はじめに
どのような間取りが、家族仲良く暮らせていけるのか気になり考えてみました。
なぜそんなことが気になったのかというと、私の家族があまり仲良くないからです。仲が良くないというか会話が少ないです。これまでは、全く気にしていなかったのですが、最近20歳になり、家族の仲が気になり始めました。私や兄弟ももう大人というのもあると思うので、今から家族の仲を深めようとは思っていませんが、もしも子供の頃から別の間取りで暮らしていたならば、家族の状況が変わっていたのではないかと思います。
我が家の間取りとその問題点
これは現在の我が家の間取りです(下図参照)。4LDKで、現在は父と母と私の3人ですが、以前は父、母、姉、兄、私の5人で暮らしていました。見ていただくとわかるように、個々の部屋がほとんど別々で離れています。したがって、リビングや別の部屋を通過しなくても、トイレとお風呂、玄関もいけます。普通に考えればその方が便利ですし、家族とあまり顔を合わせたくなかった思春期にはとてもありがたかったです。しかし、そこに落とし穴があったのです。
![家族が顔を合わさなくても暮らせる現在の間取り](http://megalodon.jp/get_contents/264844983)
家族が顔を合わさなくても暮らせる現在の間取り
私が小学校3年生の時までは、家族が一緒になって食卓でご飯を食べていました。普段は忙しい父も、休日には家族とともに食事をしていました。しかし、私が小学校4年生になった頃、姉があまり食卓に来なくなりました。姉は、当時高校生であり、アルバイトをしていました。アルバイトで帰りが遅くなり、ご飯を自分で買ってきて部屋で食べたり、外食で済ませたりしていたようです。そのうち兄も姉と同様に、家の食卓ではご飯を食べないようになりました。やがて、私までもがそのようになってしまったのです。
家族が一緒に食卓を囲んでご飯を食べないとなると、我が家の間取りでは、全く家族と顔を合わせることなく過ごすことができます。長い間、顔を合わせないと、いくら家族といえどもさすがに話しづらくなります。結局、家族での会話が無くなりました。
家族が仲良く暮らせる間取りの提案
これまでの実体験をもとに、私はどのような間取りであったら良かったのか、理想の間取りについて考えてみました(下図参照)。
![家族のコミュニケーションがとれる理想の間取り](http://megalodon.jp/get_contents/264844984)
家族のコミュニケーションがとれる理想の間取り
私が提案する間取りのポイントは、以下の4点です。
★リビングを通らなければ2階に上がれない。
★母の部屋を作らない。
★吹き抜けを設置する。
★それぞれの部屋をつなぐ。
個人の部屋をすべて2階にすることで、帰宅してから確実にリビングを通ることになります。また、風呂もリビングを通らないと入れません。ただし、リビングにだれもいないとなると、結局はだれとも会わないため、強いて母の部屋を作らずにリビングにいてもらいます(寝るときも)。次に、吹き抜けは家の中で声が通りやすいようにするために設置します。声が聞こえるだけで、親近感がわくと考えました。そして、2階は父の部屋以外は部屋から部屋へ直接移動できるようにします。また、襖では、プライバシーが保てないため、普通のドアにします。
以上が、私の考える家族が仲良く暮らせる間取りです。
おわりに
私が提案する間取りに、今住むとなると少々気が引けますが、当初からこの間取りで過ごしていたならば、もっと仲の良い家族になれたのではないかと考えます。
しかし、逆説的となりますが、家族の仲があまり良くないからこそ、家族の大切さに気付けたのですから、結果的には良かったのだと思います。
林 大輝(はやし ひろき)明海大学不動産学部3年生、保有資格:宅地建物取引士・FP3級。将来の夢:常に挑戦し続ける不動産のプロフェッショナル
明海大学不動産学部小松広明准教授から一言
リビングと子供部屋のプロポーションを意識したい。
プロポーションとは、部分と部分、あるいは部分と全体との大きさの比のことを指します。リビングと子供部屋とのプロポーションの成否は、そこに人が実際に住んでみて、どのように感じているのかによって確かめられます。
林君の例では、各子供部屋には、テレビ、ベッド、タンス、机、本棚までが置かれているようです。したがって、一度、部屋に入ると、全て事足りることからリビングに行く必要がありません。その結果、家族団らんの場が無くなったとの後悔の念を、本人自らが語っています。とても貴重なコメントです。
リビングと子供部屋のプロポーションは、家族の幸せを実感できる住宅設計として重要です。例えば、子供部屋の大きさは、就寝のためのベッドなどが置ける程度にとどめ、リビングには、テレビや本棚など家にある面白いものを多く集めます。つまり、リビングの子供部屋に対するプロポーションを高めることを意識します。結果として、自然とリビングで過ごす家族の時間が増えることでしょう。
このプロポーションであれば良いという明確な値はありません。家族の団らんとは何か、その親と子のコミュニケーションの中に黄金比が隠されているのかもしれません。
明海大学不動産学部准教授 小松広明(こまつ ひろあき):専門分野:不動産ファイナンス、不動産投資行動論、筑波大博士(経営学)、不動産鑑定士、技術士(建設部門)