先月号のハーバードビジネスレビューに掲載された
日本交通社長 川鍋一朗氏の記事
乗務員のモチベーションを上げる3つの仕組み日本交通のタクシーはなぜ選ばれるようになったのか
が「葬儀業務のマニュアル作成」において
示唆に富むものだったのでご紹介したいと思います。
ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2015年 08 月号 [雑誌] ダイヤモンド社 2015-07-10 売り上げランキング :
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現在タクシー業界は
縮小するパイを各社が奪い合う構造があり、タクシー会社間の競争は年々熾烈化している。
という状態。
そして、人材はというと
まず、タクシー乗務員になったきっかけを聞くと圧倒的な一位が「ほかに適当な仕事がなかったから」であった。次に、現在のタクシー会社を選んだ理由について聞くと、一位が「家に近かったから」、二位が「知り合いがいたから」能動的にこの仕事を選択して従事する人は少なく、世間では訳ありの人が流れ着く職業というイメージすらある。
うわー、ちょっと前の葬儀業界に似てる。
で川鍋氏が何をやったかというと
まず「誇りを持って働く」ということに焦点を当てた
ただし、個人の想いに任せているだけでは、そこに事業としての永続性は生まれない。次の段階として、乗務員全員のモチベ ーションを高める仕組みづくりが必要である。モチベ ーションを管理するうえでは、やる気のない人を一放置すること以上に、やる気のある人が正当に評価されない仕組みが問題だと考えている。そのため、最低限の基準を満たさないこと以外にはペナルティを与えるような制度は導入しておらず、むしろ積極的な取り組みを評価する仕組み構築した。
私は、乗務員のモチベーションを高める仕組みとして、マニュアルの制定と運用、キャリアパスの整備、営業所のランキング制度という三つを実施した。
マニュアル作成の目的は、みずからがサーピスのプロフェッショナルであるという意識を強く持ってもらうことと、日本交通のサービス水準を均質化することにある。
日本交通にふさわしくないサービスを足切りすることと、過剰なサービスを控えることが目的である。
実施するサーピスの最低ラインを確立し、それを厳守 してもらうことだ。
個人の過剰サービスも戒め、日本交通というブランドとしてサービスを均質化する必要があった。言い換えれば、正規分布における両端を足切りするということだ。マニュアルの導入とはサービスの画一化を意味し、高いレベルのサービスを切り捨てることにつながる。私自身もそれは承知しており一部のお客様からは不興を買うことを覚悟のうえで、サービスの均質化を図ってきた。なぜなら、日本交通のブランドを毀損しないために、マイナスをいかに少なくするかを重視したからだ。
私は葬儀業務のボトムアップにおいてマニュアルは必須だと思っています。
(参考記事: 葬儀屋のマニュアル不要論に異論有り!)
(参考記事: 葬儀屋のマニュアル不要論に異論有り!)
実際過去たくさんのマニュアルを作ってきました。
しかしボトムだけでなくトップも切ることを辞さずという川鍋氏の発想は新鮮でした。
確かに身だしなみなどのカテゴリーに関してはガチガチのマニュアルを作れるのですが
作業手順に関しては甘めというか
個人の裁量が入ってくる余地のあるマニュアルを作らざるを得ませんでした。
個人の裁量が入ってくる余地のあるマニュアルを作らざるを得ませんでした。
臨機応変で判断力のある優秀な奴ほどルールで縛られるのを嫌います。
こんなものなくても私はもっとうまくできるのに、
平均層のために抑圧されるのは納得がいかない
という論理ですね。
彼ら彼女は気転の効いたサービスで、お客様の評価もいいのです。
こんなものなくても私はもっとうまくできるのに、
平均層のために抑圧されるのは納得がいかない
という論理ですね。
彼ら彼女は気転の効いたサービスで、お客様の評価もいいのです。
(ヨーロッパサッカーより南米サッカーのイメージですかね。
サッカー詳しくないけど)
そういう層が一定数トップグループにいるので
マニュアルを作る場合も彼ら彼女らの裁量の余地を残したものになってしまうわけですね。
