こんにちは!今までにない1対1の個別管理の武田塾広島校です。
前回のブログで、複数のことを混ぜた練習を繰り返していくと、
どんな形態にせよ、1つのことだけに絞った練習よりも
技術が向上するということを書きました。
今回は、その続きです。
著名な心理学教授でUCLAの学習・忘却研究所の責任者である
ロバート・ビョークは以前、ベル研究所のT・K・ランダウアーと
ともに、50人の人名一覧を学生に覚えさせる実験を行っていました。
50の名前の半分は、覚える時間を与え、続けてテストを
実施しました。
残りの半分の名前は、1度見せただけでテストをしました。
ただし、テストの前に別の授業を差し挟みました。
その授業の間に、学生たちは、名前とは別のことを覚えさせられました。
つまり、半分の名前は純粋に名前を覚えることだけに時間を費やし、
残りの半分は途中で邪魔が入ったということです。
ところが、30分後にテストを実施すると、学生たちは、
邪魔が入った名前のほうを10%前後多く思いだしました。
名前を覚えることだけに集中するほうが負けたのです。
「一般に、スピード、精度、頻度、利便性で勝る練習をしたほうが、
学習効果が高いと思われてきた」
UCLAのシュミットとビョークは論文にこう記しています。
「しかし、新たな検証結果から、その一般論は限定的であると
思われる」
「限定的である」というのは、「再考の必要がある」という意味で、
もしかすると、理論をすっかり破棄する必要があるかもしれないという
ことです。
反復練習が「悪い」ということではありません。
新たな技術や学習題材に慣れるためには、ある程度の練習が必要です。
とはいえ、反復は強力な幻想を生みます。
技術はすぐに向上しますが、その状態がしばらく続きます。
一方、ほかのことを混ぜて練習すると、1回の練習時間内で
目に見える改善は反復練習ほど早くは表れませんが、
練習を重ねて得る技術や知識はこちらのほうが上です。
長い目で見ると、1つの技術に絞って反復練習を重ねると、
向上のスピードが遅くなるのです。
心理学者たちは、何年も前からこのような発見をたくさん
見てきました。
しかし、そうした個々の研究の集まりを、あらゆる練習に適用できる
一般原則に発展させたのは、1992年にシュミットとビョークが
発表した「練習の新しい概念」という論文でした。
彼らはこのなかで、運動と言語、勉強とスポーツのすべてに
適用できると説きました。
最終的に、2人が始めた運動と言語を一緒に教える講義は、
両者の対比だけに焦点をあてるのではなく、
重要な類似性の特定にも時間を割くことになりました。
「技術を学ぶさまざまな状況のなかに、そうした直感的に
正しいと思えない現象が共通の特徴として存在することに、
我々は強い感銘を受けた」と彼らは言います。
そうして、こう結論づけました。
「うわべだけを見ると、体系的に変化を取り入れた練習は、
新たな情報処理活動の追加、もしくは情報処理活動の1部が
変わるため、練習中はパフォーマンスの低下を招くことがある。
しかし、それと同時に、パフォーマンス能力の向上を生む
効果も招くと思われる」
どの活動が彼らの言う「体系的に変化を取り入れた練習」に
当てはまるのか?
「分散効果」がその1つです。
勉強時間を分散させることは、途中で邪魔を入れるのと
同じことであり、余分な時間や労力をかけなくても
学習が深まります。
「背景事情を変える」こともそうです。
学習する場所を1箇所に定めず、参考書を自習室や
自宅、図書館などに持参してそこで勉強すれば、
記憶の定着率が高まります。
どちらの学習テクニックも、1つのことに集中する
反復練習も取りいれているので、学習と学習のあいだに
ある程度の忘却も発生します。
ビョーク夫妻が提唱した「覚えるために忘れる理論」では、
忘却を招くテクニックはすべて「望ましい困難」だと
されています。
忘れると、記憶や技術を掘り起こす難易度がどうしても
高くなるため、その余分な働きにより、
記憶の検索と保存の力(学習の力)が高くなるからです。
しかし、それらとは別にもう1つテクニックがあります。
これについては、長らく埋もれていたお手玉実験に
さかのぼらないといけません。
詳しくは、こちらに書いています。
↓
インターリーブ~反復学習の落とし穴①
1メートル先の的を狙う最終テストで最高の成績を
おさめた子供たちは、1メートル先の的を狙う練習を
一切していません。
ほかのグループと違い、同じターゲットを続けて狙う、
イ短調のスケールを100回練習するといったことは
しませんでした。
また、練習と練習の間隔をあけることも、
練習する部屋を変えることも、
白衣を着た心理学者に途中で邪魔されることもありませんでした。
ひたすら2つの的を交互に狙っただけです。
2つの的の差はわずか数十センチですが、
その小さな差を行き来させるという考えが重要なのです。
そしてその考え方は、あらゆるレベルの教育で精力的に
研究される対象となったのです。
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