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Re:Monster――刺殺から始まる怪物転生記―― 作者:金斬 児狐

第四章 救聖戦線 世界の宿敵放浪編 

17/17

~三百四十日目

 “三百三十八日目”
 昨日から始まった俺達の――俺は観客枠だったが――【聖戦】は途切れる事無く続いていた。

 至る所で多彩な【魔法】が炸裂し、得物が衝突して火花と異音と衝撃を撒き散らし、血肉が舞い散り命が消えていく。
 殺意と闘志がせめぎ合い、怒号や絶叫が絶える事無く響き渡る。

 時間経過と共に自動的に再生する決戦場でなければ、とっくに崩壊していただろう破壊の嵐が吹き荒れていた。

 始まってから一日が経過した決戦場での【聖戦】は、概ね当初の予定通りに進んでいる。

 連合軍と同盟軍を一度に相手しても俺達に死者は出ていない。
 対して時間が経過すればするほど、両軍勢の戦力は削れていた。

 しかし少々計算違いな事に、連合軍の兵力の減りが思っていたよりも少ないようだ。

 現在のように同盟軍がアス江ちゃん達によって四割の戦力を失っている場合、連合軍は六割から七割をブラ里さんやスペ星さん達によって削られていると予想していた。
 だが、実際には四割程度に抑えられている。

 それでも十分な戦果ではあるが、予想が外される原因はやはり、白主の存在が大きいだろう。

 連合軍の兵士達は例え【英雄】達によって大幅に強化されていたとしても、ブラ里さんやスペ星さんによる広範囲殲滅攻撃の連撃には耐えられない、筈だった。
 しかし被害は出ているものの“精錬武救の聖神鎧イスラブ・レス・ラーグ”を始めとする様々な【救世主】固有の【魔法】により、連合軍の兵士達はまるでアンデッドのようなタフネスを発揮していた。

 連合軍兵は疲れも傷みも感じていないのか、腕や足を切り落とされようが、肺を潰され呼吸ができない状態にされようが止まる事が無い。
 四肢を失っても一旦後方に下がれば、再生されてまた戻って来るのである。
 ならばと精神的にダメージを負わせても、燃え上がるような戦意がモノともしないし、それを突破しても肉体のダメージと同じく後方に下がれば復活して舞い戻って来る。

 そう言う訳で、後方に控えて際限無く味方を回復し続けている白主の存在が無ければ、連合軍を相手にするのはもっと楽だったのは間違いないだろう。

 まあ、俺と同じく【大神】の【加護】を持つ存在だ。
 それくらいしてくるのはある意味当然だと納得できる。

 ともあれ、流れ弾を【神獣の守護領域】で防ぎ、皆が嬉々として戦っている様を観戦するだけだった昨日とは違う。
 皆から『一日は参戦せず、私達に戦わせて欲しい』と要望があったので我慢していたが、それももう終わりである。

 飯勇に作らせておいた美味い朝食を喰ってやる気を漲らせ、四つの銀腕にそれぞれ得物を持つ。
 皆も十分戦ったのだから、今日は俺も楽しませて貰わないとな。


 d――■ З ■――b


 周囲に張り巡らされていた【神獣の守護領域】を解除して、ベルベットの遺産である椅子から立ち上がる。
 椅子は破壊されると困るのでアイテムボックスに収納し、準備運動がてら、肩の凝りをほぐすように首を回した。
 固まっていたせいか、動かす度にゴキゴキと音が鳴る。

 ベルベットの椅子がどれ程座り心地が良く、また座っているだけで心身を回復させる効果があるマジックアイテムだとしても、やはり一日座りっぱなしだと凝ってしまうというものだ。

「さて、と」

 凝りを解す為に首を回していると、雷のように鋭い矢が頭部目掛けて飛んでくるが、噛んで止めて、そのままボリボリと喰う。
 鏃に使われていた魔法金属が良質なのか、あるいはに使われている木材が良質なのか、または矢羽やばねに使われている羽が良質なのか、もしくはそれ等と込められた魔力が良質なのか。

 矢の濃厚な味の秘密を吟味しつつ、気を取り直してグルリと決戦場を見回した。
 戦況は概ね把握しているが、何かの手違いがあればそこから崩される可能性はある。手助けをした方がいい場面もあるかもしれない。
 自分の戦いに集中する為にも、始める前に確認はしておきたかった。

「ミノ吉くんはまあ、問題無し、と」

 同盟軍の方では、やはりミノ吉くんが楽しそうに【獣王】ライオネルと戦っているのが目立つ。
 巨大な斧を手足のように自在に操り、ライオネルが繰り出す強烈な連撃の悉くを盾などで防ぐミノ吉くんは全身から雷炎を立ち昇らせている。
 また、普段でもその巨体に見合わぬ速度で動くものの、現在は【終末論・征服戦争】の効果によって全能力が【二一〇%】上昇している為、その動きは雷速を超えた領域に達していた。

 見上げる程の巨体が眼にも止まらぬ速度で縦横無尽に駆け回っているせいで、ミノ吉くんが戦っている周囲には誰も近づけないでいる。
 絶え間なく空間を震わせる衝撃波が撒き散らされ続けているだけでなく、膨大な雷炎が轟々と燃え拡がっている為、下手に近づけば理解する間もなく焼失してしまう空間が形成されているからだ。
 例えライオネルと共に闘う為にやって来た【獣牙将ビファログ】と言えど、今のミノ吉くん達の戦いに割り込む事は出来ていない。

『ブゥモオオオオオオオオオオオッ!』

『ガハハハハハハッ! ガハハハハハハッ! 滾る、滾るのぉ、互いに!』

 しかし普段以上の速度で動くミノ吉くんに対し、【獣王】ライオネルは拮抗していた。

 ミノ吉くんが雷炎を纏うように、ライオネルは全身を黄金の【闘気】で輝かせ、そして同じように【終末論・征服戦争】の効果で身体能力が強化されている。

 正確に数値化すればミノ吉くんの方がやや上回っているようだが、ライオネルは長年【獣王】として君臨してきた強者である。
 積み重ねられた闘争の日々は決して軽いものではなく、数多の死線を乗り越えてきた経験は身体能力の差を容易に埋めていた。

 そして雄々しく荒々しいその見た目に反し、ただ単純に力だけで戦う訳ではない。研ぎ澄まされた刃のように、確実に敵を屠る技術をライオネルは体得していた。

 俺から見ても惚れ惚れする絶技を駆使するライオネルは、ミノ吉くんの斧の振り下ろしに対して側面に少し手を添えただけで軌道を逸らした。
 その際装備している手甲と触れている筈だが、火花や音も生じていない。完璧な見切りで、必要最小限の力を加えたからこその結果だ。
 そしてその直後に追撃として襲いかかって来る雷炎を、僅かに体毛を焙られながらも【闘気】の瞬間的な噴出で呆気なく蹴散らして、僅かに出来た隙を突いて蹴りを繰り出した。
 マジックアイテムだろう脛当てを装備したライオネルの蹴りだ。直撃すれば流石のミノ吉くんとて痛打になる事は間違いないが、まるで泰山の如くドッシリと構えられた盾によって呆気なく防がれた。

『ブゥモオオオオオオオオオオオオ!』

『ガハハハハハハハハハハハハハハ!』

 両者が一秒の間に交わす数十の攻防、その全てを認識できる者がここにどれだけ居るだろうか。
 両者の激突はまるで雷光の氾濫だ。
 眩く輝き続けている事は理解できるが、その詳細を理解できる者は限られている。

 互いを高め合うように、時間が過ぎるほどミノ吉くん達は過熱し、より激しくぶつかり合っていた。

 ライオネルは俺が殺して喰いたかったのだが、流石に楽しそうに戦っているミノ吉くんの邪魔をするのは憚られるので、ミノ吉くん達の次に同盟軍で眼を引くカナ美ちゃんの方を見る。

 その際、視界を遮る程巨大な動く毒茸の群れが邪魔だったので朱槍の一振りで薙ぎ払う。
 抵抗なく切断できたが、薙ぎ払ったため毒茸からは濃厚で毒々しい胞子が撒き散らされてしまった。【状態異常無効化】があるので大量に吸い込んでも俺に効果は無いが、このままでは視界が更に悪くなってしまうので、思い切り息を吹きかけて吹き飛ばす。
 すると運悪く近くに居た敵の【聖騎士】が胞子を吸い込んで噎せた。かと思えば苦しみ始め、すぐにバタリと地面に倒れ、口からは蟹のように泡を吹き始めた。
 まだ死んでいないが、早く解毒しなければ息絶えるだろう。

