植松電機の植松努社長をご存知だろうか?
著書『NASAより宇宙に近い町工場』は、ページをめくるたび心に刺さる言葉が飛び込んでくる良書中の良書だ。
本著の序盤には、植松社長が堀江貴文氏の出資をことわる場面がある。そこまでは資金調達に慣れない町工場のおっさん?という印象がぬぐえなかったのだが、とんでもない!読み進めると、いかに彼がベンチャースピリット全開の熱い男かじわじわとわかってくる。
《目次》
植松電機の宇宙開発
植松電機の宇宙開発では、デブリと呼ばれる人工衛星の残骸などの宇宙ゴミを回収する小型ロケットをつくっている。まるで『プラネテス』の世界だ。
「世界初」は「世界一」
ゼロ戦は雄弁に語っています。「世界初」は「世界一」であり、前例踏襲の範囲内では絶対に一番にはなれないということを。
植松社長は小さい頃から飛行機にばかり熱中していたために受験勉強はできず、当時の国公立で最低レベルであった北見工業大学に入学する。そこでは受験に失敗して将来をあきらめた学生たちに囲まれて過ごした。
卒業後、就職したのが戦時にゼロ戦をつくった会社だった。そこで気づいたのが「世界初」は「世界一」であるということ。しびれる言葉だ。
考えてみれば確かにそうだ。世界初であれば誰もやっていないことだから、ある特定の超マイナー分野では必ず「世界一」なのだ。新しいことにチャレンジし続ければ、誰でも世界一になれるチャンスがあるということだ。
しかし、彼は新卒で入ったこの会社を5年半で辞めることになる。なぜなら、その職場に飛行機が好きでない人たちが急増してきたから。飛行機の設計の仕事をしているのに、飛行機の雑誌を読もうともしない。
この言葉にも、ハッとさせられた。あなたの会社はどうだろうか?会社が目指していることが、仕事が好きでない人たちが周りに多くはないだろうか?
思えば、ぼく自身も前の会社を辞めた理由の1つがこれだった。今の会社の方が仕事が好きな人が圧倒的に多い。振り返ってみれば良い決断だった。
教育の問題
よい成績をとってしまったら、自分の好き嫌いにかかわらず、勝手に行く道を決められてしまうときもあります。特に田舎ではその傾向が強く、ちょっと成績がいい子がいたら、好き嫌い関係なしに医学部を受けさせられます。
でも、医者が好きじゃない人に、そこがつとまるわけがありません。
植松社長は自己肯定感を養うどころか自己否定を増長させる、今の子どもの教育を強烈に問題視している。
受験勉強ばかりさせ、子どもたちが他のことに熱中することがあると否定する。成績ががよければ、医学部や有名大学に入れて「生涯安定」と職種さえも親が押し付ける。
まだ大学受験前のあなた。よく覚えておいてほしい。絶対に周りに流されてはいけない。良くも悪くも、自分の人生は自分だけのものだ。人はどれほど他人とつながっても結局のところ独りなのだ。
もう大人になってしまった人。「こいつ何いってんの?」と冷めてはいけない。子どもの頃は、やったことないことをやりたがったはずだ。それがなぜ大人になったら、やったことないことを避けるのか。
まだ遅くない。やりたいことを素直にやれ。憧れるモノがあれば創り始めよう。どうだろう?それはいつでもはじめられるはずだ。年齢など関係ない。今からでもはじめられる。本著は独学での「はじめ方」の指南にもなる。
オンリーワンに甘えずナンバーワンを目指せ
ナンバーワンよりオンリーワンがいいという歌が流行りましたね。花屋にはいろんな花があって、どれもきれいだけれど、一番になろうと競争なんかしていない、といった歌詞でした。
努力できない人は、この歌が好きです。楽ができそうな気がするからです。「もともと特別なオンリーワン」という言葉になぐさめを見出します。
でも、この歌には致命的な欠点があると思います。花屋さんの店先に並ぶ前に、それだけ多くの花が間引かれて捨てられているのかということを忘れているからです。
あなたは目指すものを決め、努力をしている途中だろうか?
NOであれば心を改めるべきだ。努力しなければ、店頭に並ぶことさえできない。オンリーワンにすらなれないのだから。
植松社長の価値観を忘れず、彼とは違う「やりたいこと」をやると決めてほしい。彼とは別の「世界初」を目指す。目指す先は「オンリーワン」ではなく勿論「ナンバーワン」だ。
ぼくもあなたと違う「やりたいこと」で「世界初」を達成するつもりだ。残りの人生はまだ十分にある。