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四話 初生産
程よい朝の光を感じながら藁の匂いに包まれ目を覚ます。寝苦しさも寒さも感じずに、一度も目を覚ます事も無く朝を迎えられた。
時計が無い為に確認のしようが無いが、かなり満足のいく時間、睡眠が取れた様で快適な寝起きだ。
「ふぁ~……」
立ち上がり大きく息を吸い込み体を伸ばす。
伸ばした体が小さくなっている事に気づき、目を見開くほど驚いたが、すぐに原因を思い出し安堵の息を吐いた。
歯磨きをする為にコップ一杯の水を汲み、歯ブラシを手に取り表に出る。
何の毛か分からない謎の歯ブラシで歯を磨いていく。当然、歯磨き粉なんて無いのでそのまま磨くだけだが、しないよりかはずっとマシですっきりした。
部屋の外は垂直にそびえ立つ壁に囲まれている場所だが、暖かい日差しが差し込み俺の体を温めてくれる。
朝の運動がてらに軽く体を動かしながら辺りを見回すが、何も居ないようで気配などは全く感じなかった。
歯磨きをして吐いた水が地面に吸われているのを見て、水の扱いを暫し考える。
鍛冶で使う水に関しては炉を動かせない事もあり諦めてはいるが、その他の部屋の中で使う水は極力表に出て行おうと思った。
単純に部屋の中で使うと湿気がやばそうで嫌なんだよね。
また、現状は柄杓やコップしか水を汲める物がない事に軽い不満がある為、それなりの量が使える桶などが欲しいと思い始めてきた。
欲しい物を上げていくと、今ある素材ではどう考えても足りなくなるのは火を見るより明らかではあるが、それを解決する方法が目の前にある事に歯を磨いている時に気付いた。
無いなら伐ればいいのだと。
都合よく目の前の通路には木が一本生えている。
昨日進んだ三方向のどの道にもこれ以外の木は生えていなかった事を思い出すと、こんな近場にあるのは神様の配慮だと思える。レシピの中にも斧がある事を考えれば間違いないのだろう。
同じく素材という事で言えば、鉄に関しても同様に掘れば出るような気がしている。レシピの中にこちらも当然のようにツルハシが有り、あの炉を使えば製錬作業が行える事を考えると、どこかを掘れば鉄か何かが出てきそうだ。
部屋に戻り朝飯を食べた後、報告するのもお下品だが、この世界で初めて用を足した。
結果、次に作成する優先度が最大になった物は木のヘラになった。
初めはレシピに在るのがおかしな位に不要な物だと思っていたが、今さっき最重要アイテムだと気付かされた。
簡単に言えば生活用品の中には紙が無いのだ。
どうしようも無いので勿体ないとは思いながらもレシピで拭こうと思い、手に取った木のヘラのレシピを見て用途を気づかされたのだった。
伸ばした手が掴んだレシピが木のヘラのレシピだった事が偶然だったのか、それとも天啓だったのかは分からないが、手にしたレシピを見た瞬間稲妻を受けたかの様な衝撃を受けたのだった。
最初から生活用品の中に入れて置いてくれとは思ったが、レシピに在るという事はスキルに関係するような気もしたので気にしない事にした。
その時は結局はもう使わないであろう、ナイフのレシピを使い処理をして事なきを得たのだった。
消臭の壺は名前の通り機能してくれたが、先に土か何かを入れておかないと大変な事になる事だけは分かった。
ナイフの柄を作った時に出た木の破片を使い、部屋の外で壺を掃除しているとつい考え事をして愚痴交じりの疑問が浮かんで来る。
こんなファンタジーな世界なのに、こんな事で悩むなんて思わなかったわ。
この世界の文明水準は分からないけど、普通はどうしてるんだろう? 用意してもらった道具を見る限りこの世界に水洗トイレなんて無いっぽいけど。
んっ……あれ?
全く考えてなかったけど居るよな?
この世界にも人間は。
ここを出ない事には疑問は解決されない事は分かっているので、直ぐに考える事を諦め、綺麗になった壺を片手に部屋に戻った。
さて、今日は予定通り一日レシピを処理していく。
先ずは木のヘラからだ!
朝のごたごたも一段落したので、作業台で一息付きながらレシピを素材ごとに纏める。
木のヘラ、木の食器。
レシピは木材製品を削るだけの工程で出来る簡単な物ばかりで、慎重に削って行けば問題無く作れた。だが、昨日のナイフ作りで感じたようなスキルの補助は感じる事は出来なかった。
食器のレシピがあった事に何かの冗談かと思ったがいつか役に立つと信じて保存しておこう……。
次に金属製品を作製する為に炉に魔力を注ぎ火を入れる。昨日の充填分が無くなっていたかは分からないが体から何かが減っていく感覚を覚える。
斧、ツルハシと調子よくレシピを消化をしていく。続いて剣のレシピを見て手が止まる。
剣か……。
無策で突っ込んだとはいえ、あの弱そうなスライムにさえこの体と技術じゃ通用しないだろう。それなら今持っているスキルの投擲術を活かせる物を作りたい。
そうすると、投げ槍を作るのが良いのかな?
投擲術って言う位だし投げる物、全般いけそうだけど投げナイフも有効かもしれないな。
よし、剣は辞めだ。
そもそもスキルさえ持ってないんだ、もし何かと対峙する事になっても近づいて戦うとか怖すぎる。あの痛みの地獄は二度と御免だしな。
大昔の人が投げ槍でマンモスとか狩ってた絵を見た事あるし、結構な名案なんじゃないか?
以下、ダイジェスト
作る武器は槍にした。だが、今は素材がないので後回しだ。
次に作るものは、マジックバッグ。出来上がったものは、まさしく魔法の鞄といえる素晴らしいものだった。
物を作ったお陰か、新たなスキルも手に入れた。この世界は、なかなかと楽しい場所らしい。
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