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閑話 澪と料理と勇者と(3)
「あら、来ましたの」
カウンターの奥、工房のある場所から聞き慣れた声がして、響たちは目的の場所に到着したことを実感した。
辺境で随一の成長を続けているツィーゲにあって、さらに勢いに乗って成長しているレンブラント商会。その片隅。
浅黒い肌の亜人がカウンターで柔和に微笑んで来訪者を迎える一角がある。
クズノハ商会ツィーゲ出張所、である。
今や太く安定した客筋を確保したこの商会は、冒険者ならば少なくとも名前は知っている憧れの店になっている。
優れた素材を使った、街でも最高峰の品質の武具、さらには見合った額を納めさえすれば改良やオリジナルの武器作成も請け負ってくれる。確実に命を永らえさせてくれる装備品は、冒険者に限らず戦いを想定しなければならない職業の者には高く評価されていた。
かと思えば一角の端では町人態の者が数人、薬を求めて並んでいる。クズノハ商会の薬は下手な魔法薬よりも高い効能があると評判で、売れ行きも右肩上がりだった。商会として順調である事は疑う余地が無い。
今は武具の受注を一時的に断っていることもあり、武具の注文を受け付けている店員の傍には誰もいない。だが、何人かの冒険者風のヒューマンらが遠巻きに様子を伺っている事からも受注再開を期待されている事がわかる。
響と仲間達は、澪により意識を失ったままツィーゲの宿へと運ばれた。女将に何事も言い含めた澪は宿を後にした。響たちは女将から(何割か改ざんされた)事情を知り、負傷したベルダの回復に専念して数日を過ごした。
そして今日。
ベルダが普通に出歩けるまでに回復したため、改めて全員揃って澪と連絡が付けられると教えられたクズノハ商会出張所を訪れたのだった。
向けられる好奇と嫉妬の混じった視線の真意を彼女達は知らない。何かしらのコネがあり澪と繋がりがあるのだろうと羨望を向けられている訳だが、この街でのクズノハ商会と澪の立ち位置を知らない響らには思いつかないのも無理はない。
お待たせしました、と森鬼の店員に一言向けられた後、奥から数日前に彼女たちが出会った黒髪の女性が現れた。
「そちらの騎士、もう回復したようですね。大事が無く何よりです」
「あ……、その節は大変世話になった。聞けば治療にも力を貸してくれたとか。感謝している」
ベルダ本人が前に出て澪に礼を述べる。澪は彼を一瞥し、すぐに響へと視線を移した。
「構いませんわ。お守りには慣れてますもの。それで響、もうお仲間は具合は良いようだけど。時間は取れます?」
「はい。宿の女将さんからは私に用がある、と聞いています。その……魔物との戦いの事、でしょうか?」
響の表情は暗い。情けない姿を晒し、失望したとまで言われてしまった事が彼女の中でしこりになっていた。彼女の人生において他者に失望された経験は無く、自分の弱さに直面した経験も無い。
魔将との戦い以来抱き始めた自身の力への疑問と併せて、勇者である彼女の中で消化しきれずに残っていた。
「戦い? ああ、別にそれは構いません。先程も言いましたが貴女方のような者のお守りは事情があって慣れているのです。運が良かったとでも思っておけば良いですわ」
しかし澪の言葉は響の考えをまったく否定した。澪から見ればツィーゲへの帰路が、弱いヒューマンのお守りになったと言うだけの事だった。
「運が良かった、ですか?」
「ええ、死なずに済んだのですから。大体、私は貴女の仲間でも教師でも無いのに、どうしてあの戦いの採点や注意などして叱ってあげなくてはならないの?」
言外に響達の生死そのものにも大した興味は無いと言い放つ澪。その言葉は響たちに刺さる。
「それはっ……ならどうして、助けてくれたんです?」
「それは女将にも言いましたけど、響、貴女に用があったからです。まだ貴女には海の物や乾物から出汁を取る方法を聞いていませんもの」
