2月24日に発売された『ガールズ&パンツァー オーケストラ・コンサートCD&BD』発売記念イベントが、新宿の映画館「バルト9」にて開催されました。出演は西住みほ役の渕上舞さん、主題歌を担当するアーティストChouChoさん、指揮者の栗田博文さん、音楽プロデューサー(ランティス)の関根陽一さん。
『ガルパン』のトークイベントは毎回内容の濃い企画ばかりですが、今回の発売記念イベントも例に漏れず、ヒジョーに熱いトークショーとなりました!
■登壇者が感じたクラシック・コンサートの醍醐味とは?
トークショーはまず、2015年11月3日に開催された「オーケストラ・コンサート」の思い出について。そもそも、このコンサートが企画されたきっかけは、音楽プロデューサーの関根さんの発案だったそう。企画した理由を聞かれた関根さんは、「サントラがファンに支持されていた事がきっかけで立案しました」と語りました。そんな関根さんですが、実は開催するまではとても不安だったそうです。だけどいざ開催され、会場に訪れた大勢のファンのスタンディングオベーションを見たときは、感動のあまりに涙が出たそうです。
一方、コンサートで楽団を指揮した栗田さんは、「終わって3ヵ月半くらい経っているけど、まるで昨日のことのようです」と前置きをした後に、「本編34曲+アンコール3曲、合わせて37曲を指揮するのって……えらいくたびれるんですよね(笑)」とコンサート当日の様子を振り返りました。それもそのはず、例外はありますが、通常のオーケストラコンサートの場合はだいたい10曲ほどとのことです。
そのような「くたびれるほど曲数の多いコンサート」だったにもかかわらず、栗田さんは「楽しかった!」と語りました。その理由は、「お客様の反応がどんどん迫ってくる感じがしていたので、不思議と疲れないんです。それは鮮明に覚えています!」と語り、コンサートに足を運んでくれた温かいファンのみなさんに感謝を述べました。
続いては歌手として参加したChouChoさん。ChouChoさんは感想を述べる前に、「私は劇場版の歌を担当することと、オーケストラをバックに歌うことがデビューしたときからの夢でした」と話しました。続けて「その私のふたつの夢を『ガルパン』が同時に叶えてくれたんです」と笑顔でコメントすると、場内のファンからは大きな拍手が起こりました。
最後は声優の渕上さん。渕上さんにマイクが回ってくると、いつもの調子で「コンサートの合間に朗読をさせていただきましたが、いやぁ~緊張したね!(笑)」と渕上節でコメントすると、場内は爆笑。実はイベント当日、バルト9に集まっていたお客さんの半数くらいは、コンサートにも足を運んだファン。コンサートホールの渕上さんと、バルト9の渕上さんの雰囲気があまりにも違うので、おもしろかったのかもしれないです。
さらに渕上さんは、「コンサートだと、いつものステージとは雰囲気が違って緊張しました。お客さんも緊張されている方も多かったのかな? まさか慣れ親しんだ『ガルパン』のステージで、あそこまで緊張するとは思っていなかったです。そんな自分に動揺したり、とてもいい経験をさせていただいた」と感想を述べました。
■「音楽を生業にする人間にとって"コンサート"は目標であり夢」――関根氏
続いてのトークは、企画立案者である関根さんが語る「クラシックコンサートのこだわり」について。まず関根さんは、「オーケストラコンサートを開催するというのは、僕ら音楽人としての大きな目標であり夢です」とコメントしました。しかし、このようなコンサートイベントを実行しようとすると、どうしてもアーティスティックになってしまうそうです。関根さんは「企画者のエゴかもしれないけど……」と語りました。だけど今回の『ガルパン クラシック・コンサート』の企画は、アート寄りに作るのではなく「『ガールズ&パンツァー』の総集編を音楽で作るんだ」という意気込みで挑んだそうです。そのため、曲の並び順はストーリーに沿ったものにし、映像と音楽をシンクロさせることにこだわったとか。関根さんは「目を閉じて音楽だけを聴いただけで、第1話から第12話までをすべて再現できるように」と考えて作り込まれました。
会場のファンが「なるほど!」とうなずいているとき、関根さんは「そこで問題となってくるのが『あんこう音頭』なんです。これをどうやってオーケストラで再現するんだ?(笑)」と語り出しました。とてもいい話をしている最中に、関根さんのクチからまさかの『あんこう音頭』。当然、場内は大爆笑です。
関根さんは、「『ガルパン』の良さは、クオリティーの高いものを作って、それを遊び倒すところが魅力だと感じている。音楽ではそれが『あんこう音頭』だと思う」と話を続けました。そんな思いから関根さんは、東京フィルハーモニー交響楽団に「あんこう音頭は(オーケストラで)できますか?」と相談したら、「楽譜に書いてあればなんでもできます」とプロの返事が返ってきたそうです。そんな裏話があって、実際にコンサート会場で『あんこう音頭』が演奏されました。会場の雰囲気を見た関根さんは、「会場の空気がガラッと変わって緊張が緩和され、とてもよかった」と率直な感想を述べました。
■指揮者・栗田さんが語る『ガルパン』サウンドの魅力とは?