そういう層が一定数トップグループにいるので
マニュアルを作る場合も彼ら彼女らの裁量の余地を残したものになってしまうわけですね。
しかし言い方を変えれば
彼ら彼女らの能力はいわば「才能」であることが多く
それらを中間層のレベルアップのために適用することは難しいのです。
「裁量の余地を残し」た分、中間層のクオリティは落ちます。
川鍋氏はトータルのパフォーマンスを考えると、高レベル層も切り捨てて
組織全体のレベルが上がること(≒ブランド力)を取るといっているのです
たしかに以前紹介した
「ハーバード・ビジネススクールが教える 顧客サービス戦略」を葬儀業界に当てはめたら 1/2
で紹介した
『 原則3
悪いのはスタッフではない
スタッフが担う役割は大きいが、サービスはスタッフ次第、というわけではない。
それより重要なのはビジネスモデルの設計だ。
とくに、平均レベルのスタッフがごく普通に行動するだけで
良質なサービスを提供できる仕組みを築けるかどうかがカギを握る。』
という原則につながる話です。
という原則につながる話です。
とはいえタクシー業界に比べ葬儀業界は
・平均年齢が低く(≒素直)職業意識がやや高い(と思う)
・タクシー業界のように顧客の意志で指名の頻度を上げることができない
・会社に対して、ではなく個人指名で葬儀依頼が入ることがある
・次回依頼まで期間が空くので、前回の期待値が変っているかもしれないしニーズも変化しているかもしれないというリスクがある。
というような構造的な違いがあるので
川鍋氏の方法論をそのまま持ち込めるとは思っていません。
ただ以前私がヘッドハンターから持ちかけられた、
ある葬儀社のスタッフがどうしようもないから、飛び込んで大なたふるってくれ
というような案件を引き受けざるを得ない状況なら
この方法論を使うかもしれません。
川鍋さんもそんな状況だったらしいですし。
詳細なマニュアルに対して、個々の判断に任せるべきという声もあるだろう。だが、仕事に対するモチベーションに大きな差がある状況で、個々の裁量に委ねることはリスクでもある。ブランドを築くためには、サービス水準のボトムアップと同時に、過剰サービスを排除する仕組みが求められるのだ。
たとえば、お客様への最初の言を「ありがとうございます」とするのは私が決めたことだ。朝 10時までは「おはようございます 」も認めているが、一般に時間を限定することが難しい「こんばんは」の使用は認めなかった。「20年隠乗務員をやっていて、『こんばんは』と言って怒られたことは一度もない」 と憤慨した乗務員もいた。なぜそう決めたのかと問われても、万人に納得してもらえるロジックで説明することはできない。サービス水準を均質化し、それを守り抜くことに意義がある。サービス業の最後の一線はロジックではなくトップの意思で決めるしかないのだ。
こっちの方が合理的、と割り切れる事象は
マニュアル作りが簡単なのです。
やっかいなのはAもBも間違っていない、というケース。
とくに葬儀の実務は宗教儀礼がからんでくるので
そもそも「なぜそうする」という前提自体の正しさを設定できないことが多いのです。
加えて前述した個人の資質に依存したグループの反発。
川鍋氏のようにスパッとできたらさぞかし気持ちいいでしょうね。
ただこうまで言い切るには
マニュアル作りが簡単なのです。
やっかいなのはAもBも間違っていない、というケース。
とくに葬儀の実務は宗教儀礼がからんでくるので
そもそも「なぜそうする」という前提自体の正しさを設定できないことが多いのです。
加えて前述した個人の資質に依存したグループの反発。
川鍋氏のようにスパッとできたらさぞかし気持ちいいでしょうね。
ただこうまで言い切るには
カリスマ性がないと難しいですね。
もちろん調整型管理職の私にはそんな器量はありません(^^;)
もちろん調整型管理職の私にはそんな器量はありません(^^;)
<2015年08月20日>記載
コメント
コメント一覧
まず思いつかない。実際実行したことについては、
驚くしかありません。
”やる気のある人が正当に評価される仕組み”
自分の勤務先にも欲しい・・・
>”やる気のある人が正当に評価される仕組み”
そうですね、言うは簡単なんですけどね。