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もし、自分の収入がどれくらいで、それを何に使っているか他の人にばれてしまったらどうしますか?

銀行やクレジットカードを使っていると、これらの自分のお金の事情は企業には公開されていると言えますが、少なくとも不特定多数の人に情報が漏れる心配はしないと思います。(銀行のデータベースがハックされた時などを除き)

一方、ビットコインには公共の台帳という特性があり、あなたの送金記録も含め、過去の送金記録は全てブロックチェーン上に記録され、インターネット上で公開されています。つまり、あなたの公開鍵(Public Address)さえあれば、誰でもあなたのアドレスへの過去のお金の入出金量、出金先までわかってしまうのです。それでも構わないという人もいるかもしれませんが、自分がいくらビットコインを持っているのか、何に使っているのか知られたくない人の方が大半だと思います。

今日は、自分のプライバシーを守るための手段として、ビットコインミキサー(Bitcoin Mixer)について説明します。

mixer

 

そもそもなぜミキサーが必要なのか?

 

ご存知の通り、ビットコインの送金は通常スマホからQRコードを読むことで行われます。QRコードで送信先の公開鍵を読み取っているのです。

クレジットカードのように氏名、住所などの個人情報を登録しなくても、公開鍵さえあれば世界中どこにでも簡単に送金ができるのがビットコインの強みですが、公開鍵さえあればその公開鍵と結びつく過去の送金履歴も全て確認できることができてしまいます。

例えば、あなたがあるレストランでビットコイン支払いをしたとします。もしこのレストランが全ての支払いについて同じ公開鍵を使い回していたとしたら、あなたはそのレストランがどれくらいビットコインで売上を上げているかわかってしまいます。反対に、もしあなたが同じ公開鍵で何度も支払いをしている場合、レストラン側にあなたが他にビットコインでどんなものを買っているかばれてしまう可能性があります。また、送金履歴をたどれば、あなたが取引所でいくらビットコインを購入したか、なども他者に漏れてしまう可能性があるのです。

なお、同じ公開鍵を使ってない場合でも、(毎回新しい公開鍵を作成する)分析ツールを使えば、公開鍵同士の関連性を見つけトラッキングすることが可能なようです。

ブロックチェーンは透明性の高い送金を可能にしますが、それは同時にプライバシーの侵害など悪用される可能性があることがおわかりいただけたでしょうか。

このような政府、企業、個人などからの監視、追跡の可能性から、自分のプライバシーを守る技術がビットコインミックシングなのです。

 

ビットコインミキサーの3段階

 

1年程前の少し古い記事ですが、Kristov Atlasによると、ミックシングサービスには主に3世代に分けられます。

 

第一世代 中央集権によるミックシングサービス

これは、企業などの特定のグループが、ビットコインを一か所に集め、そこから指定のアドレスへ再分配する仕組みです。

ただし、中央集権を使ったミックシングサービスには大きなリスクが2つあり、

1.中央集権がビットコインを持ち逃げする可能性がある

一度他のWalletに送ったビットコインは返ってこない可能性があることを常に覚えておく必要があります。これの最も大きな失敗例として、Mt. Goxの破産事件はまだ記憶に新しいです。

 

結局犯人は内部の人間だったのでしょうか・・・?

結局犯人は内部の人間だったのでしょうか・・・?

 

2.中央集権が適切にミックシングの履歴を削除する必要がある

中央のサーバーを使ってミックシングをするので、履歴が残ってしまったら誰にどのようにビットコインを再分配したかが簡単にわかってしまいます。つまり、ユーザーは中央集権が適切な履歴削除をしたことや、ハッカーにアクセスされていないことを信頼しなくてはいけません。

 

第二世代 P2Pミキサー

第一世代の中央集権への信頼という大きなリスクを取り除いたものが、第二世代のP2Pミキサーです。

仕組みを簡単に説明すれば、ビットコインをミックスしたい人たちが複数集まり、参加者全員で一つのトランスアクションにビットコインを集約し、再分配する仕組みです。

P2Pミックシングサービスを使ったトランスアクションの例です。参加者が多ければ多いほどミックシングの効果は高まります。

どのアドレスからどのアドレスにお金が移動したかこれではわかりませんよね?

どのアドレスからどのアドレスにお金が移動したかこれではわかりませんよね?

 

弱点として、参加者を特定のタイミングに一挙に集める必要があること、インプットとアウトプットをマッチングさせるミックシングサーバーが必要であることなどがあげられます。また、例えば10人でミックシングを行ったとして、他の9人がグルになっていたとしたら、あなたのビットコインの行先も筒抜け状態になってしまいますよね。

現在、Coinjoin, Coinshuffle, Darkwalletなど複数のサービスがP2Pのミックシングサービスを完成させようとしていますが、技術的に完全に追跡を不可能にするレベルにはまだ至っていないそうです。(某技術者談)

 

第三世代 匿名アルトコイン

最後に匿名送金機能を備えるアルトコインを使用し、ミックシングの効果を得ることができます。

独自ブロックチェーンを持つアルトコインを使うことで、第二世代の参加者を同じタイミングで集める必要、サーバーの使用がなくなりより匿名性の高いトランスアクションが可能になります。

現在、Darkcoin、Zerocoin、Annocoin、Vericoin, Cloakcoin….

匿名性をうたうアルトコインはたくさんありますが、正直どれが最も優れているか私にはまだわかっていません。上記のうちいずれ勝者が名乗りをあげるのか、それとも全く新しいアルトコインが、匿名アルトコインの王様になるのかも予想しづらいです。

一つ言えることは現状では上記のいずれも完璧な匿名性は達成できていないようですし、現状だとアルトコインの購入は基本的には取引所を通す必要があるので、結局は追跡が可能になってしまう可能性があることです。

ただし、Sidechainが完成したとしたら、ビットコインとアルトコインの行き来が簡単になり、匿名アルトコインの利便性、有用性が大きく向上することも予想されます。その点でもSidechainは今後も重要なトピックですね。

 

 

まとめ

NSAのスパイ活動など、ビットコインを抜きにしてもプライバシーというテーマは2015年も大きな議論になると思います。

政府から身を守る手段などというと大げさで、響きもよくはないですが、他人から自分のプライバシーを守るツールというのは、暗号通貨の将来的なスタンダード機能になる可能性が大いにあります。

とりあえず同じ公開鍵を使いまわしている人は最低限その状況は避けることをお勧めします。MyceliumなどのモバイルWalletは毎回毎回新しい公開鍵を自動で作成してくれますので、是非参考にしてみてください。

 

3世代のビットコインミックシングテクノロジー

https://letstalkbitcoin.com/the-first-three-generations-of-bitcoin-mixing-technology/