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Close-Up Enterprise

鴻海との契約延期で見えた
シャープ支援の同床異夢

週刊ダイヤモンド編集部
2016年3月4日
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自分たち以外は信じられない人間が寄り集まって、シャープの経営再建の船は山に登る Photo:Bloomberg/gettyimages

 「あんな下手クソな交渉の仕方がありますか! 今まで見たこともないですよ」。3月1日、三菱東京UFJ銀行の首脳は怒りに震えていた。

 出資契約を目前に控えた2月24日朝、シャープが鴻海(ホンハイ)精密工業に送った一通の電子メールによって、交渉の流れが大きく変わり、2月末としていた契約が延期になってしまったからだ。

 メールの内容は、シャープが抱える「潜在的な債務について」。いわば、会社が抱えている“隠れ債務”についてリストアップしたもので、3000億円規模に上るとされている。

 肝心の中身はというと、将来負債になる恐れがあるものとしてシャープがすでに開示している800億円超の「偶発債務」に加えて、現在進行中の訴訟の潜在的な賠償金、台湾資本に組み替わることによる取引変更の保証金をはじめ、「今後負債となる可能性の低いものまで、リストでは『潜在的なもの』としてゴチャ混ぜになっている」(みずほ銀行幹部)という。

 関係者によると、直ちに契約破談につながるほどの“爆弾”ではなかったものの、そうした債務リストを契約直前になって送るシャープ側の真意や、JPモルガンを財務アドバイザーに付けていた鴻海側が、資産査定の中で隠れ債務について一体どこまで把握していたのかは、いまだやぶの中だ。

 「産業革新機構に肩入れする人間が、鴻海との契約破談を意図したものではないか」「鴻海がシャープを安く買いたたきたいがために、揺さぶりをかけているだけ」

 そうした臆測が飛び交う中で、ただ一つはっきり言えることは、このやりとりによって契約がいとも簡単に延期になってしまうほど、シャープと鴻海の双方が、まともなコミュニケーションを取れていなかったということだ。

 4年前、鴻海に出資契約をほごにされたトラウマがあり、不信感が根強く残る中での難しい交渉という事情はあるにせよ、そのアプローチがあまりにお粗末で目に余るというのが、冒頭の三菱UFJ銀首脳の抑え難い怒りの理由でもある。

 一方で、この怒りはシャープの経営陣だけでなく、資金繰りの支援でタッグを組んできた、みずほ銀にも実は向けられている。

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