 丁度いいので、指先から黄金糸を出して全身鎧を装備する【聖騎士】を拘束する。
 出来るだけ丸くなるように拘束した後、それを振り回して胞子を散らすと共に周囲を軽く牽制した。
 高速で振るわれたからか重し代わりの【聖騎士】からボキボキと音が鳴り、勢いそのままに敵兵数名と衝突した事でより一層激しい粉砕音が響く。
 見れば【聖騎士】の身体からは皮膚を突き破り、無数の骨が飛び出していた。生きていれば苦悶の一つでも零すだろう大怪我だが、それもない。
 既に絶命しているのは一目瞭然である。

 まあ、どちらにしろ毒で助からなかったのだ。
 死因が毒死から変わったところで、大差は無いだろう。

 その後も数度振り回し、ある程度数を減らした後は役割を終えたと判断して、糸を斬ってから手を離す。
 するとまるで砲弾のように飛んでいく【聖騎士】は近くに居た茸勇に直撃し、一緒に吹き飛んで行った。
 茸勇は死んでいないだろうが、しばらくは治療が必要だろう。

「カナ美ちゃんも……問題無し」

 そうして邪魔な敵が居なくなり、ようやくカナ美ちゃんがハッキリと見えた。

『うふふふふ。熟成された血液ワインを楽しむ為には、やはりジックリ仕込む事が肝心ですよね?』

『オーフ、それには同意しますが、かなり物騒デース』

 カナ美ちゃんと【魔帝】ヒュルトンの戦いは、ミノ吉くん達とは違う種類の派手さがあった。

 カナ美ちゃん達が戦っている場所は紫紺色の魔氷で覆われた一画だった。
 獄炎が支配する【鬼哭神火山】の中でありながら、カナ美ちゃんによって凍る程の冷気が満ちる異形の地へ変貌したそこでは、カナ美ちゃんの【氷血眷属召喚サモン・アスラッド】によって【召喚】された“氷血多頭毒龍アスラッド・ヒュドラ”や“氷血天狼アスラッド・シリウス”、またその他の眷属達が、ヒュルトンによって【召喚】された≪魔界クリフォト≫の住人達を相手に戦っていた。

 【氷血眷属召喚】で【召喚】された眷属達は非常に強力な存在である。

 しかし、黒い瘴気で構成された気体系の怪物“廃滅の空域を統べる王ザスボー・デ・スス”、全身から無数のおぞましき魔剣や呪剣を生やした巨人“剣軍を伴う巨飢人ディス・ハウ・ドブラ”など、ヒュルトンによって【召喚】された手駒達もそれに劣ってはいなかった。

 両者によって召喚され、合計で二十を超える怪物達は敵陣営の存在を抹殺すべく殺意を漲らせ、暴力を振り撒く。
 敵を威圧する咆哮は絶えず、吹き荒れる氷嵐は生物の生存を許さないほど破滅的だ。
 それに抵抗する精神を狂わす絶叫は轟き、万物を侵食する瘴気の波は冒涜的である。

 眷属達が戦う様は、まさに怪獣大決戦、と表現すべきだろう。

 そして眷属達が暴れ狂う決戦場の上空では、当然のように高速飛行するカナ美ちゃんとヒュルトンが戦っていた。
 カナ美ちゃんが【月光の雫】を振るえば、ヒュルトンは黒い瘴気を凝縮させた剣を振るい。
 カナ美ちゃんが魔術を使えば、ヒュルトンもまた魔術を使う。
 攻防は一進一退、両者ともに決定打に欠けているようだ。

 元々、カナ美ちゃんとヒュルトンの戦い方はよく似ているのだろう。

 どちらもミノ吉くんやライオネルのように前衛として戦うタイプではなく、後方から攻撃したり、創造した配下や召喚した眷属達を使役する事が得意なタイプだ。
 手札の多さから幅広い戦術を使う事が可能で、対軍戦でも単独でこなす事が可能である。

 だからこそ、そんな両者が衝突すれば現在のような消耗戦になるのは必然だったのだろう。
 少しでも手札が多い方が、効果的に使う方が勝つ。

 戦術を構築する頭脳も必要な、中々見応えのあるやり取りが続いていた。

 現在はヒュルトンが同盟軍に被害が出ないように、攻防の余波を“堕落誘う白龍王アムスドムス”に喰わせ続ける事で押さえている事もあり、その分だけカナ美ちゃんが優勢なようだ。

 そこに俺が加われば勝敗は決するだろうが、カナ美ちゃんはカナ美ちゃんで楽しそうにしているので、コチラも手を出すのは野暮だ。

「アス江ちゃんも、順調、と」

 また、ミノ吉くんやカナ美ちゃん達の近くで戦っているアス江ちゃんの戦いに、俺が手を出す事も同様だ。

『気ぃー張らんと、あっと言う間に逝ってまうでッ!』

 アス江ちゃんが相手にする同盟軍兵は、千の精鋭と、【六重将】である黒将、翠将、緋将の三名と、【獣牙将】である豹将、斑将、猿将の三名で構成された戦力である。

『魔法詠唱、終了後掃射。煙幕弾投擲、指示音傾聴。死角隠密、異常攻撃開始』
『火力を集中させるのじゃッ。そうせねば、アヤツの防御は抜けぬぞッ』
『オオオオオオオオッ! 我ガ炎デ焼キ尽クシテクレルッ!』

 総指揮官は黒将が務めるが、三将はそれぞれ最初は約三百名居た同盟軍兵を率い、各自の判断でアス江ちゃんと戦っている。
 そうするのも、決戦場の地形を操作し、一時的に大小様々な起伏を生じさせるアス江ちゃんの前では数はあまり意味が無いからだ。

 密集していれば起伏を造って分断し、孤立した者達から各個撃破されていく。

 だからアス江ちゃんに少しでも戦術の先読みをされないように、また一ヶ所に意識を集中されないように、三将がそれぞれ同盟軍兵を率いて戦う事を選んだようだ。

 この場合、互いの動きを予想できるだけの繋がりが必要になるだろう。
 それがなければ、互いの邪魔をして結局は自爆してしまうだけの愚策と言えた。

 だが、三将は互いをカバーしながら上手く立ち回っていた。
 何処かの隊にアス江ちゃんが意識を向ければ残りが死角から攻撃したり、二つの隊が囮となって本命の策を生かすなど、上手く合致していた。

 それに個人戦に優れ、単独でアス江ちゃんを突き狙う【獣牙将】の三将の存在もあり、そこそこいい戦いである。

 などと、正面から照射されたピンク色の戦技アーツ愛欲の奴隷ラブビーム”を胸部で受けながら思う。

 使用者に対して絶対的な愛を捧げる状態異常攻撃の一種らしいが、先程の胞子の時と同じく【状態異常無効化】があるので意味は無く、そもそも俺の愛はカナ美ちゃん達に捧げている。

 素面で受けても、どうという事は無いだろう。

『ハッハー! 味方の攻撃を掻い潜って進むというのも、乙なもんだねー』
『ウホホホウホホホッ。力勝負なら任せろウホホッ!』
『馬鹿ッ、今突っ込むヒトが居ますかッ! 少し下がって……あああああああ、もうッ! チチルタだけでなく、ゴリまで突っ込むなッ』

 規律だった同盟軍兵の動きに集中している時に、自由に動く【獣牙将】達の奇想天外な行動に翻弄され、ところどころで同盟軍兵の攻撃がアス江ちゃんを直撃する。

『効かへん、効かへんでッ! ウチにダメージ与えよう思たら、もっと強いの撃ってきぃーなッ』

 しかしながら、反撃されてもアス江ちゃんの防御力を貫く攻撃力を持つ者は六名の将以外には少なく、また優れた回復力で攻撃されてもモノともしない為、同盟軍は時間稼ぎが精一杯のようだ。
 それに【終末論・征服戦争】によって同盟軍兵に居る【加護】持ち全員が普段よりも強化されていたとしても、同じように強化されているアス江ちゃんの前ではあまり意味がないのも何だか哀愁を誘う。

