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SIがハッピーになれない理由 

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2016/03/04 06:00

IT屋の向かう先

編集部:将来的にはSIはなくなりますか?

神林:いや、絶対残ります。絶対残る。理由は簡単で、ユーザーがシステムを作れないから。要するにアウトソーシングなんですよ、SIって。事実上、情報システム部も。自分で作れないので外に委託して作ってもらうことになってしまっていて、それをなくすことができない限りはなくすことはできない。需要は絶対ありますんで。需要があるってことは供給する側が絶対出てくるんで。

井上:そこで働いている人がちゃんと価値を提供できているんだったら悪いっていうわけではないんですけどね。

神林:できてればいいですけどね。ちょっと難しくなりすぎちゃったっていうのがありますよね。リファインする方向に行けばよかったんだけど。最近特にひどいかなって。

井上:そこは必然なんじゃないんですか。そうでもないんですか。

神林:なんだろう。歴史自体がそんなにないから、これが正しいかどうかってちょっとわかんないですよね。

井上:あーそうですよね。

神林:たかだか4~50年でしょう。こういう方向があってたかっていうのは……

井上:ソフトウェアの必要知識っていうのがどんどん増えていますけど、確かに本当に必要なのかって言われるといらないんじゃないかみたいなのもありますよね。

神林:洗練感が低いんですよね。なんか、過剰に広がっちゃって。ふつう道具としてっていうのは、多機能化は行くんですけど、あるところでデザインっていうか、洗練される形になっていかないと普及しないですけど、そういう風になっていないのはなぜなんだろうと。

井上:家でいうと、構造がたくさんできたり、材質がたくさんあったりっていう。

神林:あと車でいうと、昔はエンジンから自分で手をいれて、マニュアルだったじゃないですか。それがオートマになったじゃないですか。普及するにあたって、やっぱりそれはどんどん手順が簡単になって安全なほうにいかなきゃいけないんだけど、なんかなってないんだよね、ITの場合は。

井上:車も、作る側の必要知識は増えているんじゃないですかね。あらゆる産業がそうなっている可能性が。サイエンスだって必要知識がどんどん増えてますよね。

神林:どこも破たんし始めているんじゃないかな。

井上:一人の人間がサイエンスでなにかやろうとしたら、まず40年かかると。今あるものをキャッチアップするので40年かかったら、もう新しいことはできなくなっちゃうかもしれない。

神林:あとよく思うのは、大学教育とかですね、ITに対してまともにやってないんです。それはよく感じる。

井上:ここは鶏と卵っていうか、ちゃんとした教育を受ければ、ITで高い給与がもらえるとかだったら、そこに集まるはずなんで。

編集部:最近は、プログラムを小学生からとか、盛り上がっていますが。

井上:言葉だけ先行してますよね。

神林:えー。まあ、単純にプログラマーが足りないって勘違いしてるんじゃないですかね。足りないのはちゃんとプログラムをかける人であって。なんか勘違いをしていますよね。ああいうこと誰が言い出したのかと思うんですけど。

井上:そのような、頭がいいプログラマーが足りないっていうのは正しいんですかね。

神林:まず、ちゃんとしてないプログラマーをちゃんとしたほうが全然効率がいい、業界として。

井上:もしかしたら、いまから子供をちゃんとしたエンジニアへと育てるほうが、結果的には早いかもしれないですよ。

神林:可能性はあるんですけど、そこまで悲壮的にみちゃうとなかなかつらいなって。そこまでわかって子供からって言っているんだったらいいですけど、そういう感じはあんまりしないですよね。

編集部:ちゃんとしたプログラマーを作るにはちゃんとしたプログラマーが教えなきゃ、とか。

井上:いろいろな本もあるしね。数学は自分で学べるし。

神林:適性はある気はしますよね。自分で勉強して、自分でコードを書いて、人から教わって、リファインしていくっていうことができる人とできない人がいるので、できない人は、ここにいても回りも自分もハッピーじゃない気がするんですよ。

