GDP統計を使った怪しい議論に要注意

無形資産を反映せず指標としては不完全

インバウンドは好調だが個人消費や輸出が冴えず、2015年10~12月期GDPは2期ぶりマイナス成長となった(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

最近、ネット上で「民主党政権時代の方が、今の安倍政権時代よりも経済成長率は高かった」と言っている論者を見かけた。こんな趣旨である。

A 民主党政権下のGDP成長率を、2010-2012(暦年)で平均した値とすると、実質 1.9% 名目 0.3%
B 第2次安倍政権以降のGDP成長率を、2013-2015(暦年)で平均した値とすると、実質 0.6% 名目 1.6%

GDPを用いたもっともらしい結論

この連載の過去記事はこちら

ほら実質だとA>Bでしょ、というのである。悪いけど、それは間違っているだけでなく、知的誠実さに欠ける比較である。

2009年はリーマンショックの翌年であって、実質でマイナス5.5%、名目でマイナス6.0%成長というドツボな年であった。こういうことが起きた翌年は、GDPは反動でほっといてもプラスになる。実際に2010年は実質でプラス4.7%、名目でプラス2.4%と高かった。だから2010年を入れた時点で、平均値が高くなるのは当然というわけだ。「民主党時代の方が、今よりも経済政策が優れていた」というのは牽強付会な議論である。ちなみに、GDPを実額ベースで比較すれば下記のようになる。果たしてどっちの方が良く見えるだろうか?

A 2010~12年平均(民主党時代):514.1兆円(実質GDP)、476.5兆円(名目GDP)
B 2013~15年平均(自民党時代):526.9兆円(実質GDP)、488.3兆円(名目GDP)

 

だからといって、このデータから自民党の政策の方が正しい、という結論を導き出せるわけでもない。要はGDPという統計を使うと、いかにももっともらしい議論が出来てしまうけど、なるべく気をつけましょうね、ということになる。

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