日比野容子
2016年3月4日07時39分
JR九州の豪華寝台列車「ななつ星」が人気を集める中、今年から北海道庁が豪華寝台列車をつくれないか検討を始める。なぜJRではなく、自治体なのか。はたして実現する可能性はあるのか。
北海道の高橋はるみ知事は2015年度補正予算に、豪華寝台列車の調査費800万円を盛り込んだ。きっかけは、「北海道でも『ななつ星』のようなものをつくれないか」という道東・道北地方の五つの町村会(計68町村)の要望だった。
3月26日、長年「道民の悲願」と言われてきた北海道新幹線が新函館北斗駅まで開業する。しかし、函館と道東・道北地方は、300キロ以上離れている。函館―札幌はJRの特急で最短3時間半。道東の釧路まではさらに4時間、道北の稚内には5時間以上かかる。北海道新幹線は15年後に札幌まで延伸する予定だが、道東・道北は「最後まで新幹線の光が当たらない」(道幹部)地域だ。
提案者の一人、釧路町村会長の棚野孝夫・白糠(しらぬか)町長は「雄大な自然、四季折々の美しさ、豊かな食。北海道の魅力が九州に劣っているとは全く思わない」と意気盛んだ。だがJR北海道は深刻な経営危機にあり、豪華列車どころではない台所事情を抱える。
道内に黒字路線は一つもなく、14年度の鉄道事業の赤字は400億円。北海道新幹線も年50億円規模の赤字が見込まれ、島田修社長も「札幌延伸まで黒字化は難しい」と認める。新幹線開業に伴って寝台特急「北斗星」「トワイライトエクスプレス」が廃止され、ニセコや函館を走るSLは14年で終了。オホーツク海の流氷を楽しむ観光列車も今冬で休止した。
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