「Shoot yourself in the foot(自分の足を撃つ=自分の首を絞めるの意)」という慣用句を日本語に翻訳するのは容易ではない。残念なことだ。日本政府は6カ月前、運用資産が200兆円を超えるゆうちょ銀行を、12兆円分の株式を上場して民営化した。
これでやっと日本の「ミセス・ワタナベ」と呼ばれる個人投資家が株式投資を受け入れる気になり、家庭が現金を手放し資産リスクを負うことで経済成長を後押しするだろうと期待された。
しかし、これは1月に日本銀行がマイナス金利を導入する以前の話だ。今週、10年物国債の利回りはマイナスとなった。ゆうちょ銀行は資産の約半分を国債で運用するため、その影響は他の金融機関と比べて大きい。当然、株価は新規公開時より20%以上も急落した。ミセス・ワタナベは株式リスクを取る喜びを教わるかわりに、煮え湯を飲まされた。
■特異な金融政策の矛盾
日本国外の多くの人々は、この状況を日本特有のものとして片付けたがるだろう。しかしそれは間違いではないだろうか。この話の教訓は、単に今日の中央銀行のとっぴな試みによって、投資家が不思議の国のアリスのような金融世界に投げ込まれただけではない。政府も特異な政策における矛盾に陥ろうとしており、他国と同様に日本でもマイナス金利が意図した効果を生むかにどうかについての疑問が生じている。
これを理解するために、日本の試みの仕組みを見てみよう。日銀がマイナス金利を導入したとき、その影響で企業や投資家が山のような遊休現預金をいや応なしに生産的に使うようになるため、経済成長が進むだろうと関係者は主張した。
理にかなっているように聞こえるが、マイナス金利で預金者が現金をたんすの奥にしまい込むことを恐れた当局は、スイスを手本に個人口座をマイナス金利の適用対象から外した。マイナス金利が適用されるのは、中銀が保有する総額10兆円にのぼる大手機関の預金だけだ。
その10兆円を企業や銀行が保有するなら、そこには「実体」経済への明確な波及経路があるかもしれない。しかし、主にアジアの証券を扱うCLSA証券のアナリスト、ブライアン・ウオーターハウス氏は、そのうちの8兆円は、融資が許されていないゆうちょ銀行の預金に他ならないと見積もる。もちろん、ゆうちょ銀行がマイナス金利への対応として日本の株式や債券などのリスク資産を購入すれば、間接的に信用取引を生み出すことになるが、現時点でその様子は見られない。