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【社会】

東武運転士 SL修業中 来年、半世紀ぶり運行復活

大井川鉄道の増田さん(右)からSLの構造などについて学んでいる東武鉄道の船田さん(左)と黒田さん=静岡県島田市の新金谷駅で

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 東武鉄道の社員二人が、蒸気機関車(SL)の運転免許取得のため大井川鉄道(大鉄、本社・静岡県島田市)で学んでいる。東武鉄道は二〇一七年度から栃木県の東武鬼怒川線下今市−鬼怒川温泉間でSLを走らせる予定で、四十年のSL運行実績を持つ大鉄の高い技術を吸収したい考えだ。大鉄側も「産業遺産のSLを次世代に残すためにもしっかりと教えたい」と全面的に協力している。 (池田知之)

 東武鉄道のSLは一九六六年を最後に姿を消したが、観光振興や地域活性化を狙い、JR北海道からC11形207号機を借りて運行を再開することが決まった。運転技術や整備方法を学ぶため、大鉄のほか、定期運行している秩父鉄道やJR北海道に社員計十四人を派遣している。

 大鉄で学んでいるのは、ともに電車運転士の船田博美さん(50)と黒田健一さん(47)。SLを動かすための国家資格「甲種蒸気機関車動力車操縦者運転免許」取得を目指す。一月七日から始まった座学研修では、SL運転歴十五年の大鉄社員増田利美さん(41)を講師に、連日八時間、計三百二十時間に及ぶ講義が続けられている。

 SLには、自動車のアクセルに相当する「加減弁」や、変速ギアに当たる「逆転機」といった電車にはない装置が多くある。船田さんは「パンタグラフを上げれば動かすことができる電車とは全然違う」、黒田さんは「一から学ばなければならない」と新鮮な気持ちで臨む。

 二人は、三日に名古屋市の国土交通省中部運輸局で筆記試験を受験。通過すれば三カ月以内にある実技試験合格に向け、四十日間、大鉄の路線で実技の訓練をする。増田さんは「安定して走らせるには場数を踏むのが大事」と話す。

 SLを運転して二十年の大鉄鉄道部次長の石川寛之さん(47)は「SLを動かすには教科書では伝えられないこつが要る」とも。ボイラー内で燃焼ガスが効率良く流れるようにする石炭の投げ込み方や、雨が降って車輪が空転したときの対処法などの実践的な技術を身に付ける必要があるという。

 東武鉄道は従業員数四千三百人で、大鉄は百五十人。「大鉄は小さな会社だが、SLの技術は高いと自負している。それを大きな会社に広められるのはうれしい」。石川さんは同じ鉄道マンとしてSLを動かす誇りも伝えるつもりだ。

◆最盛期には60両保有

 東武鉄道は1899(明治32)年、北千住−久喜間で開業した時にSLの運行を始め、旅客列車や貨物列車に使ってきた。最盛期の1947年には60両あったが、電化が進み、最後まで残っていた佐野線での運行を66年に終えた。

 鬼怒川線での運行については、ダイヤなどの詳細は未定。同社が保有する営業用の車両は全て電車で、SLがけん引する客車はないため、新しく製造するか、他の鉄道会社から借りることを検討している。

 

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