1991年12月、社会主義陣営のリーダー、ソ連が崩壊した。「平等で公正な社会」の美辞麗句に反し、少数の特権階級と大量の怠け者を生産する社会主義は、人間と社会を腐らせ、国を内部崩壊に導く。
日本でも戦後、共産党や社会党は資本主義陣営から離脱させ、社会主義陣営に入れたいと考えた。一部の学生や労働組合は熱狂的に支持したが、国民の大半は拒絶した。賢明な判断だった。
21世紀に入り、中途半端に資本主義を採り入れた社会主義国、中華人民共和国(PRC)が、ソ連の後釜を狙う挑戦者として名乗りを上げた。
米国は70年代から、PRCの近代化を手助けすれば、米国の巨大な商売相手になる。徐々に民主化も進み、最後は資本主義陣営に取り込めると信じていた。
現在は、その考えが誤りだったと米国も認めている。米国に追従した日本は、ODA(政府開発援助)や民間投資などを通じてPRCを支援し、世界を混乱させるモンスターに育てた。PRCは今や、GDP(国内総生産)は世界第2位で、軍事的野心も顕在化している。
冷戦時代、米国と強い絆で結ばれていた欧州諸国は昨年、AIIB(アジアインフラ投資銀行)に率先して参加した。私は欧州が金もうけ優先でPRCに擦り寄ったことは間違いだと思うが、指導者が「国益にかなう」と判断し、国民が支持するのなら仕方がない。
米大統領選でのトランプ候補の大躍進を見れば、米国が衆愚政治に陥る危険性を持った国だと、よく分かる。同時に、米国だけに依存する日本の安全保障体制の脆弱(ぜいじゃく)性も改めて明確になった。