次は数々の楽曲を指揮してきた指揮者の栗田さんが感じる「ガルパン楽曲のすばらしさ」を語るコーナー。栗田さんは「ほとんどの曲を作曲している浜口史郎さんの曲は、非常にシンプルでわかりやすい。一回聴いたら覚えちゃうわかりやすさ」と分析しました。これは『ガルパン』のファンなら誰もが同意するでしょう。また、栗田さんは「場面ごとに的確な音楽を書いているのもすばらしい。さらにたくさんの外国の有名な曲を挿入曲として使っていて、それがとても効果的です」と浜口さんが手がけた『ガルパン』の楽曲をベタ褒めしました。
次の質問の「そんな楽曲を演奏するときに意識したことは?」に対する栗田さんの答えは、「ホールで気持よく聞こえるように、ちょっと微妙にテンポを早めてみたり、遅めてみたり調整したところ」と返答しました。実はコンサートホールで演奏された曲のテンポは、オリジナルとは若干異なっていたそうです。そのワケは、「オリジナルとまったく同じデジタル的なテンポをコンサートホールで行うと、反響などの関係でうまくはまらないことがある」からだそうです。音楽に詳しくない一般人からしたら微妙すぎて判別つかないかもしれませんが、どのくらいテンポをずらしているのか、オリジナルと聴き比べてみると、新たな発見があって楽しいかもしれません。
■コンサートホールで歌うのが夢だったChouChoさんが感じた「違い」とは?
アーティストのChouChoさんがコンサートホールで歌ったときに感じたのは「いつもとの違いはリズム」だそうです。普段のライブなどで歌うときは、ドラムが一定のテンポでリズムを刻んでいて、それに合わせて歌うことが多いそうです。しかしオーケストラの場合は、その役を指揮者が担います。ChouChoさんは「難しかったけど、呼吸を合わせて作っていくという感覚が新鮮で、楽しかったです。楽曲のなかでもテンポが微妙に変わってきたり、ぜんぜん違いました」と、心の底から楽しんだような笑顔で語っていたのが印象的でした。
さらに「お気に入りのシーン」を問われたChouChoさんは、「『Enter Enter Mission!』をみんなで歌ったところ」と即答。ChouChoさんは当時の客席の盛り上がりを説明した上で、「お客さんがみんな歌ってくれてるので、みなさんに任せようかなって思うくらい大合唱で楽しかったです。会場全体が熱くなっていました。ぜひ映像を見てほしいです!」と語りました。
■「西住みほの心情を込めて丁寧に伝えた朗読」――渕上舞
コンサートで朗読を担当した渕上舞さんは、「とても緊張していたけど、会場の空気感を大切にするように気をつけました」と語る。特に注意したのは「言葉」だそうです。渕上さんは、「セリフというよりも、西住みほの心情、あまり語られない"みほの心の中"を音楽と共にみなさんに伝えたかった。ひとつひとつ丁寧に伝えるように心がけました」と語ると、会場から大きな拍手が起こりました。
ChouChoさんと同様に、渕上さんにも「お気に入りのシーン」を問われると、「プラウダ戦の『カチューシャ』のところ」と答えました。その理由は、耳に残っている曲だけど、オーケストラでアレンジされているので、新鮮だったそうです。渕上さんは「知っている曲であればあるほど、アレンジされた曲を聴くと気持ちが盛り上がりますよね」とコメント。このように渕上さんが『カチューシャ』の魅力を語っていると、音楽プロデューサーの関根さんが話に入ってきました。
関根さん:『カチューシャ』を気に入るとは、お目が高い!
関根さんによると、『カチューシャ』の演奏はノンナとカチューシャの歌い分けによって、楽器を変えているそうです。関根さんは「カチューシャの楽器はコレ、ノンナの楽器はコレというように変えています。その演奏が上映されたキャラクターの口の動きと完全にシンクロしているんです。これは栗田さんの超絶技巧のおかげです」と、トークショーならではの裏話を披露しました。
■教えて、栗田先生! オーケストラコンサートの楽しみ方は?