 日本の場合、流動化が進んでいないっていうのが最大の問題で、人が移動するときにどうしてもほかのところにわたりづらい、いきづらいっていうのがあって、逆に言うと他の業界に行けたり回ったりできるひとっていうのは、相当力がある人だと思うんですよ。本来、大学教育や高等教育でやるべきことっていうのは、業界を渡り歩いても通用するような基礎的な力を教えなきゃいけないんですけど、特定のスペシャライズしたことを教えることが専門教育だみたいに思っちゃっているので、結局入ったまま移動ができない。できる人はそこで自信をつけていろんなできるようになったひとは動けるようになる。本来そこにいてほしい人がどんどん動いて、いてほしくない人が動けないっていう。そういう感じになってしまっている気がしますね。

井上:それが大きいのってやっぱりソフトウェアなんですかね。

神林:ソフトウェアもそうなんじゃないですかね。IT業界……

井上:でも結局、給料が高ければそれは起きないですよね。相対的に。

神林:どちらかっていうと、給料が低いんだけどそこにいちゃっている人のほうが問題なんじゃないですかね。給料がすごく下がっているのに、そこにしがみついて仕事している…

井上:うつ病になるくらいだったらほかのところへ行ったほうがいい。でもこれまでの経験外でいい給料があるところに、そう簡単には行けないっていうのが現実なんですかね。

神林:だからそこで行けないってところが問題だと思うんですよ。本来はSIが縮小傾向に向かうはずなんですけど、それに行くには供給サイドのほうが、具合が悪かったりとかして。まずは、ちゃんと回らない人を他の業界にちゃんと出せるような仕組みにしてあげないと。

編集部:どの業界に行けばいいですかね? IT業界で疲弊してしまった人は……

神林:いや、いくらでもありますよ。経理でExcel使うとか。いくらでもありますよ。

井上:でも給料は下がりますよね。

神林:給料は下がるでしょうね。給料が下がっても、そっちのほうがハッピーだったらそれでいいじゃないですかっていうのがあって。そういう仕事はあると思うんで。ITを作る側じゃなくて、使う側。ユーザー側だって使うのに能力がかかるわけで、それはやっぱりもう少し使いたいんだけどっていう人をとればいいじゃないかと思う。

編集部:Excelの達人として第二の人生を。

神林:優遇されると思いますよ。

井上:ハッピーになるかはわかんないですけどね。でもまあ、うつ状態よりは。

神林:うつ状態よりはましでしょう。

編集部:食事と睡眠がとれるようになれれば。だいぶうつ状態からは。

井上:何が幸せかですよね。

神林:コードを書くのが好きな人で、ものを作るのが好きだったら、やっぱり自分で勉強するはずなんで、そういう人は向いているからどんどん伸ばしていけばいいんですけど、そういう人じゃなくて、いやあ、もう、むりやりコード書いてるいし、あってないんじゃないのと思いながら、お客さんの要求定義をとりあえず起こして、下に投げてぼけーっとしてるような人は、そこにいるのは無駄だと思いますよ。そういう人は多いですよ。本当に。

編集部:少し思うのは、人間って、本質的な特性のところで、奴隷体質みたいなのが、ある種の隷属願望みたいなのがあって……

井上:それはあるかもしれないですね。

編集部:隷属願望が強い人とIT業界の相性がすごく合う、みたいなことは……

井上:そんなにSIをさげすまないでください(笑)

編集部:いや、隷属願望が悪いと言っているのではなくて……

井上:いや、わかりますよ。自分で決めなくていいっていうのはある種のカンファタブルな状態なんで、SIも長時間労働がなければ、いまの給料で満足する人はそこそこいるんじゃないですか。

神林:それはいると思いますけどね。ただ、そういうことにはたぶんならないですよね。

井上:だから、給料をいきなり上げるのは難しいとしても、長時間労働はなんとかしてもいいかなと思うんです。さっきも言いましたけど、やっぱり、過剰品質を求める一方で、自分でバグ作って自分でバグを直すっていうのも結構ある気がしていて。


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