広島校・ブログ

インターリーブ~反復学習の落とし穴④

風景画

こんにちは!今までにない1対1の個別管理の武田塾広島校です。

今回は、邪魔を入れる学習は美的判断にも影響を及ぼすことを
書きます。

個々の画家のタッチを判別できるようになるのは簡単ではない。
それも、さまざまなジャンルの絵を実験的に描いた画家や、
ゴッホでもピカソでもオキーフでもない、無名な画家となれば
なおさらです。
絵画から画家の存在を感じとるのは難しいし、簡単に感じとれる
コツもありません。

アメリカ人哲学者のネルソン・グッドマンは画家のスタイルに
関する論文を書いています。
「ときには、色彩のようにはっきりとわかる特徴が、
空間の表し方のような別の特徴を体現していることもある」
何のことかさっぱりわかりませんよね?


グッドマンは、とらえづらく謎めいた画家のスタイルほど、
鑑賞者にとって価値があると主張したことで有名です。
「表面的に奇抜な特徴ですぐに特定できるわかりやすい
スタイルは、当然、ただのワンパターンだと非難される。
複雑で繊細なスタイルは、切れ味鋭い比喩のように、
ありふれた言葉に単純化できない」

さて、ここに問題があります。
絵画鑑賞は、生物学、楽器演奏、ドイツ語、叙事詩とは
かけ離れた世界です。
覚えないといけない対になる単語や化学結合もなければ、
覚えないといけない演奏手法やフレーズや専門用語も
なければ、評価の基準にできる言語または運動能力を使う
タスクもありません。
絵画の鑑賞能力には、いわば魔法の要素が含まれます。
だから、学習を研究する科学者は昔から、
画家のスタイルの研究についてはグッドマンのような
科学者に任せてきました。
しかしそれは、2006年までの話しでした。

何度もブログに登場している著名な心理学教授で
UCLA学習・忘却研究所の責任者である
ロバート・ビョークは、博士課程を修了した
ネイト・コーネル(現在はウィリアムカレッジの心理学者)
とともに、途中で邪魔が入っての学習が、
記憶の保持だけでなく美的判断にも影響を及ぼすかどうか
確かめることにしました。

コーネルとビョークは、まず12人の風景画家による絵画を
リストアップしました。
有名な画家(ジョルジュ・ブラックやジョルジュ・スーラ)
も数人含めたが、被験者が聞いたことのない画家が
ほとんどでした(マリリン・ミルレア、イェイメイ、
アンリ=エドモン・クロスなど)。
2人は72人の学生に向かって、コンピュータ画面上の
絵画を覚えるようにと言いました。
そのうち半分の36人の学生は、1度にすべての絵を
勉強しました。画面に絵が表示される時間は1作品につき
3秒で、絵の画像の下に作者の名前が併記されました。

たとえば、クロスの絵が3秒ごとに6作続けて表示され、
その次はブラックの6作が3秒ごとに絵の下の作者名と
ともに表示され、その次はイェイメイの絵が6作、
という具合です。
同じ作者の絵を被験者がひとまとめに見ることから、
コーネルとビョークはこれをブロック学習と名づけました。

残りの半分の36名の学生も、絵を見る時間(1作品につき
3秒)と絵の下に作者名が表示されるのは同じでした。
ただし、絵が画面に表示される順番は作者別ではなく
ランダムでした。
そうして両グループは、12人の画家の絵を6作ずつ、
計72作品を勉強しました。
どちらのグループが画家のスタイルをうまくつかむことが
できたのでしょうか?

絵をすべて見終えた後、学生たちは547から3ずつ引いた
数を順に数えるようにと指示されました。
これはいわば記憶の口直しで、短期記憶から絵の記憶を
一掃し、テストの前に絵から注意をそらすことが目的でした。
そして、実験の目的を果たすためには、テストのときに
学生が見た絵を1作品も含めてはいけない。
学生が絵を勉強したのは、画家のスタイルを学ぶためであって、
絵を記憶することではありませんでした。
ブラックのスタイルを「わかって」いるなら、
見たことのない絵でも彼のタッチに気づけるはずです。

コーネルとビョークは、学生たちが勉強していない風景画を
1作ずつ順に48作見せ、12人の画家からその絵の作者を
クリックして選ばせるテストを実施しました。

2人はどんな結果を期待していいのかわかりませんでしたが、
ブロック学習をしたグループが優位に立つとは限らないと
思っていました。
それには理由がありました。
まず、人が画家のスタイルをどのように判別するかは、
まだ明らかになっていなかったということ。
そしてもう1つは、1950年代に抽象画の作者名を
被験者に覚えさせるというよく似た実験が行われており、
その実験では顕著な違いが見られなかったことです。
ブロック学習で覚えた被験者とランダムに学習した被験者の
成績はまったく同じだったといいます。

しかし、今回は違いました。
ランダム学習したグループは65%正解したのに対し、
ブロック学習したグループは50%しか正解しなかったのです。
科学の世界では、このくらい違いがあれば、
何か意味があると考えます。
だから、2人は別の学生を被験者にして
もう1度実験を行いました。

今度もやはり、ブロック学習ランダム学習を行いました。
被験者の学生に対し、6人の画家の作品をブロック学習
勉強させ、別の6人の画家の作品をランダム学習で勉強させた
のです。
結果は同じでした。
ランダム学習で勉強した画家の絵の正解率が65%で、
ブロック学習で勉強した画家の絵の正解率は50%でした。

「画家について教えるとき、その画家の作品を続けて見せるのが
一般的な方法だ」コーネルとビョークは論文にこう書いています。
「美術史の教師(そして実験の被験者)は納得がいかないかも
しれないが、別の画家の絵をあいだに差し挟むほうが、
同じ画家の作品を続けて見せるよりも効果的だと判明した

次のブログで書きますが、被験者の学生は、結果を知った後でも
ブロック学習のほうがよかったと感じることのほうが多いのです。

この差し挟む行為を、認知心理学の世界ではインターリーブ
呼びますが、その話しは次回のブログで。

 


 

 

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