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ひそかブログ

アニメでするリアルの話、リアルでするアニメの話。そういうのが好きです。

僕だけがいない街 第9話 感想 - 母を見ようとしなくなった加代の目線が印象的

「僕だけがいない街」第9話、「終幕」の感想です。

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原作は既刊7巻のうち6巻までが既読です。



母を見ようとしない加代

朝の雛月家前。
泣きじゃくる母からぷいっと目を逸らし、途中から彼女を見ようとしなくなった加代の目線がとても印象的でした。

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たしかにある意味では雛月母(雛月明美、cv:岡村朋美)にも同情すべき余地があるのかもしれません。しかし悟の言ったように、娘を虐待し物置へと閉じ込め、3日居なくなっても探そうともしない母に、同情すべき余地は薄いと言わざるをえないでしょう。

加代が母から目を逸らした瞬間は、彼女が母から精神的に完全に独立した瞬間の象徴。そのように感じました。第3話の頃の加代とは大きく変わりましたね。第3話で物置から母と一緒に去るときの加代は、虐待のアザができた理由を母に促され悟に対して、

「転んだの」

と悲しいウソをついていました。

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何も言えねぇ……


その頃から比べると加代は本当に変わったなと…… 
理由として大きいのが藤沼家で過した一夜なんでしょう。藤沼母と一緒に風呂に入り、真新しいパジャマに着替え、川の字になって寝て、朝には湯気の出る朝食ができている。

100円玉2個が朝食の我が家とはなんて違うのか……

加代は他の家庭の事情を知ったことにより、自分の母親がどんなものなのか、一歩引いた目線で客観的に見ることが、母を “客観視” することができるようになったのでしょう。そして客観視を象徴する場面が母からぷいっと目を逸らすシーンじゃないかと。僕だけがいない街の第9話は、祖母にしがみつき泣きじゃくる母からぷいっと目を逸らし、母を見ようとしなくなった加代の目線がとても印象に残りました。


それにしても。
加代との別れは唐突であっけないぐらいの終幕……
夜に加代を隠れ家のバスから連れだして一泊し、彼女と別れるのが翌朝の出来事。たしかに作中には「今夜明日で決着だ」というセリフはありましたが、むしろ自分の方が心の準備が出来ていませんでした。一度漫画で読んだのにすっかり失念。ああ、加代とはこれで最後なのかなぁ…… 

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ケンヤは悟にさぞ驚かされただろう

ケンヤ視点で見ると。
悟が加代に対してとった行動は理解がしやすかったと思います。悟は加代に惚れてんだなー、ぐらいで。

しかしいざ加代を救うことに成功し、あいだを置かず他の人間の救出に動きだした悟は理解しがたかったでしょう。彼は悟の行動に「激しい違和感」と言ってました。以下、悟がケンヤやヒロミに対して語った話の要点です。

バスの前、雪上に今度は布を巻いたような足跡がある。
バスに残されていた荷物が消えている。
自分(悟)はバスに残されていたリュックの中身や練炭から、ここが連続殺人犯の殺人道具の隠し場所だってことを連想した。いまだから言うけど加代に対して自分は、母親からの虐待だけでなく、殺人犯から守るために加代を一人にしたくなかった。


ケンヤにとってこの時の悟は、まさにヒーロー。
そう見えた瞬間じゃないかな。これまで悟の変化に何度も驚かされていたケンヤですけど、今回の驚きが彼にとって一番大きかったように思います。実は悟のとってきた行動は加代に対する想いだけではなく、もっと大きな理由によるもの、連続殺人を止めたいという大きな動機によるものだった。それを知った今回のケンヤはさぞ驚いたことだろうなと。今回の後半は、そういったケンヤの驚きが印象的でした。

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僕街で気になっていること3つ

僕街でいまわたしが気になっていることを3点ほどあげてみます。

1. 「僕だけがいない街」ってどういう意味?

私には不明です。
加代が書いた文集のタイトルは「私だけがいない街」で、文集は第2話に引き続き今回も朗読されていました。「僕だけがいない街」もこの流れの延長線上、なのかなぁ…… たとえば「僕だけがいなくなる街」ぐらいの意味になるとか。
私が読んでいないマンガの7巻に作品タイトルにふれる場面があるようなので、近いうちに意味が分かるんじゃないかと思います。

2. 悟は文集に何と書いた?

作中悟は、「そういや俺は(文集に)何て書いたっけ?」みたいに言っていました。これまでの話からすると、悟が文集に書いた作文は「正義の味方になりたい」とか、そんな内容かなという気もします。

3. どうして漫画家志望になった?

これも不明で気になる点のひとつです。
悟は、関わった他人が不幸になってしまうという「死神」をモチーフにした漫画を描いていましたが、そこにはかつて母に信じてもらえなかった想いや、他人に関わるとロクなことにならない想いなどを漫画にぶつけたかったのかもしれないですね。


以上、作中明かされるかは不明ですが、僕街でいま気になっていることを3点ほどあげてみました。


最後に

昨夜から今日にかけて、僕街をところどころ再視聴しました。作中何度も出てくるのがヒーローの姿。この名前が「ワンダーガイ」だという事をようやく知りました。
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「ワンダーガイ」のカットは、第1話から早速登場していたんですね。また第8話では、悟の弁当箱がワンダーガイでした。
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(スマホで撮った汚い画像で申し訳ない)


再視聴で痛感したのが、自分の想像以上だった悟のヒーローに対する入れ込みよう。
そのヒーローに対する入れ込みがボタンの掛け違いでなど、いつのまにか悟のなかで「死神の漫画」に変貌していってしまったんでしょうね。


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「僕だけがいない街」 (全12話)

(スタッフ)
原作:三部けい
監督:伊藤智彦
シリーズ構成:岸本卓
キャラクターデザイン:佐々木啓悟
美術監督:佐藤勝
音楽:梶浦由記
アニメーション制作:A-1 Pictures

(キャスト)
藤沼 悟(ふじぬま さとる)
満島真之介(29歳)、土屋太鳳(10歳)
雛月 加代(ひなづき かよ):悠木碧
藤沼 佐知子(ふじぬま さちこ):高山みなみ
ケンヤ(小林賢也):大地葉
ヒロミ(杉田 広美):鬼頭明里
八代 学:宮本充
雛月母:岡村明美
雛月祖母:高橋ひろ子

(主題歌)
オープニング・テーマ「Re:Re:」
歌:ASIAN KUNG-FU GENERATION

エンディング・テーマ「それは小さな光のような」
歌:さユり




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