「だ、出汁ですか?」
「ええ」
「それ、だけなんですか?」
「? そうですよ? 優れた料理法を知っているなら死なせるに惜しい。ただそれだけ。さあ響。もう気がかりも片付いたのでしょうし、しばらく私に時間を下さいな」
表裏も無く、澪は呆然とする響に言葉を返した。
「澪殿、助けて頂いたのは感謝するがその申し出には我ら応えかねます。我らはここに、修練と良い装備を求めて来たのです。無駄に使う時間は残念ながら……」
ウーディが澪の提案に反対する。響達がツィーゲを訪れたのはとびっきりの修行が出来る場所を求めてである。そして腕に見合うだけの装備を見つけるという目的もある。魔将との再戦、そして今度こそステラ砦を抜く。全てはその為の行動だった。
「お止めなさいな。あの程度の相手にも苦戦し、尚且つ判断力一つ身についていないパーティが荒野に出てもただのエサ。レベルは高いかもしれませんが、それだけではあそこでは図体のでかいだけの子供。無駄です」
澪は呆れたようにウーディの発言を一蹴する。馬鹿にしたでも嘲笑しながらでも無い。本当に、幼子を諭すように。
「それでも! 私達は強くならないと! 時間も無いんです!」
響の激しい言葉に澪は嘆息した。死に急ぐ冒険者が宿す、視野の狭くなった独特の光を彼女の瞳に見て取ったからだった。
「わかりません。ちょっと変わった冒険者、かと思ってましたけど何か急ぎの目的でも?」
「そ、れはっ」
「でも私も命を救った恩返しの一つもして欲しいのですけど? それに。いくら力があるとは言ってもそんな小さな子供まで荒野に連れて行くお心算?」
「……」
「だんまりですか。思っていたよりもさらにお馬鹿とは。うーん、それでも困りましたね。私も譲れませんし……」
「澪さん、しばらくは日帰りで馴らす事にします。それで夜は澪さんにお付き合いするって言うのは」
「今の貴女方だと数日の保証も無い言葉ですわね。そう、どうしたものかしら……」
カウンター越しに会話する響と澪。
そこに一人の男性が口を挟む。澪が出てきたのと同じ、店舗の奥から出てきた男だった。
「では、こういうのはどうでしょう?」
「ん、ベレン。何か妙案が?」
「妙案と言うほどではありませんが。澪様はそちらのお嬢さんに料理の事を聞きたいのでしょう? 出来る事なら技術も身に付けたいと」
「ええ」
「それでそちらのお嬢さん方は荒野で強くなりたいと」
「はい。その為に来ました」
言葉を吐いた響以外の、残るメンバーもその言葉を首肯する。
「成る程、澪様の仰る通りこのままでは直に死にますな。ほぼ確実に」
「っ!」
「ベレン、勿体ぶらずに話しなさい」
「失礼しました。澪様にお料理を教えて下さるのなら、御代は勉強してさらには後払いで皆様に武具を都合して差し上げましょう。それから荒野に出られれば良い。そうすれば武具が出来るまで……そうですな三日程ですか。時間が出来ます。その後も夜は澪様に料理を教えて頂く、という事で如何でしょうかな? 失礼ですが皆様の武具、一応それなりではございますが相当に痛んでいるご様子。それで荒野に出るのは自殺行為でございますよ」
「……武具だけ新調しても安心出来るかしら」
「では。トア殿たちに同行してもらえば良いではないですか。澪様からのご依頼なら断られることは無いでしょうから」
「なるほど。あの者たちと一緒なら日帰りの範囲ならそれほど心配はありませんね。ベレン、妙案ではありませんか」
「恐れ入ります。それで。皆様は如何ですか?」
カウンター内の意見はまとまり、響たちに回答を求めるドワーフの職人。
「三日、か。その日取りは短縮出来ないのか?」
「これから採寸をして仕上げまでですので。手入れに出すのとは話が違います。三日というのはどこの職人に話を持っていっても有り得ない程に短い期間かと」
ベルダの質問に、職人たるベレンは丁寧に答える。内心では鍛冶に理解の無い騎士に呆れていたが。
「同行するという冒険者が信用できるという保証は?」
