より賢く活用するためのOSS最新動向

OSSで商売をする4つのビジネスモデル

吉田行男 2016年03月09日 07時00分

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 こんにちは、日立ソリューションズの吉田です。前回は、OSSの開発主体が企業に移ったということをご紹介しました。それでは次に、なぜ企業がOSSを開発するのかということをご紹介したいのですが、その理解を深めるために、今回は「OSSのビジネスモデル」について、考えてみたいと思います。

 OSSのビジネスモデルについては、いろいろ議論もあるところですが、ここでは下記の4つに分類したいと思います。

  1. ディストリビューションモデル
  2. システムインテグレーションモデル
  3. サービスモデル
  4. その他

1.ディストリビューションモデル

 「ディストリビューションモデル」は、自社またはコミュニティにて開発されたソフトウェアの配布とサポートを行うモデルです。


 このモデルを採用している代表的な企業はRed Hat社でしょう。同社は、コミュニティで開発されたLinuxカーネルおよび周辺のソフトウェアをパッケージングした「Red Hat Enterprise Linux(RHEL)」という製品を提供していますが、カーネルのどのバージョンを使用するか、その周辺ソフトウェアを使用するか、そして、それらが稼働するかの検証をしているのは同社です。従って、RHELというパッケージはRed Hat社の製品ではありますが、その製品に含まれているソフトウェアはすべてオープンソースなので、個々のソフトウェアはRed Hat社の製品ではありません。ユーザーは同社からこのRHELのサブスクリプションを購入することで、カーネルをはじめ、RHELに含まれているソフトウェアの保守サポート、バグやセキュリティに関するアップデートなどのサービスを受けることができます。

 もう1つ、少し違った形でこのディストリビューションモデルを提供しているケースをご紹介したいと思います。それはOracleが提供する「MySQL」です。MySQLは、もともとスウェーデンに本社を置くMySQL,AB社によって開発されていましたが、2008年にSun MicroSystemsに買収され、さらにその2年後にSun MicroSystemsがOracleに買収され、現在、商標権と著作権はOracleが所有しています。

 MySQLは1995年に公開され、当初は独自のライセンスを採用していましたが、2000年にGPL V2を採用し、商用ライセンスとのデュアルライセンス方式で提供されるようになりました。このように、MySQLはMySQL,AB社の社員が中心になって開発し、開発したソフトウェアをOSSとして公開する傍ら、商用パッケージで販売するというモデルなのです。

 同様の形態をとっているソフトウェアは他にもいろいろあります。日本でも、SRA OSS社が、「PostgreSQL」を自社パッケージ化して、名称も「PowerGres」に変更して販売しています。また、MIRACLE LINUX社も「Zabbix」を自社パッケージ化して、「Miracle ZBX」に名称変更して販売しています

2.システムインテグレーションモデル

 「システムインテグレーションモデル」は、OSSを活用したシステム構築およびプロフェッショナルサービス(コンサルテーションを含む)を実施するモデルです。

 代表的な例は、NTTデータ、SIOS、SCSK、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)などのシステムインテグレーターです。これは、日本に一番多いパターンだと思います。システムインテグレーターは、システム構築にあたって、顧客の要件に合わせてOSSを選定します。OSSの選定にあたっては、過去に組み合わせた経験のあるものや検証を行ったものなどが基本になりますが、要件によっては、経験のないものが必要になる場合があるので、その場合は「検証する」プロセスが必要になります。また、システムの要件に合わせてハードウェア構成を決め、最適な設定をすることになります。実稼働が始まれば、運用状況を監視し、問題が発生した場合は適切に対応していく必要があります。


 このようにOSSを導入するということは、商用ソフトのように稼働するための前提条件があるわけではありませんから、相応の技術力が要求されます。「OSSは、情報がすべて公開されているのに、どうしてそんな苦労が必要なのか」という意見もあると思いますが、実際はそんなことはないということです。また、OSSに関する情報がすべて公開されているので開発者、ベンダー、ユーザーとの間に情報量の差、いわゆる「情報の非対称性」はないと考えられがちですが、現実はそうではありません。実はそこに大きなビジネスチャンスが隠れているのです。

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