 元々の格が違い過ぎる事による、どうしようもない現実である。
 同盟軍兵は、アス江ちゃんを倒す事ができない。ただ時間を稼ぎ、殺されるだけの結末しか用意されていないのである。

 しかしながら、直進してくる黒雲馬をハルバードを振って生じさせた巨水刃で霧散させ、半透明な騎士の幻影を呪槍で穿ち、生体槍で背後から音も気配も無く近づいてきた【暗殺者】を串刺しにし、正面から迫る音撃を朱槍で切り裂きながら、限りなく勝算の無い戦いに挑むそのように内心で賞賛を贈った。

 手加減はしないが、その戦いぶりには敬意を払うべきだろう。

「同盟軍の方は手を出す必要が無いとして、連合軍の方はと言えば……」

 数が多い連合軍の方を向けば、多数の【英勇】相手にブラ里さんとスペ星さんが戦っていた。
 最初は個別に戦っていたが、初日に犠牲者が出てからは【英勇】達も連携し始めたのを切っ掛けに、ブラ里さんが前衛でスペ星さんが後衛を務める普段通りの戦法に戻している。

 無数の燃える血剣翼が舞い踊り、天空から数多の魔術が隕石めいて降り注ぐ。
 攻撃を防ぐ為に密集防御陣形を組めば、間髪入れずに哄笑するブラ里さんが斬り込んで行った。

『ああ~もうッ! 本当に楽しいッ!!』

 歓声を上げるブラ里さんは、ただひたすらに眼前に立つ敵を攻撃していた。
 剣を持つ者も、槍を持つ者も、魔術を使う者も、ヒトを使った合成魔獣キメラのような狂気の産物も、無機物で造られたゴーレムなども関係なく、ただ目に付いた全ての敵を攻撃していた。

 これまでの相手ならば、ブラ里さんの前には屍の山が既に構築されていただろう。
 例え数千の軍勢を相手にした所で、数分もあればブラ里さんは殺し尽くす事が出来た筈だ。

 しかしブラ里さんの暴虐に抗う者は、この場には多く居た。

『爆ぜろおおおおおおおッ』
『ウラッシャー!』

 雄叫びと共に、爆勇と脚勇がブラ里さんを挟撃した。
 触れれば爆発する拳撃と、魔法金属すら容易く砕く蹴撃だ。
 戦技アーツを使用し、完璧なタイミングで繰り出された攻撃に対し、ブラ里さんは【鮮血皇女】と【屍斬血狩】で的確に迎撃した。
 円を描く二振りの魔剣によって拳と蹴りは呆気ない程簡単に流され、その流れのまま体勢の崩れた両【勇者】に対し、爆勇には胴を薙ぐ軌道で、脚勇には首を刈る軌道で、魔剣の刃が襲いかかる。
 それに何とか反応し、防御したが、爆勇と脚勇は呆気なく吹き飛ばされて決戦場を転がった。
 間髪入れずにそれぞれの仲間達が攻撃を仕掛けていくが、ブラ里さんはまるで踊るように回避すると同時に斬撃を叩きこんでいた。

 血が散り、肉片が飛んだ。苦痛の声が漏れ、怒りが燃える。
 死者は出ていないようだが、即座に治療せねば動けなくなる程の重傷を負っているようだ。
 治療の為に後方に下がろうとする敵に対してブラ里さんは止めの追撃を仕掛けようとするが、周囲の敵が行く手を阻んだ事で仕留めきれていない。

 普段のブラ里さんならそれすら突破して斬り殺している筈だが、その嬉しそうな表情を見る限り、あえて見逃しているのだろう。
 戦闘大好きな性格だからか、少しでもこの戦いが長引く事を祈っているのかもしれない。
 まあ、ブラ里さんだから仕方がない、と思う事にして肩をすくめる。

 それを隙と捉えたのか、狂勇と探英の兄弟が人間をベースにモンスターの一部を移植する改造を施した≪禁忌改人軍≫の兵士達が突っ込んでくる。
 配合されているのはサイか猪か、あるいはそれ以外の何かか、ともかく硬質化した頑丈そうな外皮に覆われた巨躯を生かして突っ込んでくる兵士達の突進速度は速い。
 しかしただ速いだけなので、すれ違い様にハルバードと生体槍で十七分割して仕留めた。

『ふふ……ふふふふ。やはり魔術を制限無しで使えるというのは、心地よいものですね』

 戦いに酔いしれるブラ里さんの後方では、同じように楽しそうに戦っているスペ星さんの姿があった。
 スペ星さんに攻撃が通っている時点でブラ里さんが後衛の盾になるという前衛の役割を果たせていない事になると思うかもしれないが、今回は戦いを欲するスペ星さんの為にあえて見逃しているようだ。

 普段は扱う魔術が強過ぎてある程度手加減をしなければならないのに、今回はそれがない。
 溜まったストレスを発散する為、スペ星さんにはある程度の相手が必要だったのである。

『さあ、どんどんいきますよ』

 魚英が従える空を泳ぐ≪飛翔魚群≫の突進も、狂勇が繰り出す深淵系統魔術も、その他の連合軍兵が撃ち込む飽和攻撃も、スペ星さんは軽々と魔術で対応していた。
 スペ星さんの周囲を回る虹色の八個の球体の能力によって、発動した魔術は自動的に八倍になる。
 単鬼で弾膜を張り、接近させる前に粉砕してしまうスペ星さんは、普段抑圧されている欲求を解放して非常に心地よさそうにしていた。

 激しく戦いながら、両者ともに十分な余裕を残しているので、他と同様に俺が参戦する必要性は無さそうだ。

「残りは……まあ、問題無いか」

 セイ冶くんとクギ芽ちゃんは、セイ冶くんの堅牢極まりない積層式【聖力領域シェル・フィールド】で防御を固め、城壁に備わる銃眼のように意図的に造られた小さな隙間からクギ芽ちゃんの眼から放たれるレーザーのような光線で戦っていた。

『六時、七時、一時、五時、来ます』
『ええ、分かりました』

 元々高い防御力を誇る【聖力領域】だが、それでも限度がある。どうしても殲滅力の劣る二鬼では周囲を囲まれる可能性は否定できず、包囲されて絶えず攻撃を浴びせられれば【聖力領域】を突破される恐れがあった。
 それを解消する為、セイ冶くんは全方位から浴びせられる攻撃に合わせ、攻撃される場所の密度を逐一調整する事によって必要な時に必要な場所の守りを必要なだけ固めていた。
 そうする事により、豊英が率いる樹木系モンスター達が太い枝を使って繰り出す連打も、鋼英が練成した魔鋼製のゴーレム達の攻撃を数千と浴びても綻び一つ出ていない。

 クギ芽ちゃんが全ての攻撃を先読みしているからこその連携技だが、ある種の絶対防御術だ。

 それに例えそれを破られても自力で回復するのだから、放置で十分だろう。

 ちなみに二鬼とは別行動をしているアイ腐ちゃんは、腐勇とその仲間達と共にいつの間にか消えていた。
 多分、同類だからこそ通じる話をしているのだろう。

『愚腐腐腐腐腐。説得は任せて……さあ、いこっか』

 そう消える前に言っていたので、大丈夫だろう。きっと。
 ともあれ、そうなると俺の標的は大体決まっているようなものだった。
 最初からその選択肢しか存在しない、とも言えるのだが。

「よし、それじゃあ、始めようか」

 皆の様子を再確認して自分の戦いに集中する為、俺の下に集まって来た敵を見る。
 当然のように白主を筆頭に、界聖と断聖、その他【神器】持ちが勢揃いしていた。
 【救聖】が三名、【英勇】が八名、その他多数と豪勢なメンバーである。

 他の生存している【英勇】達はブラ里さん達を足止めすべく奮闘中なので、殺されるまで俺の所には来れないだろう。
 先ほど俺にちょっかいをかけてきた茸勇なども、悔しそうにしながらも集うメンバーに後は任せ、ブラ里さん達の所に向かっている。

「そう言う割には、既に戦っていましたよね? まあ、先程までの戦いは戦いとも認識していないほどの些事なのかも知れませんが……その不遜な態度こそ、【世界の宿敵・飽く無き暴食】として正しい姿なのでしょうね。ああ、ああ、だからこそ……殺す価値があるのです」

