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大震災から5年 中小企業支援 事業の持続力高めよう

 被災した中小企業の経営が転換点を迎えている。国の「グループ補助金制度」に基づき約1万社が4700億円の補助を受け、地域産業が壊滅する事態は避けられた。しかし、5年がたって売上高などの格差がはっきりし始めている。事業再開の後押しから、事業の持続に向けた対策への転換を急ぎたい。

     この補助金は、大災害でも企業に公的資金は投入せずとの前例を破って創設された。阪神大震災や新潟県中越地震の時にはなかった政策だ。

     中小の事業者がグループを組めば、工場や商業施設の設備復旧に国50%・県25%の補助が出る仕組み。製造業や水産加工、旅館、商店など幅広い業種に恩恵は及んだ。本社屋や蔵などが全壊した酔仙酒造(岩手県陸前高田市)が8億円の補助を受けて再建できたのをはじめ、「早期に操業再開できた」「貸し付けだけでは再建に踏み出せなかった」と評価されている。

     緊急対応としての効果は大きかったが、補助を受けた企業の課題が表面化しつつある。

     経済産業省東北経済産業局の昨年の調査によると、東北4県では「売上高が震災前の水準かそれ以上に回復」と答えた企業が45%ある一方で、「売上高は震災前の半分以下」との企業も31%あり、この割合は増えている。復興特需が一段落するなどの変化が背景にあるようだ。

     補助金とともに公的な災害復旧貸し付けを利用した企業も多い。これらの企業に当初5年の返済猶予期間が切れる時期が、次々に到来する。このため、これまで少なかった倒産の増加が心配されている。

     さきの東北経済産業局の調査では、経営課題として「人材の確保・育成」という回答が最も多く、「販路の確保・開拓」が続く。課題の解消に向け、地域の実情を知る地方銀行や信用金庫などの地域金融機関、各地の商工会議所などの役割が改めて期待される。将来を見据えた経営支援策を練ってもらいたい。

     被災地の現状は、全国の中小企業や地域経済が人口減少の時代を控え、直面しつつある姿だろう。解決のヒントが得られれば、他地域に応用できる。裏返せば、被災地での経済再生なくしては「地方創生」も絵空事に終わるということだ。国はそうした視点に立つべきである。

     被災地は、潜在的な価値を持つ資産はあるのに、新しい着眼点やビジネスにつなげる発想に欠ける面もある。官民のすぐれた人材を派遣するといった新たな策も必要だ。補助金で危機を救われた事業を持続的な営みにする取り組みが欠かせない。

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