自民に根強い慎重論 首相の同調者なく
自民党は3日、党本部で衆院選挙制度改革に関する合同会議を開いた。衆院議長の諮問機関が答申で求めた、都道府県への議席配分でより人口比を反映しやすい「アダムズ方式」の導入について慎重論が根強く、議員からは都市部への人口集中に対する懸念や地方への配慮を求める声が相次いだ。
谷垣禎一幹事長は会議冒頭、「大都市圏に人口が集中する傾向が目立っている。こういう人口動態の中で、格差是正や定数削減のあり方を考える深刻な時に来ている」と述べ、地方を地盤とする議員の多い自民党に厳しい決断が迫られていることを訴えた。2015年簡易国勢調査では、8都県で人口が増加する一方、39道府県で減少した。
安倍晋三首相は先月26日の衆院総務委員会で、20年国勢調査の結果によりアダムズ方式を採用し、それに先立ち15年簡易調査で定数10減と区割り見直しを実施する意向を表明している。
しかし、3日の会議では、首相の意向に同調するような意見は一切なかった。「地方の人口減少幅が大きい。地方創生を掲げるなかで、地方に配慮した議論が必要だ」といった意見や「国の形を将来どうするかという視点で議論すべきだ」などと、数式を当てはめる議席配分のあり方に根本から疑問を呈する声も上がった。
また、党執行部側は最高裁が求めているのは「1票の格差」是正であり、その対応は都道府県内の区割りの見直しで十分可能だとアピールした。細田博之幹事長代行は会議後、記者団に「重要なのは憲法上、違憲かどうかの判断になっている選挙区間の格差だ。都道府県格差ではない」と語り、アダムズ方式の導入を急ぐ必要はないとの認識を強調した。
党内には「『アダムズ方式を中心に検討していく』ことにして、20年国勢調査までに本当に必要か議論すればいい」(幹部)などと導入先送り論もなおくすぶっている。意見集約は容易ではない。
大島理森衆院議長は4日、谷垣氏、細田氏と会談し、答申内容の実現に向けた自民党との調整を本格化する。【中島和哉】