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【社説】

トランプ氏圧倒 世界の憂慮は深まった

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 米大統領選指名候補選び前半のヤマ場スーパーチューズデーは、共和党では不動産王トランプ氏が他候補を圧倒した。暴言を辞さずそれでも人気を集める人物の躍進は世界の憂慮を深めてもいる。

 スーパーチューズデーでは、指名候補選出の投票権を持つ代議員の約二割が決まる。

 民主党では、格差是正を訴えるサンダース上院議員が地元州などで勝利して健闘したが、クリントン前国務長官が黒人の多い南部各州で得票を伸ばして、引き離した。

 トランプ氏、サンダース氏いずれも党内反主流派だ。既成政治への不信を語り、職業政治家や支配層、既得権益を攻撃し、支持を広げてきた。

 米国の二大政党制が機能不全に陥っていることを反映している。

 共和党は上下両院で多数を占めながらも、オバマ大統領との対立を深め、政治は停滞が目立った。

 当初本命とみられていたブッシュ前大統領の弟、ジェブ・ブッシュ候補の撤退後、勝ち馬に乗る形で、トランプ氏支持を表明する上院議員や州知事が相次いだ。

 支持層に低所得の白人が多いという。移民やイスラム教徒に対する無用の憎悪をあおり喝采を浴びている。ポピュリストの手法といっていい。

 米ワシントン・ポスト紙の社説は、トランプ氏が主張する不法移民の強制送還を「(旧ソ連やカンボジアの)スターリンやポル・ポト以来の強制措置」になぞらえ、共和党指導部に「トランプ氏を支持できない、と声を上げるべきだ」と呼び掛けた。しかし、流れは変わっていないようだ。

 ドイツの有力誌シュピーゲルは米星条旗や燃え盛る炎を背景にしたトランプ氏の写真を表紙に載せ「狂気 米国のアジテーター」とのタイトルを掲げた=写真。好奇の的や政治ショーとして見てきた欧州メディアの取り上げ方も真剣味を増している。

 選挙戦の構図はまだ定まったわけではない。とはいえ、トランプ氏が共和党の指名候補になる可能性も視野に入ってきた。世界はハラハラしながら見つめることになるのか。選挙戦での真っ当な論戦を期待したい。

 

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