魔術師であるウーディは、同行する存在が信用に足るかを気にした。雇った冒険者が裏切るなど、有り得ない話ではない。危険な場所での裏切りは全滅さえ引き起こす。
「トア殿というのはこのツィーゲの筆頭冒険者です。顔も売れていますし無体な事をする人ではありませんよ。パーティの平均レベルも四百五十を超えていて、そろそろ一流と言って良い実力を備えています」
「四百五十!?」
「それに澪様が信頼する冒険者の方ですから。どうしても信頼できないと言われれば、その時は別の手段を考えなくてはいけませんな」
「っ!?」
ウーディがベレンの放つ殺気混じりの一瞬の視線に震える。よからぬ手段も辞さないという意図を感じた。たかが料理の話をどうので危険を感じるのはあまりにも割が合わない。
肯定とも取れる頷きを残してウーディは後に下がった。
「響、どうしますの? こちらの提案は貴女達に有益だと思うけれど?」
「……よろしく、お願いします」
「良かった! ならすぐに採寸と調査を始めましょう。ベレン、急ぎなさい。最初は響からね? それからトアに連絡をして……」
「皆様、こちらにどうぞ」
澪とベレンに迎えられて奥へと消えていく響達。
リミアの勇者は辺境で再始動を始めた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
数ヶ月という時間がこれほどに短く感じた事は響の人生で初めてのことだった。
今ではベレンたちエルダードワーフの作った武器の性能に驚いていたのが懐かしい。
紹介されたトアという冒険者パーティから、冒険者特有の判断力や考え方を学んだ。パーティのリーダーを務めていたトアはスピードを武器にするタイプでありながら響とは違い虚を突くのを得意とし、響との手合わせでも良い勝負を演じた。響を同業者だと思っているトアは切り札や奥の手を見せる事は終に無く、実戦で出会えばどのようになるのか。少なくとも対峙したくは無い、と響は考えていた。
この間、響のレベルは然程に上がってはいない。しかし強さは明らかに上がっていた。
最初、仲間を失ったトラウマを引き摺ったままだった響はレベルが近いトアとの手合わせで見事に惨敗した。経験もあったが、人にここまで負かされたのは響には初めてのことだった。ちなみに、澪とも後に手合わせをしたが結果は響の惨敗。殆ど何もさせてもらえなかった。
一度などは、念の為にと展開していた襲撃者対策の結界を施した宿の部屋で休んでいた夜更け、結界を壊すでもなくすり抜けられ首根っこを掴まれて目を覚ました事もある。何事かと暴れた響だったがあっさりと鎮圧され、目を輝かせた澪に料理を教えろと厨房へと引き摺られた。
力についてレベルに拘っていた響が澪とトアに自分がどうしてレベルで劣るトアに負けるのかと尋ねた事がある。
「私も絶野にいた頃はそうだったなあ。まあレベルなんて単なる指標の一つなんじゃないの?」
とトアは仮面の商人を思い浮かべながら苦笑し。
「レベルが高いというのは、要はたくさん殺した事の証明でしかありませんよ。強さなど数字で無く肌で感じなさいな」
とは澪。本能のままに飢えを満たし続けた事への自虐も少々混じっていたが響に気取られることは無かった。彼女はただ感心して澪を見つめていた。
その澪が、響がうろ覚えながら煮干や昆布から出汁を取る方法を教えると子供のように瞳を輝かせる。
同じ黒髪を持ち、元の世界の知識を話して料理限定ながら共感を得られる相手。響はトラウマを徐々に克服すると同時に澪に依存しつつあった。
今夜は彼女たちにとってツィーゲで過ごす最後の夜。
リミアへの帰還命令が届いたのだ。
始めこそドワーフに優遇されたと白眼視されていた響たちだったが、トア達との交誼や荒野での助け合い、それにトラウマの克服と同時に響が取り戻し始めた生来の人を惹きつける気質もあって徐々に辺境の冒険者に受け入れられていった。
