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ゲーム音楽の巣

ゲーム音楽を作曲してます。音楽素材サイト「音の園」を運営してます。

Dream Theater【THE ASTONISHING】CDレビュー

CDレビュー

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http://www.dreamtheaterforums.org/boards/index.php?topic=44903.0

ドリームシアターが1月29日に「13作目」の新アルバムをリリースしました。

二枚組のコンセプトアルバムと言う事で、ちょっと遅いけど最近ようやく購入しました。学生の頃にコピーしたりと、洋楽のプログレメタルでは1番影響を受けているバンドなので、今でもアルバムが定期的にリリースされるのは本当に嬉しい。

バンドのリーダーである マイク・ポートノイ が脱退した頃から少し聴かなくなってしまいましたが、久々にガッツリと二時間以上の音楽を楽しみました。

以下、ひたすらダラダラと感想を述べたいと思います。

あらすじ

-The Astonishing-

今作の舞台は、中世封建制度に支配されたディストピア。常に機械の唸るような騒音があり、無感情の服従により平和であるかのような錯覚に陥っている世紀末に、その雑音を克服し帝国を打ち破る、選ばれし者の到来を望んでいる場所からストーリーは始まる。

プログレッシブ・メタルのパイオニア DREAM THEATER、来年1/29に約2年半ぶりとなるニュー・アルバム『The Astonishing』を世界同時リリース決定! | 激ロック ニュース

メンバー

Vo:ジェイムズ・ラブリエ
Gt:ジョン・ペトルーシ
Ba:ジョン・マイアング
Dr:マイク・マンジーニ
Key:ジョーダン・ルーデス

曲リスト/全34曲

【DISC 1】
1. Descent Of The NOMACS
2. Dystopian Overture
3. The Gift Of Music
4. The Answer
5. A Better Life
6. Lord Nafaryus
7. A Savior In The Square
8. When Your Time Has Come
9. Act Of Faythe
10. Three Days
11. The Hovering Sojourn
12. Brother, Can You Hear Me?
13. A Life Left Behind
14. Ravenskill
15. Chosen
16. A Tempting Offer
17. Digital Discord
18. The X Aspect
19. A New Beginning
20. The Road To Revolution

【DISC 2】
1. 2285 Entr'acte
2. Moment Of Betrayal
3. Heaven's Cove
4. Begin Again
5. The Path That Divides
6. Machine Chatter
7. The Walking Shadow
8. My Last Farewell
9. Losing Faythe
10. Whispers On The Wind
11. Hymn Of A Thousand Voices
12. Our New World
13. Power Down
14. Astonishing

一周目の感想 

まず二時間以上もあるので一周目では全体像を把握出来ない。それでもメロディの美しさと曲の構成と展開、アルバムが「ミュージカル」のように展開されるので聴き易く、車の中でひたすらリピートしています。

今回、殆ど演奏テクニックを必要以上に出さないことから「メロディを聴いて欲しい」と言うのが伝わってきます。ギターやキーボードがそれらを封じているの対し、マンジーニ の細かいフィルが上手い具合にメタル色を通常パートでもキープしてます

マンジーニ の素晴らしいところは、ドリームシアターの前任のドラマーである ポートノイ のフレージングを所々に取り込んでくれているところ。マンジーニ らしさを出しつつも、今までのイメージを大幅に崩さないでいてくれるのが嬉しいです。また、今作よりドラムのミックスが適正なバランスになっているのも見逃せません。

やはりコンセプトアルバムなので「メトロポリスパート2」のように順番に聴いていくことが1番アルバムを楽しめる展開になっていますね。ボーカルのメロディを支える安定したテクニックとアレンジ力が、聴いていて本当に聴き心地が良い。

1番驚いたのはラブリエの歌唱力。力強さと、スウィートな甘い声も使い分け、表現力は超人の域に達してます。間違いなくドリームシアターのアルバムの中でも、トップに君臨する傑作感が漂っています。このアルバムを早くライブ映像で見たい。

二時間以上のコンセプトアルバムなので、 ジョーダン もホンキートンクやオリジナリティ溢れるレイヤリングのシンセフレーズの引き出しを躊躇無く出し切ってます。(過去作に比べると今作ではその比率は落ちていますが)

少し驚いたのは、今回柔らかなエレピを弾いていること。ジョーダン がドリームシアターでエレピを弾くのはかなり珍しいですね。(ウーリッツァーかな?)

