【香港】「民主推進」盛り込まれず＝政府活動報告

　中国の国会に当たる第12期全国人民代表大会（全人代）第４回会議が５日、北京の人民大会堂で開幕した。李克強首相は政府活動報告の中で香港政策に触れ、「『一国二制度』や『港人治港（香港人による香港管理）』、『高度な自治』の方針を全面的かつ正確に貫徹し、憲法と基本法（香港基本法＝ミニ憲法）に厳格にのっとって事を運ぶ」と述べた。昨年の政府活動報告で触れた香港の「民主推進」などの表現は盛り込まれなかった。香港とマカオに関する言及は昨年の政府活動報告（167字、句読点など除く）から33字減り、134字にとどまった。
　香港・マカオ情勢を研究する中国本土のシンクタンク、全国港澳研究会の劉兆佳副会長は６日付明報に対し、「全面的かつ正確に貫徹すると述べたのは、（2015年６月に立法会で否決された）香港の選挙制度改革で、一部の香港人が独立政治の実現を唱えたことが背景にある」と指摘。「近年の香港は独立主義者や分離主義者などによって状況が悪化しつつある。香港社会の基本法に対する間違った理解は深刻で、中央はこれまで以上に積極介入する可能性もある」とした。
　元ジャーナリストで香港の時事評論家、劉鋭紹氏は同紙に対し、「中央は香港人が一国二制度に対して、正しい理解をしていないと考えている」と指摘した。
　一方、「民主推進」などの表現がなくなったことについて、香港の全人代代表の田北辰（マイケル・ティエン）氏は、「５日に発表された第13次５カ年計画（16～20年、十三五）案の中ですでに盛り込まれている」と説明。第13次５カ年計画期間中に香港が再び政治改革に着手することに対する中央政府の期待の表れだと強調した。
　
　■十三五にライバルの競争力強化
　
　同日発表された第13次５カ年計画案には、空運や海運の分野で香港と競っている深センや上海などの競争力を引き上げるインフラ建設が盛り込まれた。
　明報のまとめによると、空運分野では深センなどの空港の国際ハブ機能を引き上げ、海運は上海、天津、遼寧省大連、福建省廈門（アモイ）を国際海運センターとすることが提唱された。いずれも両分野で香港と競っている地域の競争力強化につながるものだ。
　一方、香港関連のインフラ建設分野では、黒竜江省ハルビン市～北京市～香港の高速鉄道の開通を提唱。ただ、これは大幅に建設が遅れている広深港高鉄（広州～深セン～香港を結ぶ高速鉄道）の香港区間と既存の中国本土内の高速鉄道を接続する構想に過ぎず、香港区間が開通すれば実現することになる。
　インフラ建設以外では◇イノベーション・テクノロジー分野での香港と本土の協力◇中小・零細企業の本土進出や香港人若年層の本土での起業支援◇香港のアジア太平洋地区の国際仲裁サービスセンター化を支持――などが盛り込まれた。
　ただ、本土からの旅行者が減少して落ち込む香港観光業の支援策は盛り込まれなかった。
　全人代常務委員の范徐麗泰（リタ・ファン）氏は「本土客は香港で過激な反中グループと遭遇する可能性もあり、香港に対する興味を失っている。彼らがどこに旅行に行くかは彼らの自由であり、問題を解決するのは中央ではなく、香港と香港政府だ」と強調した。香港の観光業界の間では本土客の減少に対して、本土の個人旅行開放都市を増やすべき、との意見が出ている。＜香港＞