安倍内閣支持率が急低下―特定秘密保護法案への懸念反映
ウォール・ストリート・ジャーナル 12月10日(火)13時27分配信
【東京】複数の世論調査によると、安倍晋三首相に対する支持率が昨年末の就任以降初めて大幅に低下した。日本の経済回復を確実にするための成長戦略を討議すると想定されていた臨時国会が8日の会期末にかけて特定秘密保護法案をめぐり混乱したことが背景にある。
安倍政権は今月、発足2年目に入るが、同政権支持率の突然の急低下は日本経済を改造し、外交を刷新するという安倍首相の野心的な政策目標にとって劇的な結末をもたらす恐れもある。安倍氏が掲げたこの目標は、政治的な膠着状態と経済の低迷に長年あえいでいた日本に久しぶりに楽観的な見方をもたらしたのみならず、海外の投資家や政策立案者たちの注目を集めていた。
過去1年間の安倍首相支持率は近年の歴代首相の中では異例な高さだった。このことは安倍首相自身が誰よりも良く分かっている。安倍氏は2007年、支持率低下と選挙敗北を受けて就任後わずか1年で第1次政権を突然投げ出した。
最近まで、安倍氏の支持率は60%前後と高率だった。しかし過去数日間実施され9日に発表された複数のメディアの全国世論調査では急速に低下した。
例えばNHKの調査では、安倍内閣支持率は先月の60%から50%に低下した。また共同通信社によると、内閣支持率は10.3ポイント低下して47.6%となった。一方、ジャパン・ニュース・ネットワーク(JNN)の調査では、13.9ポイント下落して54.6%となった。
これら3つの調査はいずれも、連立与党が野党の反対を押し切って、国家情報の漏えいを厳罰に処す特定秘密保護法を可決・成立させたことに対する国民の懸念を反映している。
3つの調査では、同法案が十分に審議されていなかった、あるいは法律に不安を感じるとの回答が70%以上に上った。
支持率の急落を受けて、安倍首相は自らのタカ派的な政策から少なくとも一時的に離れて、経済成長措置に集中する公算が大きい、と日本大学の岩井奉信教授(政治学)はみている。
同教授は「安倍氏は支持率をさらに低下させるわけにいかない。あまり下がると、党内から、足元からぐじゅぐじゅと不満が出てくる。なのでその辺は慎重にならざるを得ないのでは」と述べた。
安倍首相は9日の記者会見で、特定秘密保護法案を国会で早急に通過させる必要があったのは、国民の安全を保護するためだったと強調したが、同時にこの問題に賛否が大きく分かれたことを認めた。
同首相は「厳しい世論については、国民からの叱責であると謙虚に真摯(しんし)に受け止めなければならない」と述べ、「もっと丁寧に時間を取って説明すべきだった」と語った。
政府関係者は、同法案が必要だったのは、米国やその他の同盟国に対し、日本の安全保障当局者と共有する情報は漏えいのリスクがないと確約するためだったと述べている。
過去10年間、日本の防衛関係者による秘密情報のリークが何度も起き、国家秘密を日本政府が保持できる能力への懸念につながっていた。
安倍首相は9日の会見で、2010年に発生した日本の海上保安庁と中国漁船との衝突を撮影したビデオ流出事件をめぐる前政権の不手際を指摘した。この一件は、国家秘密情報をめぐる論争に火を付けた。同首相は「今回の特定秘密保護法は、(こうしたリークに)だれが責任を負うかを明確にするだろう」と語った。
安倍氏は長年、保守的なナショナリストとみられており、2007年の第1次政権では日本の軍事力と世界への影響力を強化する目標を設定し、これにまい進した。これが国内の経済問題を憂慮する有権者の怒りを招いた。また当時の強引な国会運営も安倍氏の立場を損なう形となった。
これとは対象的に、昨年末発足した第2次安倍政権の高い支持率は、安倍氏が経済に集中したことと密接に関係していると広く見られている。安倍氏は1年前、20年間にわたるデフレからの脱却を目指して、大規模な金融緩和政策と財政支出を提唱して政権の座に復帰した。安倍氏は高い支持率を背景に自らの諸政策を推進し、それが株価を押し上げ、さらに自民党が7月の主要選挙で勝利するという好循環を生んだ。
しかし最近では、経済改革に対する安倍氏の意欲に対する疑念が浮上している。
8日に閉幕した臨時国会の会期中、安倍首相の経済プランの一部は円滑に国会を通過した。例えば、非効率的な事業を統合するための企業への優遇策や、国家戦略特区法案などだ。しかし製造業と輸出に依存した日本経済を変革するために必要な市場開放などを進めるためにエコノミストらが不可欠としていたその他の施策はほとんど進展しなかった。
また9日に発表された7-9月期の国内総生産(GDP)の伸び率は当初の年率1.9%から同1.1%に下方修正された。このことも、安倍首相の経済プログラム(いわゆるアベノミクス)が就任当初数カ月間のはずみを維持できるかどうかへの疑問につながっている。
日大の岩井教授は、特定秘密保護法案への国民の反発は、軍事力強化や平和憲法の改正など安倍首相の保守的な政策目標に対する国民全般の懸念を反映していると述べている。
岩井教授は「有権者もその部分(保守的な面)には警戒感があるが、経済の問題についてはそれなりに期待感がある」と指摘。安倍氏には支持率が「危険な水域」に入るまでになお若干の余裕があると付け加えた。
最終更新:12月10日(火)13時27分
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