追加
「04. ギャンブルの後、強い自責の念に駆られる事がある」
「15. 心配事や問題を避けるためにギャンブルをしに行った事がある」
「18. 心の葛藤、失望、ストレスなどを感じたとき、無性にギャンブルをしたくなる」
私は彼女に対する見栄と、
溢れる劣等感に蓋をするため、
自分は彼女に嘘をつきました。
「サークルはかなりいろんな活動を計画しててさ、今度はみんなで海に行くんだ」
「文化祭でめちゃくちゃお客さんがきてさ、盛り上がりが凄かったんだ」
「いまの勉強はとても面白い」
サークルで旅行にいっても、写真は必ず見せませんでした。
サークルの友達に彼女を会わせることもしませんでした。
文化祭に彼女を連れて行くこともしませんでした。
たまにする勉強の話も、
内容がわからないので、すべてがすべて上っ面だけでした。
本当の情報を出すことで、彼女のなかでいい感じに育ってきた理想の私が、壊れてしまうのが嫌でした。
人間、理想を演じ続けていくと、
乖離の振り幅はどんどん広がっていきます。
現実は変わらないのに理想が向上する。
理想は変わらないのに現実が堕落する。
自分の場合は後者でした。
「現実の自分は大学で行き先を見失い、描いていたキャンパスライフは打ち砕かれ、暇さえあればパチンコをしている」
彼女のような真人間と会い、話したあと、自分は嫌でも「惨めさ」を自覚しました。
ふとした瞬間に、
頭がおかしくなりそうでした。
そのイライラを解消するためにパチンコをすることもありました。
**
パチスロへの依存度が急激に増してきた時期のことです。
彼女とのデート代を捻出することができなくなってきました。
金銭面は、付き合いはじめから(飲食などは)割り勘がほとんどでしたが、その個人負担のデート代さえないのです。
月の状況によっては、
財布のなかには400円、500円。
お互い実家暮らしだったので、どっちかの家に入り浸る、みたいなことはできません。
デートをするにはお金がかかりました。
お金がないとき、
最初は、ちょっとの時間会うだけにしました。
それが続くと、今度は
嘘をついて約束を断るようになりました。
「ごめん、急にバイトが入っちゃって…ちゃんと埋め合わせはするからさ!」
その次も嘘をついて約束を反故にしました。
「ごめん、またまたバイト入っちゃった…本当ごめん。来週の月曜日は空いてる?そこは必ず俺も空いてるからさ!」
「うん…。ねぇ…最近思うんだけど、私のこと嫌いになっちゃったの?」
ある日の夜、電話越しに、
泣いている彼女の声が聞こえました。
「いや、何言ってるんだよ、ちょっと待ってよ、本気で急にバイトが…」
本当、何言ってるんだって話です。
私は彼女のことが好きでした。
好きだから、彼女のことは何より最優先にしたい。
気持ちでは当然そのように思ってました。
でも、一度パチスロをすると、自制できなくなり、何もかもがどうでもよくなってしまうのです。
「あいつは俺の何を見て好きだっていってるんだよ!クソ!自分のことばかり話しやがって!俺は大学名しか価値がないってことか!ファッション感覚かよ!」
パチンコ屋には、
負の感情が剥き出しになった自分がいました。
そうしてパチンコをした日は、
勝っても負けても深い後悔に襲われました。
「ああ…彼女が楽しみにしてたライブのチケット代、使ってしまった…どうして俺はこんな駄目人間なんだろう。パチスロってそこまでしてやるもんじゃないだろ?なんでわかってるのにやってしまうんだ俺は…」
でも、悲しいのは彼女の方です。
思いあたる節もないのに、
突然、よそよそしく、
突然、連絡が繋がりにくくなり、
当然、冷たくなったのですから。
きっと、
浮気をしてると思ったのでしょう。
この世にパラレルワールドがあるのだとしたら、私はまず真っ先に、パチンコをしていなかった自分と、彼女との世界を見てみたいなと、いまでも思います。
その世界で付き合いを続けていたとしても、結婚はしていなかったでしょう。
恐らく私は抱いていた劣等感は根本的に解決できずそのうち耐えられなくなり、
彼女は彼女で、同じような視点で話をできる人を求めていくような気がします。
でも、別れた原因は決してパチンコであってはならなかった。
別れを切り出したとき、
ものすごく泣かれました。
「私の悪いことがあったら言って。直すから。私、別れたら一生後悔するよ…」と言われました。
私は、「悪いとこなんかないよ。他に好きな人ができたんだ。」と嘘をつきました。
本音は、劣等感に耐えられなかったのと、金がないのと、時間と金をもっとパチンコに振り分けたかったから、の三つでした。
私は正真正銘の「クズ」になりました。
この後、堕落は加速していきます。