トランプ氏「米国を再び偉大な国に」商標登録済み
【ワシントン西田進一郎】米大統領選に向けた民主、共和両党の予備選・党員集会が5日、計5州で行われた。共和党の4州では、保守強硬派のテッド・クルーズ上院議員(45)と同党候補者指名争いをリードする実業家ドナルド・トランプ氏(69)がそれぞれ2州で勝利した。
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「米国を再び偉大な国に」。トランプ氏が繰り返すこのスローガンは、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、2012年にトランプ氏が商標登録した。オバマ大統領が再選を決めた直後だ。トランプ氏はこの頃から、側近と今回の挑戦を計画し始めた。
その野心は30年近く前に芽生えていた。1988年に放送されたテレビ番組で、出馬は否定しながらも「もし出れば勝利する。人生で負けたことがない」と豪語。同盟国に相応の負担を負わせるべきだとの持論や、米市場を席巻する日本車への不満をまくし立て「人々は搾取される米国を見るのに疲れている」と語っていた。
全米で知名度が高まったのは、父から引き継いだ不動産業の成功と共に司会者として人気テレビ番組に出たことが大きい。決めゼリフの「お前はクビだ」は流行語にもなった。アルコール依存症で亡くなった兄の影響もあり、酒やたばこには一切手を付けないという意外な面もある。
話法の特徴は、一文が短く分かりやすいこと。そして、大げさな身ぶり手ぶりだ。41歳の時に出版した著書で「やられたら徹底的にやり返す」と書いたように、敵に容赦しない。
味方には「最高だ」「頭が良い」、敵には「ばかだ」「敗者」を連発。対立の構図をうまく演出し、自分が「悪い敵を倒す」と印象づける。
場当たり的に発言しているように見えて周到に準備もしている。米メディアによると、不法移民の流入などを防ぐためにメキシコとの国境沿いに壁を作るという「公約」も、移民政策の強硬派というイメージ作りで事前に用意されたものだった。
「計画通りに事業を進める実行力がある」と、実業家としての手腕に一定の評価はある。だが、不動産市況の悪化などで、経営するカジノやリゾート開発会社は過去4回、日本の民事再生法に相当する米連邦破産法11条の適用を受けた。
トランプ氏は「会社や従業員、自分自身、家族のために法律を使った」と受け流すが「過去30年でこれほど適用を受けた主要企業はない」(米CNN)との批判も。12年大統領選の共和党候補で、投資ファンド創業者でもあるミット・ロムニー氏は「トランプ氏はビジネスの天才ではない」と指摘する。
トランプ氏の手腕は本物か、偽物か。政治家や著名人の発言内容の真偽を確認するウェブサイト「ポリティファクト」は、トランプ氏の声明の76%は内容が「うそだ」と分析する。【ワシントン西田進一郎、清水憲司】