心理データ解析　第３回(3)　

ｔ 検定　／　ｔ 検定の種類　／　ｔ 検定を行う際には　／　対応のないｔ 検定　／　対応のあるｔ 検定

ｔ 検定

• ｔ 検定は，２つのデータの「平均の相違」を検定する際に用いられる。
• ここでいう２つのデータは，間隔尺度以上である必要がある。
• 間隔尺度以上の「量的なデータ」において，２つの標本平均間の相違が母平均間においても相違として認められるのかについて推測する方法である。

＜まめちしき＞

ｔ 検定の正式名称は，「スチューデントのｔ 検定（Student's t test）」である。この名前は，アイルランドのギネスビール社に勤務していた統計学者ゴセット（Gosset, W.S.）のペンネームが「スチューデント（Student）」であったことによる。検定法自体は，イギリスの統計学者ピアソン（Pearson, K.）が導いた。

ｔ 検定の種類

• 対応のないｔ 検定
  • ２つの平均値間が独立である場合
  • （例）ある学校の３年１組と３年２組のテスト得点の比較
• 対応のあるｔ 検定
  • ２つの平均値間が独立とはいえない場合
    • ２つの平均値間に何らかの関連がある
  • （例）授業前と授業後のテスト得点の比較
• ３つ以上の平均の相違をｔ 検定によって検定することはできない。その場合には分散分析(ANOVA)を用いる。

ｔ 検定を行う際には

• データの条件によって適用できる式が異なる
• 手順としては
  • ２つのデータの母分散が等しいかどうかを検定する
  • 等しい場合：t統計量を求める
  • 異なる場合：ウェルチ(Welch)の方法を用いる
  • SPSSでどちらも算出される

対応のないｔ 検定

• 20名の被験者をA群とB群に分けて実験を行い，以下のようなデータを得た。A群とB群の平均には相違があるといえるか？ただし以下のデータでは，０をA群，１をB群としている。

番号 群 結果 1 0 1 2 0 2 3 0 2 4 0 3 5 0 7 6 0 7 7 0 5 8 0 6 9 0 5 10 0 4 11 1 6 12 1 8 13 1 8 14 1 7 15 1 9 16 1 4 17 1 9 18 1 7 19 1 6 20 1 6

データ　→　data_t1.xls

• SPSSを起動する（既に起動してある場合には，以前のデータを保存し，ファイルメニュー→新規作成→データ）
• SPSSデータエディタの「変数ビュー」を開く
  • １番目の変数の名前に「番号」，２番目の変数の名前に「群」，３番目の変数の名前に「結果」と入力。
  • 「型」は数値，「幅」「小数桁数」「ラベル」はデフォルトのまま
  • 「群」における「値」の「...」をクリック。値ラベルを指定する。
    • 「0」が「A群」，「１」が「B群」になるように指定する
  • 「群」における「測定」の部分を「名義」にする
  • 「結果」における「測定」の部分は「スケール」のまま

• 「データビュー」を開く
  • 番号を入力（１から20まで）。
  • 「群」の１番目から10番目までのセルに「０」を入力，11番目から20番目までのセルに「１」を入力（０がA群，１がB群を意味する）
  • A群，B群に対応するデータを上記の表に従って入力する
• 対応のないｔ 検定を行う
  • 分析メニュー　→　平均の比較　→　独立したサンプルのt検定　をクリック
    • 古いバージョンのSPSSでは「T検定」となっているが，正しい表記は「ｔ 検定」である。レポートや論文を書く時には気をつけてほしい。

• 「検定変数」に「結果」を指定する（従属変数になる）
• 「グループ化変数」に「群」を指定する（独立変数になる）
• 「グループの定義」をクリック
  • 「グループ１」の枠の中に「0」，「グループ２」の枠の中に「1」を入力
  • 「続行」をクリック
• 「OK」をクリック

• 出力の見方

• まず，グループ統計量が出力される。群ごとの人数，平均値，標準偏差を確認しておこう。
• 次に，検定結果が出力される。
  • まず，２つのデータが等分散であるかを見る（等分散性の検定）。
    • Ｆ値が有意である→等分散ではない
    • Ｆ値が有意ではない→等分散である
  • 等分散が仮定される場合には「等分散を仮定する」の検定結果を，仮定されない場合には「等分散を仮定しない」の検定結果を見る。
  • この場合，F値が1.93，有意確率が.18で有意ではないので，等分散が仮定される。
  • 自由度18でt値は3.33。１%水準で有意。
  • 結果を記述する際には，「t(18)=3.33, p<.01」と書く。
    • ｔ 値がプラスであるかマイナスであるかはたいして意味はない。この例の場合も負の値が出力されるが，レポートに記述する時には絶対値を書けばよい。

対応のあるｔ 検定

• 10名に対してある授業を行った前と後にテストを行い，成績を算出した。授業前後で成績が伸びているといえるか。

  番号	授業前	授業後
  1	5	7
  2	4	6
  3	5	8
  4	4	7
  5	3	6
  6	4	6
  7	3	5
  8	6	9
  9	5	9
  10	6	8

データのダウンロード　→　data_T2.xls

• SPSSを起動する（既に起動してある場合には，以前のデータを保存し，ファイルメニュー→新規作成→データ）
  • SPSSデータエディタの「変数ビュー」を開く
    • １番目の変数の名前に「番号」，２番目に「授業前」，３番目に「授業後」
    • 「型」は数値，「幅」「小数桁数」「ラベル」「値」はデフォルトのまま
    • すべて「測定」は「スケール」のまま
  • 「データビュー」を開き，授業前と授業後のデータを入力
    • 対応のあるデータとは，ひとりの人間が複数回の実験を行うなどして集められたデータである。従って，データの入力の仕方が対応のない場合と異なるので注意。
• 対応のあるｔ 検定を行う
  • 分析メニュー　→　平均の比較　→　対応のあるサンプルのt検定

• まず，「授業前」と「授業後」をクリックする。
  • 「右向き矢印」をクリック
  • 「変数１」と「変数２」に対応する変数が指定される。

• 「OK」をクリックで結果が表示される
• 対応サンプルの統計量，対応サンプルの相関係数，対応サンプルの検定結果が表示される。
• 対応のあるｔ検定の場合，２つのデータの相関係数が算出される。

• 結果は，自由度９でt値は11.76，0.1%水準で有意（有意確率が.000となっているのは，小数点以下３桁よりも低い値であることを意味する）。
• 結果を記述する際には，「t(9)=11.76, p<.001」と書く。
  • 対応のないｔ 検定と同様に，ｔ 値がプラスであるかマイナスであるかはたいして意味はない。レポートに記述する時には絶対値を書けばよい。

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