 盾であり矛である界聖と断聖の後方に控え、しかし場を支配する重圧感を伴う白主は微笑を浮かべながら俺の言葉に応じた。

「さあ、殺してあげましょう。愛しい【飽く無き暴食アナタ】を、私の手で」

 実際にこうして面と向かって言葉を交わすのは初めてだが、白主の狂気は事前情報が無くても感じる事が出来たに違いない。
 虚ろな瞳孔は開き、グルグルと狂ったように回っているような錯覚がした。
 確実にその命が摘みとらねば、白主はどんな状態になっても俺の命を狙い続けるだろう。

「かかってこい。喰い殺してやる」 

 だから言葉は少なく、敵意は明確に。
 【神々】の思惑が少しは混じっていようとも、俺達は各自の意思で命を賭けて戦いに没頭した。

 白主の【魔法】が発動し、断界の斬撃が迫り、狩勇の矢が飛来し、数勇の数式の刃が振るわれる。
 声勇の一声が轟き、愛勇の愛光線が照射され、星英の未来予知攻撃が周囲に配置されて逃げ場が潰され。
 書英の持つ書物から物語りの住人が幻影となって飛び出し、雲勇と雷勇の生み出す黒雷雲に雹英の力が加えられた。

 戦いが進む毎に、血沸き肉踊る自分を自覚した。


 ――――「○β○「――――


 なんやかんやとあり、俺とブラ里さん達は殆どの【英勇】を仕留める事に成功した。

 雲勇が死ぬ間際に死力を振り絞り、俺の攻撃で瀕死の重傷を負った雷勇とその仲間達を、まるでキン斗雲のような黒雲に包んで逃がすなどちょっとしたドラマもあったが、それはさて置き。

 他の【英勇】を倒したブラ里さん達も合流して【聖戦】の流れは決まったと思ったのだが、しかし、数が減った時こそ白主の真の恐ろしさを知る事になった。
 いや本当に、俺が言うのもなんだが、こんなのってありなのだろうか。


 [保有迷宮内にて【狂気の勇者】が死亡しました]
 [死亡した事により流出する【神力】の一部が迷宮に吸収され、【神器】として再変換されます]
 [夜天童子は【狂気之魂杖クルティ・オルネン】を手に入れた!]

 [保有迷宮内にて【毒茸の勇者】が死亡しました]
 [死亡した事により流出する【神力】の一部が迷宮に吸収され、【神器】として再変換されます]
 [夜天童子は【毒茸之魂苗棍ヴェマシュ・クスラブ】を手に入れた!]

 [保有迷宮内にて【共振の勇者】が死亡しました]
 [死亡した事により流出する【神力】の一部が迷宮に吸収され、【神器】として再変換されます]
 [夜天童子は【共振之魂鏡ユゾーンミスラ】を手に入れた!]

 [保有迷宮内にて【剛脚の勇者】が死亡しました]
 [死亡した事により流出する【神力】の一部が迷宮に吸収され、【神器】として再変換されます]
 [夜天童子は【剛脚之魂脛靴ボルギャスティ】を手に入れた!]

 [保有迷宮内にて【爆発の勇者】が死亡しました]
 [死亡した事により流出する【神力】の一部が迷宮に吸収され、【神器】として再変換されます]
 [夜天童子は【爆発之魂拳鍔ブラストダスター】を手に入れた!]

 [保有迷宮内にて【探求英雄】が死亡しました]
 [死亡した事により流出する【神力】の一部が迷宮に吸収され、【神器】として再変換されます]
 [夜天童子は【探求之魂示針クエリスト・パース】を手に入れた!]

 [保有迷宮内にて【炎舞英雄】が死亡しました]
 [死亡した事により流出する【神力】の一部が迷宮に吸収され、【神器】として再変換されます]
 [夜天童子は【炎舞之魂祈衣フェムレス・アスディス】を手に入れた!]

 [保有迷宮内にて【鋼殻英雄】が死亡しました]
 [死亡した事により流出する【神力】の一部が迷宮に吸収され、【神器】として再変換されます]
 [夜天童子は【鋼殻之魂造杖ゴルストレムス・ディオスナス】を手に入れた!]

 [保有迷宮内にて【豊穣英雄】が死亡しました]
 [死亡した事により流出する【神力】の一部が迷宮に吸収され、【神器】として再変換されます]
 [夜天童子は【豊穣之魂如雨露スプリスタ・ジョウリロ】を手に入れた!]

 [保有迷宮内にて【飛魚英雄】が死亡しました]
 [死亡した事により流出する【神力】の一部が迷宮に吸収され、【神器】として再変換されます]
 [夜天童子は【飛魚之魂大網フィフラー・ネスト】を手に入れた!]

 [保有迷宮内にて【天声の勇者】が死亡しました]
 [死亡した事により流出する【神力】の一部は【神器】に流入し、強化・固定されます]
 [夜天童子は【天声神之魂声機ヘブンディエス・マイク】を手に入れた!]

 [保有迷宮内にて【愛の勇者】が死亡しました]
 [死亡した事により流出する【神力】の一部は【神器】に流入し、強化・固定されます]
 [夜天童子は【愛神之魂照射機ラブ・アンドゥロー】を手に入れた!]

 [保有迷宮内にて【黒雲の勇者】が死亡しました]
 [死亡した事により流出する【神力】の一部は【神器】に流入し、強化・固定されます]
 [夜天童子は【黒雲神之魂招来剣ブラスクリード】を手に入れた!]

 [保有迷宮内にて【雹雨英雄】が死亡しました]
 [死亡した事により流出する【神力】の一部は【神器】に流入し、強化・固定されます]
 [夜天童子は【雹雨神之魂招杖ヒュスリトー・ベルイスラ】を手に入れた!]

[世界詩篇[黒蝕鬼物語]第六章【神災暴食のススメ】の第十節【魔獣の斧ガイザル・アクス】の隠し条件≪獣金王権≫≪魔召帝政≫がクリアされました]


 “三百三十九日目”
 気が付けば日が変わっていた。

 現在は連合軍の【英勇】は粗方排除し、一部逃がしたり友好な関係を築いたりしたが、残す所後僅か。
 残っている本物の【英勇】達も満身創痍の状態なので、あと少しで全滅させられるだろう段階に達している。

 また、極一部の【英勇】と友好な関係を築けた事から、同盟軍の【帝王】とも友好な関係は築けたかもしれない、と今では思う。

 まあ、思うだけで、それは無理な話だっただろうが。

 ともあれ、【帝王】戦も佳境を迎えていた。
 ライオネルは【獣の神】の【神器】である【獣神之魂剛躯ビルスフォルガ】を、ヒュルトンは【魔界の神】の【神器】である【魔界神之魂核殻クリフォストーラ・エンデ】を発動させ、死力を尽くしてミノ吉くんやカナ美ちゃんと戦っていた。
 【神器】の力の分だけ、【帝王】達の方が優位ではある。
 しかし二鬼は戦いの中で急速に成長していったのか、殺される事無く拮抗し、そして徐々に上回り始めていた。

 その戦いは【帝王】達の血を滾らせ、魂を震わせたのだろうか。
 全員フラフラになる程の満身創痍ながら、誰もが清々しいいい笑みを浮かべていた。
 余分な感情は取り除かれ、ただ純粋に勝利を掴む為に戦っている。

 ところで、【帝王】達は俺とも戦いたがっていたようだが、非常に残念ながら縁が無かったと諦めてもらうしかないだろう。
 全力を出し尽くし、戦いの中で生を終えられそうなのだから、納得して俺達に喰われて欲しいモノである。

 ともあれ、残すところはあと少し。
 断聖を殺し、界聖を殺し、白主を殺せば、弱っている【英勇】達を殺して【聖戦】は終結する。

 筈なのだが、俺の眼前には、数百もの【英勇】とそれ以上の存在達が立ちはだかっていた。


 ――Φ θ Φ――



 でっぷりとした不摂生による肥満体型を光の衣で包み込み、その手にジャラジャラと金銀銅に輝く貨幣ゴルドで構成された鞭を持つ銭英が眼前で吼えた。

ゴルドハァァァァ、チカラデアアアアアル! 故ニィィィ、富豪デアル我ニ平伏セエエエエイッ! コノ貧乏人ガアアアアアアア!』

 その瞳には狂気が宿り、猛る感情のままに唾を飛び散らせながら鞭が振るわれる。

「いい加減、鬱陶しいッ」 

 貨幣の鞭の軌道を見切り、回避と同時に深く踏み込む。
 後方で鞭が決戦場に打ち付けられた衝突音を聞きながら、眼前に迫る銭英に向けてハルバードを一薙ぎ。身体を覆う光の衣に僅かながら抵抗されるものの、ハルバードは銭英の肉体を両断した。
 しかし斬り飛ばされた銭英の上半身が決戦場に落ちるよりも早く、四方から同じく貨幣の鞭が襲いかかる。
 これは先程殺した銭英ではなく、新しい銭英の攻撃だった。

