(cache) 学習環境に変化をつける～勉強の場所を変える - ブログ - 広島校 - 大学受験の予備校・学習塾・個別指導・勉強法は逆転合格の武田塾

こんにちは！今までにない１対１の個別管理の武田塾広島校です。

勉強していたときの環境が復元されたほうが、
より多くを思いだすことができるという話しを
前回のブログで書きました。
今回は、復元の手がかりが多いほど、思いだしやすくなる
ということを書きます。

１９７０年代半ば、当時ミシガン大学で心理学の研究をしていた
スティーヴン・スミスとロバート・ビョーク、そして
アーサー・グレンバーグの３人は、
同じものを場所を変えて２回覚えたらどうなるのだろうと考え、
実験を行いました。

学生を集めて４文字からなる４０の単語（「ball」や「fork」など）
を見せました。

グループAの学生には１０分の学習時間を数時間あけて２回与え、
その半数は地下にある雑然とした小さな部屋で、
残りの半数は窓から庭が見えるきれいな会議室で覚えさせました。

グループBの学生にも同じ学習時間と同じ回数を与えましたが、
１回目は窓のない小さな地下の部屋、
２回目は庭の見える窓がある部屋でした。

２グループに、同じ単語を、同じ順番で、同じ時間をかけて
覚えさせました。
ただし、グループAは２回とも同じ環境で、
グループBは異なる環境が設定されました。

２回目の学習時間が終わると、それぞれの単語に
ポジティブまたはネガティブな連想のどちらが生まれるかを
決めさせました。
これは、課題をやり終えたという印象を持たせるための
策略でした。
それ以上、単語について考えたり、覚えているか確認したり
する必要がないと思わせるためでした。

実際には、課題はそれで終わりではありませんでした。

３時間後、実験の第３段階として、学生たちに１０分の
制限時間を与え、覚えた単語をできるだけたくさん思いだして
書く課題を与えました。
このテストは、ごく普通の教室という”中立”の部屋で実施されました。
背景情報の研究のときのように、環境を再現することは
ありませんでした。
この第３の部屋に入ったことのある被験者は１人もおらず、
彼らが勉強に使った他の２部屋とは全く似ていませんでした。

テストの点数には著しい差が現れました。
２回とも同じ部屋で勉強したグループは、
４０単語のうち平均１６個思いだしました。
勉強する部屋が変わった学生は、平均２４個思いだしました。
単純に勉強する場所を変えただけで、思いだす数が
４０％以上増えました。
論文の言葉を借りるなら、この実験によって、
「被験者を取り巻く環境の変化に伴い、思いだす力に大きな改善が
見られることが明らかになった」のです。

勉強する部屋を変えたほうが、同じ部屋で勉強するよりも
思いだしやすくなるのはなぜでしょうか？
１つの可能性としては、最初の部屋で勉強したときに
単語に付随する情報と、それとは若干異なる別の部屋で
覚えたときに付随する情報が、脳内で別々に記憶されている
ことが考えられます。この２種類の情報には重なる部分が
ありますが、情報は多いほうがいい。
あるいは、２種類の部屋で覚えることで、勉強した単語、
勉強中に目や耳に入った事実、勉強中に思ったことを
思いだす手がかりの数が２倍になるのかもしれません。

例えば、最初の部屋で「fork」を覚えたときは、
ベージュの壁、蛍光灯、乱雑に積み重ねられた本が
その記憶を彩り、
次の部屋で「fork」を覚えたときは、
窓から降り注ぐ太陽光、庭に立つ立派なオークの木、
空調の音が結びついているのかもしれません。

そうすると、「fork」には２種類の知覚の層が組み込まれるので、
勉強したときの環境を脳内で「よみがえらせ」て、
単語もしくはその意味を思いだす機会が少なくとも
２回生まれます。
１号室の記憶がダメなら、２号室の記憶から思いだすことを
試みるというわけです。

思いだすのに視点を変えるということを、私たちは
しょっちゅう行っています。
例えば、俳優の名前を思いだしたいときがそうです。
その俳優が出演した最新作の場面をたぐり寄せたが、
顔はわかっても名前が思いだせない。
新聞に載っていた顔、テレビ番組に出演していた姿、
生で見たことがあればそのときの記憶まで引っ張り出します。
このように、脳内にある複数のレンズを使って名前を
思いだそうとするのです。
複数を使うほうが、自然と情報は多くなるのです。