沼田千賀子
2016年3月4日02時46分
野菜や穀物などを焼く、炒める、揚げるなど高温で調理すると、アクリルアミドという化学物質が発生する。動物実験で発がん性が認められており、内閣府食品安全委員会の作業部会は「できる限り低減に努める必要がある」という評価書案をまとめた。家庭ではどうしたらいいのだろうか。
先月16日に公表された評価書案はアクリルアミドの発がんリスクについて「ヒトにおける健康影響は明確ではないが、懸念がないとは言えない」と指摘した。どういうことなのか。
作業部会はまず、日本人がどれだけアクリルアミドを摂取しているかを調べた。体重1キロあたりで算出した推定量は1日0・24マイクログラム。その約半分は炒めたモヤシやタマネギ、レンコンといった高温調理した野菜からで、残りはコーヒーや緑茶などの飲料、菓子類や糖類、パンなどの穀類からと推定された。
この量は動物実験でがんの増加が確認された量の1千分の1ほどにすぎない。しかし海外のリスク評価機関には、1万分の1より多い場合は低減対策が必要だとする所もある。「懸念がないとはいえない」という表現になったのはこのためだという。
動物実験ではなく、ヒトの摂取量とがんのリスクとの関連を調べた研究成果も多数分析した。すると、こちらは一貫した傾向はみられなかったという。
食安委の佐藤洋委員長は次のように説明する。
「アクリルアミドは動物実験で発がん性が確認されている。ただ、ヒトを対象とした調査の全体をみるとアクリルアミドが原因でがんが増えているとは認められない。そうした意味ではそれほど心配しなくてもいい。とはいえ摂取しない方がよいことには変わりないので、できるだけ減らすよう気にかけてくださいということです」
■保存方法や下準備に一手間
アクリルアミドは多くの加熱した食品に、わずかながら含まれる。加熱調理は食材をおいしく安全に食べるために必要なことでもある。アクリルアミドをまったくとらないようにするのは難しい。
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朝日新聞社会部
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