。ちょうど4年ぶりの“対戦”です。 (構成・岸本隆) ◆お父さん鼻血に感動はなわ「遅ればせながら、初場所で初優勝おめでとうございます。千秋楽で感動したのは、お父さんがおじいちゃんの遺影持って、鼻血を出してたこと」 琴奨菊「一生懸命涙ふいてたけど、めちゃめちゃ鼻血が出て。鼻血を隠すのに必死だったって言ってました(笑)」 はなわ「興奮したんでしょうね。おじいちゃんも喜んでいたでしょうね。小学校のころは大会前に、スッポンの血をグレープフルーツジュースと偽って飲ませていたとか。天国で絶対喜んでる」 琴奨菊「間違いないです。今、自分は部屋の近くに住んでるけど、おじいちゃんの仏壇作ってる。自分がなまけたり気合が入らずに一日が終わったら、同じ写真でも顔の表情が変わってるのを感じる。しっかり見てくれてるんだなと」 はなわ「先代親方(元横綱琴桜)への思い、おじいちゃんへの思いがあっての優勝ですね」 琴奨菊「ずっと続けてることは、勝ち残りの時、水をつけるのを待つときに目を閉じます。おじいちゃんと先代に、けがなくきょうも終わりましたと報告させてもらってる。先代は私を見つけてくれて道を開いてくれた。おじいちゃんは相撲をやる環境をつくってくれた。私はレールに乗っかって続けてきた」 はなわ「先代には小学校3年生の時におでこにつばをつけられたと」 琴奨菊「(故郷の)柳川で巡業があって、おじいちゃんと一緒に佐渡ケ嶽部屋のパーティーに行き、先代親方に会っておでこにつばをつけてもらった。つばをつけたから他の部屋に誘いがあってもうちの部屋に入れって(笑)。そのときからずっと一筋」 はなわ「それで入って大関になって優勝。先代が横綱になったのが32歳。同じ年で次の場所が綱とり」 ◆すべては土俵にある琴奨菊「初優勝して、先代が言っていた『地位も名誉もお金もすべて土俵の中に埋まっている』という光景を見た。これからもっとその光景を見たい」 はなわ「よく景色が変わっていくっておっしゃってますが」 琴奨菊「相撲を始めた小学校3年生のとき、自分の道は砂利道からスタート。そこに土を敷いてアスファルトで舗装して。入門した時には舗装されて、景色はお花畑みたい。十両に上がると、その景色にビルが建ったり家が建ったりして、大関に上がったときには世界巡りをしてる景色になって。かど番を経験したときには地獄だったけれど。初場所で一つ負けても、同じことを繰り返さないぞと思って、やるべきことを調子に乗らず、しっかり自分が築いてきた地面の上を歩いた。それで優勝を勝ち得たし、勝ち取ったときの風景は、車が空を飛んでるとか、こんな風景もあるんだというくらいの風景でした」 はなわ「優勝には奥さまの存在も?」 琴奨菊「力士は本当に土俵上では孤独なんですよ。13日目に豊ノ島関に負けたとき、孤独と悔しさでいっぱいでした。でも、家に帰ってホッとする時間があったりとか、おいしいごはんを作ってくれたことが、気力になりました」 はなわ「4年前は独身でした。好きなタレントは関根麻里ちゃんって言ってました」 琴奨菊「幸せでは負けてない(笑)。ほんとに。こんな私を拾ってくれて。無事結婚できました(笑)」 はなわ「4年前の対談のとき、ルーティンのことをかなり話してくれていました」 琴奨菊「朝起きる時間はいつも一緒。稽古場に降りるのも同じ時間。やる動作も全部一緒。それによって、少しの体の張りでもすぐ分かる。土俵上では取組前に胸を反らす動作(琴バウアー)がありますが、いろいろ考えず、肩の力を抜いて呼吸を整えて、さあやれることはやるぞ、という感覚。ルーティンを続けることによってしっかり予防と対策ができる。一つ失敗しても次のルーティンがあることで冷静さを保てるのも強み」 はなわ「琴バウアーという名称は外国通信社の女性に決めてもらった」 琴奨菊「会見場にいた外国の方だったんですけど、話す言葉にすべてうなずいて一生懸命に聞いてくれていた。視界にも入りやすかった。相撲のお客さんも外国の方が多いし、聞いてみたいなと思って」 はなわ「僕は『菊バウアー』派だった。でも琴にした理由がありましたよね」 ◆稀勢の方が強いけど琴奨菊「先代がよく言っていた。みんな琴ってついてるけど、王様二つに今って書く。今に王になるんだぞって、そういう意味合いを兼ねているからみんな琴をつけてるって聞いた。それをパッと思い出した」 はなわ「日本出身力士の優勝は稀勢の里関が一番近いとも言われていました」 琴奨菊「自分も稀勢の里関が一番強いと思う。稀勢の里関は自分にないものばかり持っている。でも、稀勢の里関にないものを自分は持っている。ちょっとした気持ちのゆとりとかが、少しだけ自分の方が優れている。体力面では向こうの方が強いけれど、それだけじゃない。勝負って奥深い」 はなわ「稀勢の里関も悔しいでしょう」 白鵬一つステージ上琴奨菊「みんな火が付いたと思う。なぜ白鵬関が強いのか。猫だましもしたけれど、横綱は優勝がかかってる場面でイチかバチかはしない。100%勝てると思ってやってる。そういう度胸、チャレンジ精神を見習いたい。深いんですよ。1回2回負けても、これだけは大丈夫ってものがある。だから強い。逆に言うと、他の力士は固定観念にとらわれて、立ち合いで変化しちゃだめとかずれて当たっちゃだめとか、相撲道を貫いているところがある。勝ちを取りにいくのであれば、何でもせなあかんということです。横綱はそうすることで楽しさを生み出しながらやってる。ステージが一つ上」 ◆「遠藤もったいない」はなわ「いろんなことを考えてますね」 琴奨菊「強くなるには何かを犠牲にしてでも強くなれって。太るために飯を食う。食うにつれて血糖値が気になる。血糖値が上がってマイナス3とします。飯食って気合入れて稽古、トレーニングできるならプラス10。そしたら差し引きプラス7。プラス7の積み重ねでいきましょうと。何かを犠牲にしないと。相手も殺しに来るんだから。遠藤が調子が出ないのは、相手がよろいを着けて刀で殺しに来るのに、遠藤は裸。テーピングしないという美学だけじゃ勝てないです。もったいない」 はなわ「大関はいろんな方に支えられながら、いよいよ綱とりへ」 琴奨菊「自分はアンパンマンだと思う。つらさとか苦しみとか嫌なこととか、アンパンマンって顔をちぎって分けたりする。弱くなる。でもたくさん周りの人の支えとか、師匠、トレーナーから教えてもらって、また肉詰めされる。減ったところにすべて。はぎ取られたら付け加えて、だんだん新しい顔になっていく。それが今の状況かなと」 PR情報
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