年平均6・5%以上の経済成長を目指す。中国政府はきのう発表した新たな5カ年計画案で、この成長目標を示した。

 中国経済の動向が世界経済のリスク要因の一つと見なされているなかで成長率は気になる指標ではある。だが、真に問うべきは成長の質である。いまの中国経済の不振は、単なる景気の下降局面というより、従来の経済構造が行き詰まった結果とみるべきだ。中国経済は転換を迫られている。

 中国経済は、インフラ投資や設備投資に依存して成長してきた。半面、国内消費の牽引(けんいん)力は小さかった。投資を担ってきたのが重厚長大型産業に属する各地の国有企業である。

 国有企業改革は、1980年代から一貫して中国の政策テーマだった。地方の中小国有企業の整理が進み、ある程度は民間重視に傾いた。しかし、2008年のリーマン・ショック後に流れが変わり、大規模な景気対策のもとで再び重厚長大型の国有企業群が膨張した。政府とつながり、補助金や有利な条件での融資を得てあいまいなガバナンスのもとで量的拡大に走り、無駄な設備と借金が残った。

 中国政府はいま、立ちゆかなくなった鉄鋼や石炭関連の国有企業を整理しようとしている。しかし、国有企業体制そのものに切り込もうというわけではない。新たな5カ年計画でも、国有企業の強化をうたっている。共産党政権の存立基盤そのものにかかわるからだろうか。

 金融、エネルギー、素材、大型機械といった、産業の命脈を握る分野で国有企業が幅を利かせている。この寡占状態を崩して競争を促し、高い生産性を期待できる民間企業の発展を後押しすることこそが、本来あるべき改革の姿だ。

 今回、政府が示した6・5%の成長も、決して容易ではない。「2020年までに国内総生産(GDP)を2010年の2倍にする」という習近平(シーチンピン)政権の目標から逆算されたものだけに、あるべき改革に逆行する政策手段の動員が再びなされないとも限らない。見込まれる失業への対策が必要であるにせよ、当面は目先の数字にこだわらない方がいい。

 改革開放から30年余りを経て、中国は豊かになった。とはいえ1人あたりGDPは約8千ドルの中進国水準にとどまる。労働人口が減少に転じ、高齢化で社会保障コストの増大が見込まれてもいる。経済構造を転換する方向に踏み出さない、という選択肢は、政権には残されていないはずだ。