ゴルドヲ持ツ我ハ偉イノダゾオオオオオオオ!』

 迫る四本の鞭に対し、その場で【大回転斬り】を発動させて急速回転すると同時に四本腕に持つ得物で薙ぎ払う。
 その際、指先から黄金糸を周囲に撒き散らす事で銭英達を絡め取る。
 鞭は火花と共に砕け散り、全身に絡む黄金糸が俺の回転によって巻き上げられた結果、強引に引き寄せられた四人の銭英は大きな隙を晒した。
 それを逃さず、さっさと呪槍で首を斬り飛ばす。
 四個の生首が刎ね飛び、噴水のように血が噴き出した。

 全身を返り血で染めながら、銭英達の死体を黄金糸で編んだ網で一纏めにし、ハンマーのように振り回す。
 肥えた四人分の塊だ。贅肉が多いためかそこそこの重量があり、その分だけ威力は大きい。

『爆発サセルゾッ爆発サセルゾッ』

 そして四人の銭英で出来たハンマーを、間髪入れずに接近しようとしていた八人の爆勇の側面に叩きこむ。
 霞む程の高速で振るった結果、肉と肉が衝突する鈍い音が連続して響く。また爆勇の爆発する拳に触れたのだろう、爆発音がところどころで轟いた。

 そして八人の爆勇を引き肉に変えた代償に大きく破損した銭英製ハンマーを、踊るようにして接近していた七人の舞英達に対して放り投げる。
 その際黄金糸の網を解いた事で、網の中で破損し細かくなっていた肉や骨が散弾染みた勢いで撒き散らされる。

『ウラララララララッ』

 舞英達はそれに対処する為、炎舞を行って自身を炎の化身へと変化させた。
 迫る肉や骨は炎によって炭化した。そして炎によって蒸発した濃厚な血の臭いと、焼けた肉の香ばしい匂いがブワリと広がった。
 それに食欲を刺激されるが、今は食欲よりも【見殺す魔眼】で舞英達を絶命させ、光の剣を持って背後から高速で突っ込んで来る三人の雲勇を迎撃する事を優先した。

『――シャッ!』

 雲勇達が裂帛の気合と共に繰り出す斬撃。
 左右の雲勇が繰り出す攻撃は背面の腕が持つ生体槍とハルバードで弾き、中央から迫る雲勇の攻撃はその場で跳躍して回避する。
 そして空中に居る状態から生体槍とハルバードで攻撃を弾いた左右の雲勇の心臓を串刺しにし、丁度足元に来た中央の雲勇の頭を足で左右から挟み、即座に回転する事で頸椎を捩じり折った。

 そして勢いが強過ぎたのかブチュリと雲勇の首がとれてしまったが、不可抗力である。

 空中に居る状態で雲勇の生首を近くに居た脚勇に蹴り飛ばし、一回転して着地すると同時に正面から騎士のような幻影が繰り出した槍の鋭い一突きに対し、【黒覇鬼王の金剛撃滅】を乗せた前蹴りで迎え撃つ。
 幻影の槍は前蹴りと衝突した瞬間に呆気なく砕け散り、その先に居た本体も胴体に直撃すると同時に霧散した。
 幻影は書英の持つ【書冊神之魂原書ルーツ・ブライオス】に綴られた[英勇詩篇]に登場する、過去に実在した【勇者】の偽物のようだ。
 偽物ながらその技の冴えは本物で、槍の一突きは直撃すれば俺を貫くだけの威力はあっただろう。

 使い捨ての【英勇】達を隠れ蓑にして本命の攻撃を行ってくるやり方に、敵ながら分かっている、とある種の共感を抱いた。

「百万の敵兵の中を単騎で駆け抜け、多くの【英勇】を討ち取り、小国だった祖国を大国から救った【聖槍の勇者】ムータロスですら一撃で倒すとは……」

 何処かにいる書英の呟きが聞こえたが、それは無視して背後に銀腕を振るう。
 そこには音もなく接近していた数勇が、触れた物の存在する確率を操作し、存在そのものを無へ帰す棍棒【数式神之魂改竄棍アボーガ・ムフェル】を振り上げていた。
 流石にその一撃を受けると俺もどうなるか分からないので、【灼雷雨の両腕イグナティル】を使って背後一帯に灼熱の雷光と暴雨を撒き散らす。

「ぬぅおおおおお!」

 一瞬で数勇の姿は見えなくなってしまったが、重傷を負わせた手応えがあるものの、どうやら殺せてはいないようだ。
 仕留めきれないのは残念だが、周囲に居た【英勇】達も巻き添えで多数死んだ為か、敵の攻撃に間が出来た。

 その隙を逃さず、口を大きく広げて串刺しにしたままの二体の雲勇を喰う事にした。
 まるで蛇のように大きく広がった口は上半身を丸呑みにし、そこで噛み千切る。
 下半身が残るので、また丸呑みにして喰う。一体につき二口で全身を食べ終え、雲勇から得たエネルギーが全身に広がるのを自覚する。

 本物で無くとも、限りなく本物に近いこの雲勇達の肉体は美味である。
 十分過ぎる程、喰う価値はあるだろう。

「やはり美味いが、少し飽きたな」

 だがいくら【英勇】達の肉体が美味いとしても、偽物とはいえ【英勇】の死体が数百体近く周囲に転がっていると、その有難味も薄れるというものだ。
 一定時間が過ぎると迷宮に喰われて消えていくが、こうも多いと戦いの邪魔にしかなっていなかった。
 現に今も、先程の戦闘で声勇や共勇の死体を何体か踏み砕いてしまっていた。足裏には肉や骨、臓腑特有の感触がこびり付き、場所によっては滑ってしまいそうだ。

「うふふふふふふふふ。まだまだまだまだ御代りはありますからね? たーんと、食べて下さい。最後の晩餐になるのですから」

 白主は、積み上げられた【英勇】達の死体を背景にして笑っていた。
 今の現状を生み出す元凶である白主は、俺に向かって来る狂った【英勇】達の数が減る毎に、とある【魔法】を行使する。
 その度に減った【英勇】達は補充され、繰り返される死と生がこの場にあった。

「全く、まさか【救世主】にこんな能力があるとは、予想外にも程がある」

 思わず漏らした本音。
 そして少しだけ、過去を振り返る。

 ――それは本物の【英勇】達の多くを殺して、暫く経っての事だった。
 順調に敵の数を減らし、俺達はその分だけ勝利に近づいていた。
 そしてあと数名になった段階で、白主が今までとは違った動きを見せたのだ。

 【白き誕叡なる救世主セイヴァー・ザ・ホワイトバース】である白主の【加護神】は、【大神】の一柱である【誕生と叡智を司る大神】だ。
 俺の【加護神】である【終焉と根源を司る大神】とは近くて遠い、深い関係にあるらしいが、それはさて置き。

 連合軍の総数が少なくなったところで、白主は収納系マジックアイテムなのだろう腕輪から、束ねられた髪の毛を取り出した。
 ザッと見ただけでも髪の毛は金色や銀色、赤色や青色など多種多様で、長さもバラバラだ。
 他人の斬られた髪の毛を数人分選別せずに纏めた、といった感じである毛束。

欠片を起点にウリスド命を模れザストゥト

 白主の口から圧縮詠唱が紡がれる。
 即座に発動できる代わりに威力が落ちる無詠唱や、必要な部分だけを選別して短時間で発動させる短縮詠唱などとも異なる、短いワードに複数の意味を持たせ、発動時間を早めつつ正式に詠唱した時よりも更に威力も高める高等技術である。