トークショーの最後は、指揮者・栗田さんによる「オーケストラコンサートの楽しみ方」について。普段のアニメイベントにはなかなか出演しない栗田さんから、興味深いハナシがたくさん飛び出しました。小さいころからオーケストラが大好きで、ずっと聴き続けている栗田さんは「オーケストラコンサートの楽しみ方に決まり事はない」と言い切ります。
栗田さんによると、オーケストラコンサートにはだいたい60~70人、またはそれ以上の人数が舞台の上で演奏しているそうです。オーケストラの醍醐味は、それほどの人数が、「息を合わせて同時にポーンと音を出すところ」だと語りました。
オーケストラには、ひとつの楽器のソロもあれば、何十人が戦い合っているようなダイナミックレンジが広いところもあります。これは人間の脳では処理できないほどの音が鳴っている状況だそうです。栗田さんは、「少しでもおもしろいなと思ってくれたら、ぜひ生のクラシックのコンサートに足を運んでいただきたいです。『ガルパン』が好きな指数が100だとしたら、そのなかの1だけをクラシックにわけてください。ガルパンとクラシック、99対1でもかまいません。みなさんが知っている曲はたくさんあります。生でオーケストラを聴くと、心に響く要素が山程あると思います」と集まったガルパンファンに魅力を語りました。
さらに栗田さんは、オーケストラコンサートに行く心構えについて、「敷居が高いなんて思う必要性はまったくありません。今日、こうやって映画館に来た感覚で行けばいいんです。拍手をしたければ拍手をすればいい、文句があったらブーイングをしてもいい。なにをしてもいいんです。映画館でできて、クラシックコンサートでできないことと言えば、"ポップコーンを食べる"ことくらいかな?(笑) それ以外は自然体で見てほしいです。私のコンサートでもいい、私以外のコンサートでもいい。よろしくお願いします」とコメントしました。
そして最後に栗田さんは、「最初からクラシックはイヤかな? という人だったら、3月21日(月・祝)に渋谷のオーチャードホールで、クラブ界の巨匠"ジェフ・ミルズ"と私と東京フィルハーモニー交響楽団でコンサートをやります。クラシックの曲もあれば、ジェフ・ミルズさん、坂本龍一さんの曲もある。しかも爆音でクラシックをやります」と紹介。ガルパンファンに馴染み深い「爆音」という単語が飛び出した途端、場内のファンは過剰に喰い付きました。言葉通り、クラシックを爆音で演奏するイベントなので、興味のある人はぜひ足を運んでください。
■イベント情報
『爆クラ! presents ジェフ・ミルズ × 東京フィルハーモニー交響楽団 クラシック体感系 ~時間、音響、そして、宇宙を踊れ!~』
日付:2016.3.21 (月・祝)
時間:open 16:30 / start 17:00
場所:Bunkamura オーチャードホール
>>公式サイト
■渕上舞さんの誕生日の前日に『劇場版』が発売!
イベントの最後は、登壇者の挨拶。渕上さんは「ファンのみなさんが、映画やコンサートなど、『ガルパン』と名の付くものすべてを楽しんでくれているのがとっても嬉しいです」と感謝の気持ちを述べました。さらに渕上さんは自身の誕生日が5月28日で、『ガールズ&パンツァー 劇場版』のBD/DVDが5月27日に発売されることを紹介した上で、「前日ではありますが、私の大切な作品のBD/DVDが発売されるのは誕生日プレゼントみたいだなって思います、これからもずっと『ガルパン』と付き合っていきたいと思いました。これからも『ガルパン』をよろしくお願いします」と、集まってくれたファンに挨拶しました。
そしてイベントの締めくくりは、恒例となっている登壇者と来場者みんな一斉に「パンツァー・フォー!」の掛け声。今回のイベントも大成功で幕を閉じました。『ガルパン』のトークショーはいつも濃い企画ばかりだが、今回はそのなかでもかなり密度の高いイベントでした。
■『ガールズ&パンツァー オーケストラ・コンサート~Herbst Musikfest 2015~CD』
【音楽】浜口史郎
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
【指揮】栗田博文
【出演】渕上 舞、ChouCho、佐咲紗花
【発売日】2016年2月10日発売
【価格】LACA-9436~7(2枚組) ¥3,800(税抜)
■「ガールズ&パンツァー オーケストラ・コンサート ~Herbst Musikfest 2015~」
Blu-ray 2016年2月24日発売
発売・販売元:バンダイビジュアル
価格 Blu-ray:¥7,800(税抜)
※本編内容は、2015年11月3日の全2公演を編集・再構成したものを1公演分として収録。
>>『ガールズ&パンツァー』公式サイト
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