ゲームから学ぶハマるユーザー体験のつくり方!ポンからモンストまで
こんにちは、たかっく(@takaku_t)です。
面白法人カヤックという会社でゲームディレクターをしています。最近はクラッシュロワイヤルにハマっています。
小学生の時にスーパーマリオワールドと出会ってから今日まで、ゲームを通して様々な体験を得てきました。魔王を倒して世界のヒーローとなったり、ライバルと競い合いながら図鑑埋めに夢中になったり。
今回は、ゲームソフトの歴史とともにユーザー体験(ユーザーエクスペリエンス)のつくり方を振り返っていきたいと思います。
目次
ポン
アタリ社が1972年にアーケードゲームとして発売した「ポン」が、史上初のビデオゲームのヒット作です。
画面上には卓球ラケット2枚、ボール、スコアカウンターが表示されていて、手元のダイヤルで卓球ラケットを操作する至極簡単にプレイできるよう作られていました。
このゲームは、アタリ社の新人研修で作られたゲームでしたが、それまでのゲームと違い操作が簡単で、時間に応じて球のスピードが早くなっていく工夫や、両端までラケットを移動できず、上手くそこを狙えば点数を取れるといった要素が大ヒットにつながったと言われています。
相手がコンピューターではなく、人と対戦することもヒットの要因だと思います。友達と一緒にわいわい遊ぶのは、たとえシンプルなゲームでも盛り上がりますよね。
スペースインベーダー
1978年、タイトーからスペースインベーダーが発売されました。
ブロック崩しをもとに作られた本作の特徴は、敵が攻撃してくることです。
徐々に敵の軍団が迫ってくる緊張感と、倒し終わった後にまたスローに戻る安堵感が、心地よいリズムを生み出しています。
途中で飛んで来る宇宙船を倒すと50〜300点のボーナスが貰えます。この点数は乱数ではなく、弾の発射回数で決まっていました。一見ランダムに見えるけれど、実はユーザーの腕次第で高得点を目指せるところが、コアユーザーに刺さったようです。
スーパーマリオブラザーズ
1985年、任天堂より発売されたアトラクションゲームです。
ステージ1-1から、ユーザーをおもてなす仕組みが施されています。例えば、クリボーとキノコはよく似ています。すると、初見のユーザーはキノコも避けてしまう。そこで、キノコから逃げようとしてジャンプしても頭上のブロックにぶつかって結局キノコを取ってしまうようにできています。
他にも、最初の大きな落とし穴の上に、同様のサイズの距離が空いたブロックが配置されています。ユーザーはこの上から隣のブロックに飛び移ろうとジャンプし、距離が足りず落ちてしまっても、下には地面があり助かります。ここで、擬似的な落とし穴の避け方を学ぶのです。
スーパーマリオブラザーズには、チュートリアルがありません。プレイする中で、ユーザー自らが攻略法を発見するように作られています。
ドラゴンクエスト
1986年、エニックスより発売されたRPGゲームです。
ドラクエ1には、ユーザーを夢中にさせる工夫が散りばめられています。
その1つに、最初の村から出ると、海を挟んで目前に魔王の城が見えることが挙げられます。冒険の目的地が目前に見える!しかし、ここに辿り着くためには世界をぐるっと一周しなければならない。
最初に「あなたの大目標はこれです!」と提示することで、その後の戦闘やレベル上げがすべて意味のあるものになります。
ストリートファイターⅡ
1991年、カプコンから発売された対戦格闘ゲームです。
ストⅡは、「知らない人」と「戦う」という新しい体験をユーザーに提供しました。当時のアーケードゲームは、決められたステージを進んでハイスコアを狙うものが主流でした。そのため、ステージの配置や敵の行動パターンを熟知し、セオリー通りに道を進んでいくことが目的となっています。
動画はストⅡの前にアーケードでヒットしたファイナルファイト(カプコン)
一方で、ストリートファイターⅡの対人戦では、規則性のない動きをしてくる相手と戦うことになります。100回プレイしても、1度も同じ展開になることがありません。また、生身の人間を相手に勝った、負けたという結果が出ることは、CPUを相手にした時と感情の高まり方がまったく異なります。対人格闘ゲームという体験は、世界に熱い興奮をもたらしたのです。
各地のゲームセンターで大会が組まれ、世界大会も開催されるようになりました。
日本で最初のプロゲーマーとなったウメハラさんのストⅢ大会での逆転劇は、伝説となっています。
ポケットモンスター
1996年、ゲームフリークから発売されました。
生みの親である田尻智さんの幼少期、雑木林や小川での虫取りが原体験となって考えられたゲームです。そのため、ポケモンの世界に入ると、どこか懐かしいような、それでいてどんな冒険やモンスターが待っているんだろうと、夏休みにおじいちゃんと裏山に遊びに行った時のワクワクする気持ちが蘇ってきます。
当時ゲームボーイの通信ケーブルは、主に対戦目的で使用されていました。そこでポケモンは、モンスターの交換しあうという体験を提案したのです。自分が育てたモンスターが、友達のゲームの中に移動して活躍したり、友達のソフトでしか出現しないモンスターがいるため、お互いが持っているモンスターを交換しながら図鑑収集を目指したりするのです。