神は救うヤクストゥル挑む者のみをイーゼン

 高らかに紡がれた圧縮詠唱によって、一つの【魔法】が完成した。

『――“生者は叡智にて誕生すヴァーライド・リズレイド”』

 白主は毛束から引き抜いた数本の髪を周囲に撒き、発動した【魔法】は髪の毛を核にして新しい生命を誕生させた。
 一秒で全身の骨格が構築され、次の一秒で臓腑や筋肉が骨格に備わり、最後の一秒で皮膚や体毛が加わる事で完成する。
 生み出されたのは、髪の毛の数と等しい数のヒトだった。
 しかもヒトは声勇であり、愛勇であり、それ以外のこの【聖戦】で死んだ筈の【英勇】達である。

『うふふふ。今ここに、新しい【魔法】が【誕生】したのです。これは、アナタをあいす為の力ですよ。……おっと、裸のままだと駄目ですよね。――“神光を称える武装イッヒリーブ・アーロッド”』

 新たに生み出された裸体を晒す【英勇】達の身体に、白主の【魔法】によって用意された武具が装着されていく。
 自分の能力で武器を用意する者も少数ながら居たが、多くの【英勇】達は光の鎧や光の剣などで武装した。

 そうして同一人物が十数名以上居るという馬鹿げた状況になった訳だが、当然アチラは待ってくれない。
 武器を手に、俺達を殺そうと襲いかかって来る。

 そうして少し戦闘した結果、どうやら生み出された【英勇】達の知性は劣化し、武具など様々な要因から総合的な戦闘能力は本物よりも弱体化している事が分かった。
 しかし髪の毛、あるいは肉片の数だけ増えている為、個としての性能の衰えはあまり意味がない。
 多少の事など、数の前では無意味である。

『さあ、まだまだ行きますよ』

 白主が発動させた【魔法】は、これまで調べて知ったこの世界の常識とはまた違っている何かだった。
 白主が言うように、今まで無かった【魔法】がこの場で【誕生】したのかもしれない。

 この【魔法】を何かに例えるのならば、それはクローニングだ。
 髪の毛や皮膚の一部があればそこから同一の遺伝子構造を持つクローンを作成できるクローニングと、この【魔法】はよく似ている。

 前世でも再生治療などはあったので理屈的には一応納得できるが、流石に僅か数秒で造り出せるだけでなく、備わっている能力や戦闘技能などまで再現されれば、【魔法】だからというで説明は出来るものの、最早呆れる他ないだろう。

 俺も他人の事はとやかく言えないが、白主のそれはこれまで対峙してきた中でもずば抜けている。

 ただ、今生きている者のクローンが居ない事は気になった。
 断聖や界聖を増やせばそれだけで俺達はもっと追い込まれる事になるのだが、それをする素振りすら見られない。
 もしかすれば、この【魔法】は既に死んでいる者しか素材として使えないのかもしれない。
 そこにこの【英勇】達の大軍勢を攻略するヒントが隠されているのではないだろうか。

 ――僅かな回想は、三体の竜に変貌して突進を仕掛けてくる面勇の背後に隠れ、空間すら断つ斬撃を繰り出す断聖の攻撃によって中断される。

「セイッヤッ!」

 目隠しとなっていた面勇の竜体をまるて空気のように斬り裂き、迫る首狩りの一撃。
 戦技によって黒い燐光を纏うそれは、直撃すれば確かに俺の首を斬り落とすだろう威力があった。

「ふんッ」

「――ッ! 馬鹿なッ」

 それを【黒覇鬼王の金剛撃滅】などを重複発動させた【頭突き】で迎え撃つ。
 完璧なタイミングで繰り出したすくい上げるような軌道の【頭突き】は、頭部に生える硬い鬼角を側面に叩き込む。
 下から上に跳ね上げられて逸れた【割断神之魂剣】の斬撃は頭上の空間を薙ぎ払い、俺には何のダメージも及ぼさない。

 そして【双角乱舞】などを重複発動させた状態で、断聖に向けて再度【頭突き】を繰り出す。
 天に向かって振り上げられた状態から地に向かって振り下ろされる【頭突き】は【雷滅の斬角】の効果も有り、激しい雷撃と共に断聖の左肩に衝突。
 纏う光の鎧と激しくぶつかり合うが、それは一瞬の事で、次の瞬間には断聖の左腕と左脚まで縦一直線に消し飛んだ。
 一瞬断聖は現状が理解できないのかキョトンとした表情となり、次の瞬間には歯を食いしばって悲鳴が出るのを何とか堪えた。残る右脚だけで距離をとろうとするが、しかし逃げられるような機動性は既に無かった。
 俺は【英勇】達すら超える【聖人】の極上の血肉が焼ける匂いを嗅ぎ、反射的に追い詰めてその柔らかい首に歯を突きたてようとして。

「ッアアアアア!」

 空間と空間を隔てて遮断する【境界神之魂盾ボルダント】を構え、全力突進を側面から仕掛けてきた界聖によって邪魔された。
 この場は深追いせずに飛び退るが、その際【物理ダメージ貫通】と【水晶振動周波クリスタル・クオーツ】を発動させた状態で蹴りを入れる。
 界聖の堅牢な防御も、ある程度以上の攻撃ならば衝撃が通る事は把握済みだ。界聖が持つ【境界神之魂盾】の表面が僅かに波打ち、その奥に居る界聖に僅かながらダメージを通った確かな手応え。
 ダメージは少なくとも、ダメージと一緒に伝わった振動で少しでも腕が痺れたりしてくれれば儲けものだ。

 蹴りの勢いのまま距離をとったが、敵の数が多い為、周囲は既に包囲されている。

 着地すると同時に、左側面に居た六人の円勇が、その手に持つ光の戦輪チャクラムを一斉に投擲。一人二つ持っていた為、チャクラムの合計は十二だ。
 チャクラムはまるで生きているかのように揺れ動き、大気を斬り裂くように迫って来る。

『刻ンデヤルゾ刻ンデヤルゾ』

 それを【聖十字斬り・改グランドクロス・スマッシュ】で迎え撃つ。
 朱槍と呪槍によって繰り出された飛翔する十字の斬撃は全てのチャクラムを粉砕し、そのまま円勇達を斬り裂いた。

 その直後、右斜め後方上空から魚英が巨大な空飛ぶ魚に乗って突っ込んで来る。
 砲弾めいて迫る魚英の手には光の銛が構えられ、突進すると同時に突きたてようと目論んでいるようだった。

『魚オオオオオオオオオオッ』

 下手に回避すれば他の【英勇】達から攻撃されると判断し、振り返りもせずにハルバードを振り下ろす。
 斧刃からは巨水刃が発生し、それに【嵐風・改】による風刃が加わった事で威力が増加。騎乗していた魚ごと魚英が真っ二つになった。
 それでも勢いは消えなかったのだろう、俺に直進してくる軌道から逸れた死体は周囲の【英勇】達を巻き添えにして何処かに転がって行く。

『毒茸ハ美味インダヨオオオオオオオオ』

 魚英落下に伴って巻き起こった血煙りの中、右斜め前から巨大な毒茸を振り回す九人の茸勇が狂乱しながら迫って来る。
 毒々しい胞子は周囲一帯に振り撒かれ、常人ならば一呼吸で絶命する危険地帯となっていた。
 だが、【状態異常無効化】で俺には全く意味が無いので、ハルバードと生体槍による斬撃を繰り返した。
 【重斧兜割り】や【気刃斬り・加重オーラスラッシュ・ヘビィ】によって一撃の威力が上昇していたからか、あるいは構造的に縦に斬りやすいのか、それはともかく、盾代わりにされた毒茸ごと茸勇の肉体はバラバラになって転がった。
 一人は片腕と片足を失いながらも生きていたので、口内に溜めた【蛇毒投与ヴェノム】の猛毒を吐き出し、その顔に浴びせる。
 紫色の猛毒はジュワリと異臭と異音を発しながら茸勇の顔面を焼け爛れさせ、その命をあっという間に奪っていった。

『ラララララララララ』

 周囲に死体が積み重なっていく最中、右側面に密集していた十数名の声勇が一斉に合唱し始める。
 ある意味一人合唱団とでも言うべき集団から浴びせられる音撃は相乗効果によって高まり合い、その周囲に居る共勇達の力もあって、局地的な原子分解が発生する。

