ソウル=牧野愛博
2016年3月5日22時53分
米韓合同軍事演習が7日から韓国各地で始まる。核・ミサイル開発を続けて脅威を増す北朝鮮に対し、米韓は想定をゲリラ戦主体の戦闘に変化させた「史上最大、史上最先端」の演習で圧力をかける。北朝鮮は毎年この演習に神経をとがらせており、米韓の積極姿勢に強く反発している。
毎年春の米韓合同軍事演習は、米軍の増援演習「キー・リゾルブ」と野外実動演習「フォール・イーグル」を同時に行う。米軍の増援の手順と様々な作戦の戦術を確認する総合演習だ。夏の合同演習「乙支(ウルチ)フリーダムガーディアン」で、有事対応の計画を総合的に検討・確認する。
今回は7日から、北部・京畿道(キョンギド)の演習場や南東部・浦項(ポハン)の海岸などで行い、韓国軍約29万人、米軍約1万5千人が参加する。規模は韓国側が例年の1・5倍、米側が同2倍となる。米軍から原子力空母や原子力潜水艦、空中給油機なども参加する。
米韓両軍は昨年、ゲリラ戦の要素を多く盛り込んだ新たな計画「5015」を策定した。軍事関係筋によれば、攻撃では空爆や特殊部隊を中心とした局地戦、防衛では北朝鮮軍のゲリラ攻撃への備えが柱になる。様々な訓練を通じ、新計画が実施可能かどうかを検証していくことになる。
米韓は従来、朝鮮戦争のような全面的な地上戦を想定した計画「5027」を持つ。米軍の増援規模を69万人とした時期もあったが、米軍の規模縮小で方針転換。イラク戦争などの教訓から、敵の重要施設を破壊して戦争を早期終結させる戦略を重視している。
破壊対象となる重要施設には、北朝鮮の軍事基地や金正恩(キムジョンウン)第1書記の居所も含まれるとみられる。演習には在韓米軍にローテーション配備されている米特殊部隊も参加する。韓国の専門家は「特殊部隊のほか、トマホーク巡航ミサイルなど、攻撃の主体は米軍になる」と語る。
課題もある。重要施設の破壊は、敵の反撃を誘発しやすい。韓国政府元高官によれば、米国が1994年に北朝鮮の寧辺(ヨンビョン)核施設への爆撃を検討した際、北朝鮮軍に反撃の兆候が見えた場合に先制攻撃する目標が約2千カ所に上ったという。
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朝日新聞国際報道部
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