朴政権3年 残る任期で日韓の深化を
韓国の朴槿恵(パククネ)大統領が就任から3年を超えた。残る2年の任期中、影響力が低下する「レームダック化」に抗しながら、内政や外交で成果を挙げることができるか。政権運営は困難を増しそうだ。
朴大統領はきのう、「3・1独立運動」を記念する政府式典で演説し、昨年末の従軍慰安婦問題に関する日韓両国の合意を踏まえて「歴史を直視する中で互いに手を取り合い、日韓関係の新たな一章を開くことを望む」と述べた。
慰安婦合意を政権の主要な外交実績と位置付け、関係改善を進める姿勢を明確にしたといえる。
朴政権の外交姿勢には、このところ変化が見える。対日関係で改善へと大きくかじを取る一方で、核開発を進める北朝鮮には、開城(ケソン)工業団地の操業中断などかつてない厳しい姿勢で臨んでいる。
また、北朝鮮のミサイルへの対応として、米軍の地上配備型高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓国配備の検討を始めた。これには中国が強く反発している。朴政権は発足以来、中国への接近が目立っていたが、北朝鮮の脅威への対応を優先し、韓国本来の米国重視のスタンスに戻った格好だ。
こうした韓国外交の路線転換は、日本にとって基本的に歓迎できる。北朝鮮の暴走を阻止し、中国の急速な軍事的台頭と対峙(たいじ)するためには、日米韓の連携強化が最も効果的であるからだ。
これまで韓国では大統領の残り任期が少なくなると、唐突に対日強硬姿勢を打ち出すケースがよくあった。朴大統領の場合、幸いそのパターンとは逆になりそうだ。
しかし、次の大統領が日韓関係を重視する保証はない。慰安婦合意に反対する野党が政権を取る可能性もある。朴大統領の残り任期中に、日韓関係を後戻りできない地点まで深化させておきたい。
慰安婦合意の完全な履行までには時間がかかるだろう。日本側にも根気と細心の注意が必要だ。政府や与党など関係者から慰安婦合意の精神に反する言動が飛び出し、関係改善の流れを止めることのないよう心掛けるべきである。
=2016/03/02付 西日本新聞朝刊=