曲の導入部分や、つなぎ目をクラシックで培ったルバート感溢れるピアノテクで物語を演出しています。特に今回ピアノの音色とリバーブ感は極上のもとなっているのが見逃せません。ラブリエ の声と共に、心地よさは最上級のものへと昇華しています。

マイアング のベースは相変わらず主張せずに支える側に徹していますね。もはやバンドの中での立ち回りを理解した上での仕事人と言えます。演奏面だけでなく、メンバーとしてもドリームシアターの人間関係のバランスを保つ上で非常に重要なポジションを担ってます

最後に今作歌詞と世界観を設定したペトルーシ、基本的には優しくて切ない曲が多く、感動的なロックバラードがかなり多い。彼の根底にある表現とはこういった音楽なのだというのが良く分かる気がします。

今作の魅力

ミキシング

まずはミックスを担当した リチャード・チッキ の仕事が素晴らしい。これだけの音を良くここまで全てが活きるように仕上げたものと感心しました。普段はそこまで音のバランスが悪くなければ、基本的に曲を聴いてますのでミックスについてあれやこれや言いません。しかし今回は本当に聴いていて素晴らしく心地よいのでついつい誰がミックスしたのか気になってしまいました。

合唱隊

メトロポリスパート2 でも テレサ を始めとしたクワイヤー隊が参加していましたが、今作も2曲目の「Dystopian Overture」などからもそれが聴けます。この曲の2:55〜のインストパートは メトロポリスパート2 の「Overtunre1928」を沸騰させますね。ラスト曲の「The Astonishing」は、ライブでは間違いなく盛り上がりを見せてくれるでしょう。

ピアノ

ピアノの音作りがとにかく美しく心地よいです。ジョーダン のテクニックとサンプルの良さはもちろんなのですが、曲間などの繋ぎや曲のイントロなど今作ではかなり重要なポジションを担っています。とにかくリバーブが極上なものに仕上がっていると思います。

オーケストラ

SIX Degrees のように全面に出てきているわけでは無いですが、バラードが多い今作ではCDよりも、やはりライブでの生演奏が見物になってくると思います。クワイヤーと共にバンドと融合されて目にすることが出来る日を楽しみに待ちたいです。

バラード

The Answer」などを始めとするバラードの出来が素晴らしい。ただあり過ぎて差別化が難しいものもあります。短いものから長いものまで充実したメロディラインと展開、さらにはアコギ、ピアノ、ヴァイオリンなどのアコースティックの楽器の音色も非常に美しいものとなっています。聴き込まないとどれも同じ感じに聴こえてしまいます。

世界観

歌詞を見ながら少しでも理解しようと聴くと、曲だけよりも世界観が広がります。歌詞が分からなくてもメロディだけでも良いと思うので、歌詞を理解すればさらなる次元へいけると思います。

オーケストラとの共演

コンセプトアルバム「メトロポリスパート2」より「ストレンジ・デジャヴ」より

当時はオーケストラとの共演も叶わなかったアルバムの曲も、今の彼らの実力や知名度なら起用しやすくなっているので、過去の名曲も現代のアレンジでどんどんライブで蘇らせて欲しい。 

今作の「The Astonishing」もオーケストラ、クワイヤー隊を引っさげた、アルバム完全再現ライブを楽しみに待ちたい。

最後に

正直なところ、ポートノイ が脱退してからはアルバムを買わなくなってしまったし、少しドリームシアターから離れていました。マンジーニ の加入後、彼のライブパフォーマンスや人柄の良さを動画などで見ながらも、前作の「DREAM THEATER」も今までのような魅力を感じられなかったので、やはりテクニックはあってもアルバム作りとなるとまた別の能力が必要なんんだろうと、ポートノイ のプロデュース力を改めて認識させられました。

しかし驚いたのが、今回それらの過去作を覆すような傑作「The Astonishing」を出してくれた事。ソングライティングやパートアイデアのメインは当然 ペトルーシ と ジョーダン だと思いますが、マンジーニ が板についてきて ポートノイ を失ったドリームシアターが過去作を越える勢いで傑作を生み出してくれたことは本当に嬉しい。(正直まだまだパート2を越えれてはいないと思いますが....)

アルバムの中で何がベストなのかはファンによりけりだと思いますが、バンドというのは本当に不思議なもので、諦めたら終わりだし、このように続けて続けて苦難を乗り換えてファンに支えられて、過去を越えるものを生み出していく姿勢に本当に胸を打たれました

高校生の時に出会ったドリームシアターが、今でもこうして素晴らしい音楽を作り続けてバンド活動を存続させる努力をしているのを見て、自分が好きになった音楽は間違いなく本物だったのだと認識させられました。あの時、毎日登校中にドリームシアターばかりしか聴いてなかった時が懐かしい。

次回作は当分先になると思いますが、まずは今作の完全再現ライブが課題だと思いますので、曲を覚えるのがクレイジーな作業だと思いますが、早くライブを見たいですね。