 効果範囲内の【英勇】達の死体も分解され、一掃されていく光景を見つつ迎撃の咆哮を発するが、僅かに押し負ける。

 抵抗するがジリジリと破壊が迫り、次々と追加されていく声勇と共勇達に更に押し込まれていった。
 単独なら容易に勝てるのだが、流石に規模が違う。
 接近戦では本物よりも容易に殺せるが、遠距離攻撃では単純計算で人数分だけ威力が増加していく為、非常に厄介である。

「アアアッ! シッ」

 このままではジリ貧だと判断し、一瞬だけ普段以上に大きく吼える。
 それで僅かながら押し戻した瞬間、魔力を込めて朱槍を地面に突き刺し、能力の一つを解放した。

現鬼神槍ヴァイシュラーダ飢え啜る朱界の極槍ヴラディスグル・ベルイガ】の固有能力【血界生ず鬼神槍の軍勢ツェンペッシュ・ヴァルドラ】が発動しました]

 次の瞬間には、視界全域に朱槍の森が形成される。
 下から貫かれた無数の【英勇】達は屍を晒し、無数の死体が突き上げられて肉片と臓物の雨を降らした。

「……ちとやり過ぎたか?」

 猛烈な勢いで広範囲に拡散した肉の焼ける匂いが鼻孔をくすぐる。
 今までは生命活動を停止して高熱を宿す決戦場にただ焼かれていた死体の肉が、朱槍によって撹拌され、結果として閉じ込められていた匂いがブワリと巻き起こってしまったようだ。

 戦いの最中だが、ついついそちらに意識が向いてしまうのも、仕方ないのではないだろうか。

「貰ったッ」

 そんな俺の精神の隙をついて、朱槍の攻撃を傷を負いながらも獣染みた動きで回避し、背後にまで迫っていた狩勇が【狩猟神之弓箭ハルマント・アンルゥオ】という神弓から黒い燐光を纏う黄金の矢を放ち。

「いっひっひっひっひ。【星読み】の通りだねぇ、ここで死んどくれよ、お前さんも!」

 まるで予め全てを知っていたかのように、死体の陰で動かずジッとしていただけなのに全ての攻撃を回避した星英が【星読神之魂水晶クリオネルディス・アーク】という巨大な水晶から黒い燐光を纏う無数の光線を撃ち出した。

 攻撃はどちらも【神器】を使った、全力の一撃だった。
 防ぐ事はハルバードや生体槍では不可能であり、呪槍だとて壊されかねない。朱槍と銀腕ならば防ぐ事は出来たかもしれないが、どちらも光速の一撃だった。
 放たれた瞬間には、既に終わっている。

「ッ――グプ……」

 狩勇の矢が心臓周辺を丸く射抜き、光線が左頭部と腹部、それから左脚をもぎ取った。
 右脚だけで倒れないように踏ん張るが、口からはグプリと血が込み上げてくる。久しぶりに受けた致命傷だ。
 このくらいの損傷は普段なら即座に回復できるのだが、【神器】による攻撃には回復を阻害する効果でもあるのか、損傷部は蠢くが、思うように再生しない。

「止めッ!」

「しぶといねぇッ!」

 まだ死んでいないと分かったのだろう。
 狩勇は神弓に備わる刃で俺の首を斬り飛ばしに迫り、星英もまた近距離で極太の光線を放つ為か近づいてきた。
 狩勇の踏み込みは鋭く、雷鳴のように振るわれた刃が首を斬り飛ばし。
 星英が放つ光線は太く、下半身を一瞬で焼失させた。

 そこにあるのは、確実な死であった。

[オバ朗が死亡しました。【五つの命魂めいこん】が発動します]

 そして、次の瞬間には完全に再生した状態で二人の眼前に立っている。

「――は?」

 流石の狩勇も、まだ跳ね飛ばした首が地面にも落ちていないのに、まるで時間を吹き飛ばしたかのように再生した俺を見て驚愕したようだ。
 前衛は使い捨ての【英勇】達に任せ、後方からチマチマと削るばかりしていた狩勇とここまで接近するのならば、あえて一度死んでみるのも悪くない選択肢だっただろう。

「死んだ価値はあり、だな」

 【重複存在】と【存在復元】による合わせ技や、【超速再生】を使えば似た事はできたので、別に死ぬ必要性はなかったかもしれない。
 しかし、やはり死ねば即座に完全な状態で復活できる【五つの命魂】の方が今回の奇襲には最適だったのである。
 僅かにでも復元が遅れれば、狩勇は反応したに違いないのだから。

[オバ朗は戦技【首狩りボーパル・ストライク】を繰り出した]

 狩勇が何か行動する前に、俺は朱槍で薙いだ。
 【首狩り】の一撃は抵抗らしい抵抗も許さずその首に切り込み、呆気なく切り飛ばす。
 狩勇の生首には、理解できないという感情がありありと刻まれていた。

 一応俺と同じように再生する可能性は否定できないので、残る肉体も朱槍と呪槍で三分割した。ドチャリ、と肉片が飛んでいた首とほぼ同時に決戦場に転がる。

「ランちゃ――グポ……ギギグゲガガガ……さ、流石に、これは【星読み】には、無かったねぇ……」

 そして若干遠かった星英の腹部に、【投擲】したハルバードが突き刺さる。
 身体を雷撃が駆け抜け、内部から灼熱で燃やされながら、まだ語る言葉を残すだけ、星英の強さが窺える。
 だからこそ、ここで逃がす訳にはいかない。千載一遇のチャンスである。

「アンタ、いま逝く……」

 銀腕で星英の首を掴み、そのまま頭部を噛み千切る。
 遺言めいた言葉は口内に消え、長年聖王国を支えた重鎮はそうして死んだ。
 呆気ない最後と言えばそれまでだが、大抵死とはそんなものだろう。
 盛大な最期を迎える方が稀ではないだろうか。

「っぷぅー。美味いな、予想以上に」

 喰った星英からは他の【英勇】達には無かった熟成された美味さ、というモノを感じたので、残りも【特大鯨呑とくだいげいどん】を使ってペロリと完食。
 全身を駆け巡る年季の入った複雑な味わいは、まるで職人が丹精込めて作り上げた極上の熟成肉を喰っている時のような感慨深い思いが湧き出てくる。

「殺しても死なないとは、本当に凄いですね。でも、それには限りがあるようですね。皆さん、気をつけて行きましょう」

 味方を殺され、じっくりとその血肉を堪能する俺を前に、しかし普段となんら変わりない白主の声が聞こえた。

 かと思った直後、白主の背後に控える四百メートル級の黒い【龍王ドラゴンキング】と、二百五十メートル級の白い【竜帝エンペラードラゴン】から同時に【息吹ブレス】が放たれた。
 黒と白の光の奔流は射線上の全てを薙ぎ払い、俺に向かって直進してくる。
 星英は全て喰ったが、足元に残る狩勇の死体も是非回収したい俺としては、回避する事は出来なかった。回避すれば、本物の狩勇はこの地上から永遠に失われてしまうのだから。

「全く、手札が多過ぎるだろうに」

 思わず愚痴が漏れる。
 そう、白主によってクローニングされたのは【英勇】達だけではなかった。
 過去に存在が確認された、それこそ歴史に名を刻む存在すらこの場に復活させて使役しているのだ。

 唯一救いなのは二頭の【帝王】類達のように強大な存在のクローニングにはかなりの負担があり、またその素材も希少なため数は少ない事だろうか。

 尤も、それすら誤差の範囲かもしれないが。
 ともあれ、こちらももう少し本気を出す必要があるだろう。

鬼珠オーブ――解放」

 全身にある鬼珠がドロリと溶けた。
 本番は、まだまだこれからである。



 ――Φ θ Φ――



 [決着がつきました]
 [特殊能力【異教天罰】は解除されます]
 [夜天童子は≪異教徒/詩篇覚醒者≫率いる軍勢との【終末論・征服戦争】に勝利した為、報酬が与えられます]
 [夜天童子は【迷宮の種子】を手に入れた!!]
 [夜天童子は【終焉を招く黒槍ゲーディヘルダ】を手に入れた!!]
 [夜天童子は【根源に至る黒槍カスティヘルダ】を手に入れた!!]