だから今夜、彼女たちの為に宴会が催され多くの冒険者が集まり別れを惜しんで騒ぎに騒いだ。中にはそのまま響たちに付いてリミアに行き、共に戦うと言う冒険者もいる程だ。
ベルダとウーディは酔い潰れ、泥酔状態でどことも無く姿を消した。もしかしたら別れを惜しんだどこかの女が一夜の情を交わそうと攫ったのかもしれない。
チヤは、年齢の合う冒険者などはおらず当初浮いてしまってホームシック気味にもなったがトアの妹で絵描きを志望しているリノンと意気投合して、今日もジュース片手に宴会を楽しみ、既に二人仲良く同じベッドに入って休んでいた。
そして響は。
喧騒を離れて街を囲む城壁の上に登っていた。後ろにはネオンの灯る現代の夜景とは比べるべくも無いが点々と明かりの灯るツィーゲの街。前面には黄金街道がある。この街の豪商であるレンブラントが執事とともに深澄真を見送った、まさにその場所だった。
一人ではない。
城壁の内側、欄干に腰掛けた女性が響を見ている。澪だった。
「話があるとか? こんな所へ呼び出さなくてはならないような事ですの?」
「……はい。宴会やってる場所だと、どうも雰囲気が違う気がして」
街道を見ていた響が振り返る。
「手短にね。真夜中にこんな場所にいると不要な誤解を招きかねません」
「相変わらず、料理以外では素っ気無いですよね、澪さん。わかりました、用件は二つです」
「……」
「まず、澪さんありがとうございました」
響は深く頭を下げて礼を述べた。
「コランで澪さんに出会えなければ、私達は今こうして生きていなかったと思います。荒野は想像していたより遥かに厳しい場所でした。切っ掛けはホルンの暴走でしたけど澪さんに会えて本当に良かったです」
「私にも目的はあったのですからお礼を言われる程の事でもありません」
(それに、ホルンとか言う狼が私に襲い掛かってきたのは、私の匂いに反応したからでしたしね。とうとうこの娘たちは私が以前戦った黒蜘蛛だと気付かなかったみたいですけど、あれだけは気付いた。襲い掛かってくるのも止む無しです。それにホルンに”口止め”はしましたから今更私から言うべき事でもないでしょう)
澪は銀狼に襲われた理由を突き止めていた。その上でホルンに良く言い含めて響達への口外を封じた。その時の条件を考えるに、かの狼が主人にその正体を話す事は無いだろうと澪は安心している。
「刀があった事にも驚きましたけど、ベレンさんに仕上げてもらったこの剣も本当に凄いです。彼との出会いも澪さんのおかげなんですから、ここはお礼を受けてください」
響はエルダードワーフの工房で見た刀に相当に心惹かれた。元々剣道をやっていた為もあるだろう。手に取り、抜き放ってみてその美しさに息を呑んだ。
だが、ベレンは響に刀は合わないとばっさり彼女の憧憬の目を切り捨てた。
彼女の剣を見たベレンは、響の剣技に刀は最早合致していないと諭したのだ。
「元々お嬢さんの体に宿っていた剣技は片刃の剣を扱う類の物のように見受けます。しかしながら、今のお嬢さんが振るっているのは明らかに両刃の剣の技。手入れにも特別の習熟が必要な刀はお勧めしません。それは儂の目が届く範囲で活動する者の一部に勧める武器でしてな」
間違いなかった。
響が元々知っていた剣の使い方は剣道と、少々の剣術に拠るもの。部活で続けていた剣道とは別に、直近で彼女が習い出した剣術があったが事情があってすぐに中断することになってしまった。
そしてこの世界に来る事になり、今は亡きナバールの実戦剣技と我流を織り交ぜてバスタードソードの戦い方を確立していった。今更刀を手にして使うのは難しいかもしれないとは彼女自身思い当たる事だった。
大人しく忠告を受け入れ、響は初めてその能力を超える武器を得た。これまでとは逆に、武器の性能を引き出す修練をする羽目になったわけだ。ベレンの遊び心も混じったその剣はバスタードソードよりも大きく、その外見は大剣に属するものだったが重量は響の使っていた剣よりも何と軽く。
