ケンドリック・ラマーが新作をサプライズ・リリース アリシア・キーズの5歳の息子も参加
先月の第58回グラミー賞で最多の5冠に輝いた人気ラッパー、ケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)が、米時間で3日夜に『untitled unmastered』と題された作品を緊急リリースした。
ケンドリック・ラマーが昨年3月に発売した『To Pimp A Butterfly』は、全米チャートで2週連続1位の大ヒットを記録し、また多くのメディアが2015年のベスト・アルバムに選出するなど高く評価。またそのメッセージ性や活躍ぶりから、地元コンプトンから市の名誉賞「Key to Compton」を先日授与されており、オバマ米大統領も収録曲を2015年のお気に入りの楽曲に挙げ、ホワイトハウスに招待され直接対面するという栄誉に与っている。そして先日のグラミー賞では、ラッパーとしては史上最多となる11ノミネートを受け、最優秀ラップ・アルバム、最優秀ラップ・ソングなど5部門で授賞。主要部門での授賞こそ成らなかったものの、授賞式では、アメリカ社会における差別の問題や警察の暴力問題、また最新作『To Pimp A Butterfly』のインスピレーションの源となった南アフリカを意識したライブ・パフォーマンスを披露し、同授賞式におけるハイライトとなる圧巻のステージとして記憶されている。
このグラミー賞でのステージは、『To Pimp A Butterfly』から“The Blacker The Berry”、そして最優秀ラップ・ソングと最優秀ラップ・パフォーマンスを授賞した“Alright”が披露されたのに加え、終盤はさらに未発表曲をラップしたことも大きな話題に。ケンドリックは、アルバム発売前の2014年12月や、今年1月のTV出演でも、アルバムには入っていない未発表曲を披露しており、グラミー直前のインタビューでは、「サンプリングの許諾の問題や、〆切に間に合わなくてアルバムには入れられなかったけど、気に入ってる音源があるんだ。10曲くらいあると思うんだけど、気に入ってるし、アルバムに入らなかったものもパフォーマンスしていくよ」とコメントするなど、以前から未発表音源の存在について触れていたが、これらがついに陽の目を見た。
『untitled unmastered』というタイトルで発表されたケンドリックのアルバムは、全8曲のすべてが「無題」とされており、レコーディングした時期と見られる日付がタイトルに加えられている。2014年12月にTV番組で披露した未発表曲は“untitled 03 l 05.28.2013.”、今年1月にTV番組で披露した曲は“untitled 08 l 09.06.2014.”であると見られる。参加アーティストなどのクレジットが発表されていないが、“untitled 03 l 05.28.2013.”では『To Pimp A Butterfly』にも関わったテラス・マーティン(Terrace Martin)、サンダーキャット(Thundercat)、ビラル(Bilal)、アナ・ワイズ(Anna Wise)の番組出演メンバーが関わっていると見られる。
また、SNSでアーティスト側から発信されている情報では、ロバート・グラスパー(Robert Glasper)が“untitled 05 l 09.21.2014.”で演奏しており、カードー(Cardo)が“untitled 02 l 06.23.2014.”と“untitled 07 l 2014 – 2016”をプロデュース。後者の“untitled 07 l 2014 – 2016”にはフランク・デュークス(Frank Dukes)に加え、アリシア・キーズ(Alicia Keys)とスウィズ・ビーツ(Swizz Beatz)の5歳になる息子エジプト(Egypt)もプロデュースに関わったとスウィズ自ら発言。エジプトがビートに合わせてキーボードを弾いている映像を公開しているが、同曲にはスウィズ自身も関わっているとのこと。他にも、“untitled 05 l 09.21.2014.”にレーベルメイトのジェイ・ロック(Jay Rock)が参加しており、“untitled 06 l 06.30.2014.”のボーカルは、シーロー・グリーン(CeeLo Green)ではないかと報じられている。
合計で34分ほどと短い内容だが、『To Pimp A Butterfly』のようにジャズやファンクをヒップホップと結びつけた内容となっており、音楽ファンには嬉しいリリースとなった。最初にSpotifyで公開された後、4日からiTunes/Apple Musicでのデジタル配信もスタートしている。なお、このリリースについては、グラミー後にNBAスターのレブロン・ジェームズが、ケンドリックの所属レーベルのボスに対して、「すぐに未発表の音源をリリースするべき! どう?」とツイートし、「ちょっと考えさせてくれ」との返答をもらっており、一部ではレブロン・ジェームズのこのツイートがリリースのきっかけになったのではと考えられている。
なおケンドリック・ラマーは、今年7月にニューオーリンズで開催される世界最大規模のブラック・ミュージック音楽フェスティバル〈Essence Festival〉でヘッドライナーを務めることも発表されている。
1. untitled 01 l 08.19.2014.
2. untitled 02 l 06.23.2014.
3. untitled 03 l 05.28.2013.
4. untitled 04 l 08.14.2014.
5. untitled 05 l 09.21.2014.
6. untitled 06 l 06.30.2014.
7. untitled 07 l 2014 – 2016
8. untitled 08 l 09.06.2014.