国連安全保障理事会は核実験、長距離弾道ミサイル発射をした北朝鮮に対する制裁を全会一致で決議した。過去四回と比べ、より強く広範な内容だ。抜け道を与えないよう各国の監視が欠かせない。
安保理決議はヒト・モノ・カネの三つの側面から制裁を加える。まず加盟国に、北朝鮮を出入りする全貨物の検査を義務づける。
北朝鮮産の石炭、鉄鉱石の輸入を、北朝鮮国民の生活に影響が及ばない範囲で禁止する。北朝鮮の金融機関の国外での支店、営業所の新規開設の禁止や、航空機・ロケット燃料の輸出の原則禁止も盛り込まれている。
北朝鮮の外貨獲得に規制の網をかけ、資金が核やミサイル開発に使われるのを防ぐとともに、軍事用のエネルギー供給を大幅に減らすのが目的だ。
日本、韓国、米国は独自制裁を先に発表した。連携して安保理の強い決議を導いたといえよう。
安保理決議を見ると、これまで慎重だった中国がより厳しい制裁に転じたことがわかる。先月末の米中外相会談で、決議案がほぼ固まった。東アジアでは中国の南シナ海進出などをめぐり緊張が高まるが、北朝鮮の核開発阻止では米中がひとまず妥協を図ったと見るべきだろう。
北朝鮮の貿易は、韓国との南北交易を別にすれば、九割が中国。習近平政権が決議を十分に履行すれば、金正恩体制は深刻な打撃を受けるのは間違いない。ただ、決議では「北朝鮮国民に影響を与えない」ことも強調されており、制裁の成否を左右するのはやはり中国といえる。中朝国境での違法活動をどこまで監視し摘発するかが焦点だ。
実はこれまでの制裁の履行にはかなり問題があった。最近公表された国連の報告書によると、この十年間で加盟国百九十三のうち四十二カ国しか、自国の取り組みを国連側に報告していない。アフリカ諸国に未申告が多く、中には北朝鮮との武器取引を疑われる国もあった。安保理は全世界の国々に今回の決議履行を、これまで以上に強く求める必要がある。
北朝鮮は制裁に強く反発しており、金第一書記は五月の朝鮮労働党大会に向けて強硬姿勢を崩さないと懸念される。
米韓の合同軍事演習が七日に始まり、四月下旬まで続く。米空母やステルス戦闘機など圧倒的な軍事力を誇示して、北朝鮮の挑発行動を抑え込むのが狙いだ。朝鮮半島の緊張は当面続くだろう。
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