私自身、小学生の時はポケモン赤のプレイヤーでしたが、公園に持ち寄って自分の育てたモンスターを自慢しあうなど、コミュニケーションを促進するツールとして、ポケモンは存在していました。
ちなみに主人公の名前「サトシ」は田尻智さんから、ライバルの「シゲル」は田尻さんの尊敬する師匠でありライバルでもある宮本茂さんから付けられています。
大乱闘スマッシュブラザーズ
1999年、HAL研究所が開発し任天堂より発売された格闘アクションゲームです。
スマブラが他の格闘ゲームと異なっている点は、ステージに高低差があることです。ゲームの勝敗は「HPがなくなったら負け」ではなく、「ステージから落ちたら負け」なのです。対戦相手をふっとばすという新しい体験は、とても魅力的でした。
また、今までの格闘ゲームでは、コマンドを覚える必要がありました。たとえば、「波動拳」ならば「↓↘→+P」など。しかし、スマブラでは十字キー複数の組み合わせは必要なく、適当に操作していても「かみなり」や「PKサンダー」などの技が発動します。 その操作性の簡単なことと相まって、小学生だった私は、友達と集まっては相手をふっとばすという快感に夢中になっていました。
スマブラを制作した桜井さんは、星のカービィも生み出しています。敵を吸い込んでコピーするというゲーム性がユニークで人気を博しました。
既存の枠にとらわれず、ターゲットに合わせて常に新しい遊び方を提案できることは、いつの時代でも価値があります。
怪盗ロワイヤル
2009年、DeNAからリリースされたソーシャルゲームです。
停滞電話の普及により、ゲームプレイのシーンがアーケード、家庭用ゲームから通勤途中や休み時間などのスキマ時間に変化しました。普段ゲームとは無縁だった潜在ユーザーが発掘された時期でもあります。
そこで、2〜3時間に一度ゲーム画面を開き、簡単な操作で結果がわかるソーシャルゲームが人気を集めました。
怪盗ロワイヤルは企画者が幼少の頃、消しゴムを隠したり隠されたりして「ドキドキ」した体験を元に企画されています。
ポケモン、怪盗ロワイヤルのように、制作者の幼い時の夢中になったり感情を揺さぶられた経験を抽象化して、ゲーム世界の中に閉じ込める事に成功すれば、ユーザーはその感情を追体験できるため、人気が出るのではないでしょうか。
もしあなたがゲームの企画者ならば、幼い頃の記憶がヒントになるかもしれません。
パズル&ドラゴン
2012年、ガンホーよりリリースされたパズルアクションゲームです。
パズドラは、スマートフォンの特性に特化して作られたパズルゲームです。今までのゲームコントローラーでは体験できなかった、指で画面をつるつるとなぞって直接パズルピースを動かす気持ちよさは、多くのスマフォユーザーを惹きつけました。
また、それまで流行していたソーシャルゲームは、基本的にはボタンを押せばゲームが進行していきましたが、パズドラではゲームの部分にユーザーのアクションを求められるため、コンシューマーゲームの体感に近づきました。このゲーム性がライト層とコア層のどちらにもリーチすることが出来たのです。
パズドラは当時スマフォゲームでは有料ゲームが人気の中、基本プレイ無料でユーザーに価値を決めてもらう方法を選んだことで、多くのライトユーザーを獲得し、新しいデバイスだからこそできる新しい体験をいち早く提供できたことで、2年間の間アプリ王者の地位を保てていたのです。
モンスターストライク
2013年、mixiよりリリースされた引っ張りアクションゲームです。
モンストは、4人同時にクエストをプレイできるマルチプレイがあることで、2014年にパズドラを追い抜く勢いまで成長したアクションゲームです。
かつて、岡本吉起さんが関わったタイトルにファイナルファイト、ストリートファイターⅡがあります。ファイナルファイトで1人でプレイするゲームでアーケードゲームの人気を取り戻し、ストリートファイターⅡでみんなで集まってプレイするスタイルを確立しました。
それと同じことを、スマートフォンアプリで再現したのです。パズドラで一人で遊ぶスタイルが確立した。ならば、次はみんなで遊ぶものが喜ばれるのではないかと。
▷ 大ヒットは想定通り、いまは”二本目のホームラン”を仕込み中!?
そのためリリース当時のモンストでは、位置情報を利用して近くの人としかマルチプレイすることが出来ないようになっていました。また、一緒に遊ぶことで得する仕掛けがたくさんあります。
中国でも配信していましたが、ローカルだけでなく全国でマルチプレイできるようにしたいという提供先会社との運用方針の違いから、中国から撤退することを選んでいます。それほど、友達と集まって遊ぶというコンセプトを大事にしているのです。
▷ 好調のmixi『モンスターストライク』が中国市場から撤退した理由
まとめ
普段ゲームを遊んでいて、何気なく入っている機能や演出も、すべてはユーザーに楽しんで欲しいという制作者の意図が込められているんですね。
そしてポンの時代から今日まで、友達とワイワイと遊ぶ体験(ユーザー体験)が楽しいことに変わりはないようです。
新しいジャンルとして期待されているウェアラブルやVRからも、工夫をこらしたゲームが誕生することと思います。一ゲームファンとしてとても楽しみです。
ここまでお読み頂き、ありがとうございました!
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