 夜遅く、此度の【聖戦】は終了を迎えた。
 立っている者は俺達以外には無く、決戦場には【救聖】や【帝王】、そして夥しい数の【英勇】や強力なモンスター達の屍で埋め尽くされている。

 白主によって【誕生】させられた数は、最終的には軽く数千は居ただろうか。
 よくもまあこれだけ、と思いつつ、できる限り死体をアイテムボックスに収納していく。

 休まず後始末をしながら【聖戦】を振り返るが、本物の【英勇】を全員殺し、二人の【聖人】も倒してからが本番だった。
 やはり白主の【魔法】は対象者が死んでいなければ使えないようで、白主を守って先に【聖人】が死ぬと、その遺髪からクローニングされた【聖人】が戦線に加わったのである。
 【神器】などの武器は無く、他と同じく知性は劣化し弱体化していたが、それでも素の状態で【英勇】達を大きく上回る存在だ。
 それが数十人、ほぼ同一人物であるが故に行えるような連携を見せて来るのだ。相手にする側としては、これほど厄介な事はないだろう。

 一応、ブラ里さんなども離れた場所で戦っていたので俺に全てが集中する事は無かったが、この身は幾度も斬られる事になってしまった。

 しかしそんな事がありつつも、俺を大いに苦しめた白主は、その心臓を朱槍で貫かれて果てている。
 その死に顔は満足そうで、ある種の神秘さすら感じられるほど穏やかだった。

 命が消える間際、『例え私がここで果てようとも、第二、第三の私がアナタを狙うでしょう』などと不吉な遺言を残しているが、多分俺を不安にさせ、心に自分という存在を刻む事が目的に違いない。
 白主は確実に俺が殺した、それは間違いないのだから。

 言葉の真偽はともかくとして、残念な事に白主の死体は回収できなかった。
 正確に言えば【救世主】と【聖人】の死体は、となる。

 どういう理屈か、白主が死んで数秒後、白い砂と化してしまった。それの後を追うように【聖人】達の死体は全て白い砂と化してしまい、突如吹き抜ける風によって散ってしまったのである。
 その血肉はぜひ喰いたかったのだが、こうなっては仕方ない。

 他の【英勇】達と、様々な【帝王】類達を回収した事で満足しておく事にした。
 後始末が終われば、大森林でしばらくのんびりしたいものである。


 [保有迷宮内にて【白き誕叡なる救世主】が死亡しました]
 [死亡した事により流出する【神力】の一部は【神器】に流入し、強化・固定されます]
 [夜天童子は【誕叡大神之魂界杖セフィロスティ・ゼクリオス】を手に入れた!]

 [保有迷宮内にて【境界の聖人】が死亡しました]
 [死亡した事により流出する【神力】の一部は【神器】に流入し、強化・固定されます]
 [夜天童子は【境界神之魂盾ボルダント】を手に入れた!]

 [保有迷宮内にて【割断の聖人】が死亡しました]
 [死亡した事により流出する【神力】の一部は【神器】に流入し、強化・固定されます]
 [夜天童子は【割断神之魂剣クリベルント】を手に入れた!]

 [保有迷宮内にて【狩猟の勇者】が死亡しました]
 [死亡した事により流出する【神力】の一部は【神器】に流入し、強化・固定されます]
 [夜天童子は【狩猟神之弓箭ハルマント・アンルゥオ】を手に入れた!]

 [保有迷宮内にて【数式の勇者】が死亡しました]
 [死亡した事により流出する【神力】の一部は【神器】に流入し、強化・固定されます]
 [夜天童子は【数式神之魂改竄棍アボーガ・ムフェル】を手に入れた!]

 [保有迷宮内にて【星読英雄】が死亡しました]
 [死亡した事により流出する【神力】の一部は【神器】に流入し、強化・固定されます]
 [夜天童子は【星読神之魂水晶クリオネルディス・アーク】を手に入れた!]

 [保有迷宮内にて【書冊英雄】が死亡しました]
 [死亡した事により流出する【神力】の一部は【神器】に流入し、強化・固定されます]
 [夜天童子は【書冊神之魂原書ルーツ・ブライオス】を手に入れた!]

 [保有迷宮内にて【魔帝】が死亡しました]
 [死亡した事により流出する【神力】の一部は【神器】に流入し、強化・固定されます]
 [夜天童子は【魔界神之魂核殻クリフォストーラ・エンデ】を手に入れた!]

 [保有迷宮内にて【獣王】が死亡しました]
 [死亡した事により流出する【神力】の一部は【神器】に流入し、強化・固定されます]
 [夜天童子は【獣神之魂剛躯ビルスフォルガ】を手に入れた!]

 [世界詩篇[黒蝕鬼物語]第六章【神災暴食のススメ】の第十一節【救聖の詩セイバル・カレント】の隠し条件≪救済の願い≫≪聖なる祈り≫がクリアされました]


 “三百四十日目”
 少々長かった【聖戦】も、昨日で終わっている。

 参加した団員達の怪我もこの数日で大きく回復し、一部を除いて私生活は問題なく暮らせているようだ。

 俺を筆頭とする九鬼はまだ療養する予定だが、とりあえず、今回参加した面々を【アンブラッセム・パラべラム号】にある大宴会場に集合させ、昼から宴会を執り行う事にした。

 此度の【聖戦】で、多くの団員が死んだ。
 しかし激戦を乗り越え、【存在進化】した者や新たな力を得た団員は多い。
 あるいは内心に秘めていた悲願を達成したり、過去の因縁を清算した者も居る。

 だから居なくなった者達を弔い、生き残った者達を祝福する為、俺達は酒杯を掲げて飲み明かす事にしたのだ。

 並ぶ料理は飯勇を筆頭としたメンバーが用意してくれた。
 丁度【龍王ドラゴンキング】や【竜帝エンペラードラゴン】の全身を新しく手に入れる事が出来たし、大量の【英勇】達の肉がある。
 まあ、復讐者や赤髪ショートなど人間の団員も混じっているので、流石に【英勇】達を材料にするのは止め、龍王と竜帝の肉をメインに、【鬼神の尊き海鮮食洞】から採取してきた海鮮食材など迷宮食材を大量に使用する。

 飯勇達には既に分体が【寄生】しているので毒物などは混ぜないだろうとは思いつつ、一応警戒だけはしていたのだが、やはり杞憂だったらしい。
 極上の素材を前に料理人としての血が騒ぐのか、嬉々として調理を行っていた。

 まるで料理漫画のように派手な調理は見ていて楽しく、出来上がった料理は絶品である。
 思わず手が動き、それが一向に止まる気配が無かった。喰えば喰う程新しい発見があり、より食欲がそそられるのだ。
 ここには居ない団員達にも後日喰わせてやろうと思いつつ、今は俺達だけで独占した。
 これくらいの特典はあってしかるべきだろう。それに今日は無礼講。
 油断していると、他の団員達に喰い尽くされてしまいかねなかった。

 ともあれ、別れの悲しみも酒や料理と一緒に食べ尽くし、勝利の余韻に酔いしれて、俺達は幾度目かの乾杯を交わした。
 そして日が変わろうとした深夜――


 [世界詩篇[黒蝕鬼物語]第六章【神災暴食のススメ】の最終節【鬼神の宴ヴァイズ・グニード】の隠し条件≪弔いの酒杯≫≪大盤振る舞い≫がクリアされました]
 [成功報酬【ハイエンド宝箱[聖戦リミテッドエディション]】が贈られます]
 [成功報酬【終焉へ至る根源の黒鍵】が贈られます]
 [成功報酬【鬼酒・銘[鬼神は天に座す]・大樽】が贈られます]
 [成功報酬【鬼酒・銘[鬼首怪快・天武]・大樽】が贈られます]
 [成功報酬【鬼酒・銘[鬼首怪快・地祭]・大樽】が贈られます]
 [成功報酬【暗黒大陸への航海権】が贈られます]


 ――脳内で響くアナウンス。それと共に、眼前に立派な宝箱などが出現する。

 どうやら、第四章【王国革命のススメ】では未達成だったが今回は全てクリアできたようだ。
 しかも、酒が大樽で三種類も手に入るとは。
 もしや以前の受取れなかった【■■■■】とやらも、酒だったのではないだろうか、と考えが過る。
 もしそうならば、なんと勿体ない事か。
 いや、しかし、それだとお転婆姫との関係も有ったし、仕方ないのか。などと、悩んでみるが過ぎた事。
 今日はただ、新しく手に入れた酒も皆に振る舞う事にした。

 夜はまだまだ、これからだ。
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