9回、リボリオ・ソリスを攻める山中慎介(右)=島津アリーナ京都で(横田信哉撮影)
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◇WBC世界バンタム級戦
WBC世界バンタム級王者の山中慎介(33)=帝拳=が同級3位で前WBA世界スーパーフライ級王者のリボリオ・ソリス(33)=ベネズエラ=を12回判定3−0で下し、10度目の防衛を飾った。日本のジムに所属する男子の世界王座連続防衛回数で3位の長谷川穂積に並んだ。京都と滋賀という2つの故郷から詰め掛けた大応援団の声援に応えた。WBC世界ライトフライ級王者の木村悠=帝拳=は同級5位の挑戦者ガニガン・ロペス(34)=メキシコ=との初防衛戦に判定0−2で敗れた。
最終12回、顔面を血で染めた挑戦者に山中が容赦ない連打をたたき込んだ。公開採点により、このラウンドが取れなくても勝利は確実。それでも、不本意な序盤の借りを返すように、気持ちと体がやっとかみ合った感触を確かめるように、王者は最後まで攻め続けて10度目の防衛戦を飾った。
「最終回の攻撃をもっと早い段階でできたらよかったんですが。気負いすぎてしまって。しかも1、2回で簡単に(左が)当たって、ちょっと油断しました」
気負うのも無理はなかった。京都は南京都高(現・京都広学館高)でボクシングを始めた地。故郷の滋賀・湖南市も近く、地元や高校関係者の大応援団が会場を埋めた。
しかも、3月4日は沙也乃夫人31歳の誕生日。勝利を最高のプレゼントにしようと決めていた。試合後は「沙也乃の誕生日というのが一番のプレッシャーだった」と冗談を飛ばしたが、思い入れが強くなりすぎるのも当然だった。
それが最悪の形で出たのが3回だ。2回に右でダウンを奪った。ところが、早期KOを狙って強引な攻勢に出たところ、挑戦者の右カウンターに2度もダウン。ゴングに救われなければTKOを宣告されてもおかしくないところまで追い込まれた。
だが、王者は見事に立ち直った。4回にワン・ツーを軸にペースを取り戻すと、フットワークもさえて以降の9ラウンドで3ジャッジが全員10点満点をつけ続ける一方的な展開。9回にはダウンも奪い、大差をつけての判定勝利を手にした。
「倒しきりたかったという思いはあるし、2回倒れた悔しさもある。ただ、苦しい中、これだけ戦えたのはみなさんの応援が背中を押してくれたおかげ。(妻の)誕生日も良くも悪くも思い出に残るでしょう」と笑った。「シンスケ! シンスケ!」の大コールとともに逆境をはねのけた山中は、今後も日本ボクシング界のエースであり続ける。 (藤本敏和)
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