大きさをきちんと考慮して振るえば以前と同じ様に取り扱う事が出来た。澪が何気無くベレンに見せた魔物の鎌を材料にしている事は響には明かされていない事実の一つである。
そんな経緯をも思い出して響は澪から視線を外して夜空を見上げる。
「未だにこの剣の性能は半分くらいしか引き出せていないと思います。ベレンさんにも、まだ仕掛けを引き出せてないのかとがっかりされちゃいましたし。課題を残したまま出るのは正直、悔しいです」
「別に、今の貴女ならここに留まらずとも十分な修練は出来るでしょう。ベレンの細工も直にモノにできるでしょうね」
「頑張ります。それで、もう一つの用件なんですが」
響には珍しく言い難そうに言葉を選んでいる様子を見せた。十分に飲食を済ませて特に用事も無かった澪は大人しく響の言葉を待つ。
「……澪さん、私たちと一緒に来てくれませんか? 結局会えなかったけど、商会の代表の方にも決して失礼が無いようにしますから!」
響はクズノハ商会の代表、ライドウという商人に会った事が無い。話にはたまに出てくる存在で、トアなどからも話を聞いたことはあった。腕も立つらしいその謎の商人は、結局仕入れから戻る事なく響も、仲間の誰も彼に会った者はいなかった。
ただ、澪やベレン、そして商会の従業員に相当慕われている事は確かでライドウを語る彼らは響には非常に誇らしげに見えた。
「嫌です。私には若様がいますから。響にも話したでしょう?」
即答。
「ならその若様も一緒に。リミアにお店も用意します」
「それも駄目です。若様は今お忙しいと言ったではありませんか」
響の譲歩案にも取り付く島も無い。
「……例えば、私の願いが世界に関わる事だと。引いては澪さんの大事な若様だって巻き込まれるかもしれない事態の収拾に貴女の力が必要なのだとしてもですか?」
自身が勇者であると。響は最後まで澪に述べる事はなかった。料理の知識も書物を読んだのだと適当に誤魔化していた。勿論、追求していれば突き崩せた嘘だろう。しかし澪にとって大事な所は料理知識と技術であってそれ以外はどうでも良い事だった。
勇者と言う肩書きを明らかにする事でトアや澪の態度に変化が出るのではないかと不安だった為だ。ただの冒険者でいられたこの数ヶ月は響にとって新鮮で、名残惜しい時間でもあった。
「お話になりません。私は世界などどうでも良いのです。大切なのは若様だけ。私如きが助勢してどうにかなるような事態なら、若様がどうにか出来ない筈もありませんし。ならば私はただあの御方の傍に在り、その命に従うのみ」
「……絶対ですか」
「絶対ですわ」
いっそ勇者として名乗り、助力を願おうとも響は考えたがすぐにその考えを撤回した。澪は世界がどうでも良いと言った。ならば自分がヒューマンの社会を守る為に呼ばれた勇者だと明かしたとして交渉に影響があるとは思えなかった。
(澪さんがここまで惚れこんでいる若様って一体……。トアさんも格が違うって苦笑いしてたし。世の中どうなってんのかしら。そいつと澪さん達で世界なんて救えちゃうんじゃないの?)
響が冗談の様に思い浮かべた意見が実はそんなに馬鹿にした物でもなかったと、いずれ彼女はこの時の事を思い返す事になる。
「……ふぅ。絶対、かぁ。見事に振られちゃいましたね」
「貴女もパーティをまとめる身なら、甘えよう楽をしようと思うのはマイナスだと学んだでしょうに。私は若様以外、誰の意にも従う心算はありません」
「はいはい、ご馳走様です。用件はこれで終わりです。それじゃあ澪さん、これで」
「ええ、気を付けて帰りなさいな」
「はい。澪さん、何時かリミアにも来てくださいね。その時はもう少しレシピ思い出しておきますから」
「あら、初めて魅力的な話を聞きました。覚えておきます」
最後に深く一礼した響はそのまま姿を消す。
澪と響の奇妙な出会いはこうして別れを迎えた。
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