福島第1原発周辺の森林、突然変異やDNA損傷 グリーンピース報告
2016年03月04日 19:22 発信地:東京
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【3月4日 AFP】2011年3月に起きた東日本大震災に伴う福島第1原子力発電所の事故からまもなく5年を迎える中、国際環境保護団体「グリーンピース(Greenpeace)」は4日、原発周辺の森林で事故による環境影響が現れ始めていると警告を発した。
グリーンピースは、樹木の突然変異の兆候やミミズのDNA損傷などが現れ始めているとし、「膨大に蓄積した放射能」により森林を除染することは不可能で、今後何年間も汚染源として残るだろうと述べている。
グリーンピースの報告書では「モミの木の成長における突然変異の明らかな増加」や、チョウの「ヤマトシジミの遺伝的変異」、「高濃度汚染地域のミミズのDNA損傷」といった事例が挙げられている。
一方、日本政府は福島第1原発周辺の自治体に対する避難指示を、2017年3月までに解除する目標を掲げている。
グリーンピースでは今回の報告は、専門家の査読が行われる国際的な学術誌に掲載された研究報告に基づいていると述べている。グリーンピースの報告書を執筆したケンドラ・ウルリッチ(Kendra Ulrich)氏はAFPの取材に対し「人権、特にこの災害の犠牲者の人権の利益のために、正確で完全な情報がきちんと公開されること、またこうした(事例の)存在について誤解させるような言説にしっかり異議を申し立てることが喫緊(の課題)だ」と語った。
一方で、福島のチョウの遺伝的変異を発見した科学者を含め専門家らは、動物に対する原発事故の影響を判断するには、さらにデータが必要だとしている。研究者や医師らはこれまで、放射線被ばくと結び付けられることの多いがんや白血病といった疾患の発症例が福島原発の事故によって増加する可能性を否定している。ただし、チェルノブイリ(Chernobyl)原発事故の後に問題となった若者の甲状腺がんなどが懸念されるため、長期的な検診が必要だとしている。(c)AFP