FUJIFILM X-Pro2 SHOOTING REPORT
お待たせいたしました。発売前からネット上に情報や写真が溢れ、話題沸騰となっているFUJIFILM X-Pro2のシューティングレポートをお届けいたします。筆者が手にしてみて、まず初めに感じたのは「変わらないな」。もちろん悪い意味ではありません。それはX-Pro1を愛用する者として、構えた瞬間から違和感がなかったということ。そのまますんなりと撮影に臨めたのです。しかし、それだけではありません。数年間待ち焦がれたユーザーにもきちんと応えてくれるだけの熟成がありました。それは・・・。この辺りをじっくりとお伝えしていこうと思います。
( 写真/文:A.Inden )
画素数以上に見える美しさ
画素数が1630万画素から2430万画素へと大幅アップしました。センサーサイズを変えずに画素数を増やすと、受光素子一つ一つの面積が小さくなり、ノイズの増加、画質の低下の要因となることはご存知の通り。画素数と画質とのバランスはカメラにとっての肝ですが、それはセンサーと画像処理エンジンとの組み合わせとも言い換えることができます。新開発のセンサー「X-Trans CMOS III」と画像処理エンジン「X-Processor Pro」を搭載したX-Pro2の画は、従来機より緻密さは増し、階調も豊かになりました。ただ、それだけでは言い尽くせない何かを、言ってみれば「美しさ」のようなものを感じます。フィルムを作り続けてきたメーカーならではの、画作りに対する自信や美学の現れなのかもしれません。
直線的なビルの意匠や、広場の床面のタイル一枚ずつが繊細に描写されています。拡大してみると、画素数を超えた緻密さで描かれているように感じてしまいます。そしてハイライトからシャドーまでの豊かな階調も見事ですね。
直射日光が均一に当たっているため立体感が出にくい条件ですが、画面全体に砂の質感が見事に表現されていますね。ピントが合っている砂の一粒一粒が数えられそうです(笑)。
熟成ポイント1:デュアルカードスロット
一番欲しかった機能です。2枚のカードに同じデータを同時に書き込む。万に一つのことかもしれませんが、何かあった時の保障としては大変心強いですよね。ミラーレス機としては世界初の機能だそうです。世界中のプロが、X-Pro2に注目する大きな理由の一つかもしれません。ボディーサイズを大きく変えずによくぞ搭載してくれました。あっぱれ!
好みのスタイルでピントが合わせられる快適さ
OVFとEVFがレバーひとつで瞬時に切り替えられる「アドバンストハイブリッドマルチビューファインダー」。遊び心が感じられるせっかくのこの機能ですが、実は従来機では背面液晶に頼りがちでした。本機ではEVFが約236万ドット(従来機は約144万ドット)に増強された事や、視度補正ダイヤルの追加、エレクトロニックレンジファインダー(ERF)の採用、フォーカスエリアの移動操作の進歩など、ファインダーやピント合わせの機能が大幅に改善されています。まさに進化したレンジファインダー。おかげで背面液晶に頼る事もなく、ファインダーだけでピント合わせもフレーミングもとてもスムーズに。OVFとEVF、2種類の違うカメラを手にしているような感覚さえ覚えるほどです。
ピントはテーブルに置かれたペーパータオルに。窓に写り込んだ車はボケすぎず主張しすぎない程度に。そのバランスをEVFでじっくり確認しながら詰めていく。新しくなったファインダーのおかげで暗い室内もクリアーに見え、狙い通りの一枚に仕上がりました。
黒へと落ちてゆくシャドーのトーンがとにかく美しい。フィルムシュミレーションを「ACROS」に設定してのカットです。ファインダーから目を離すことなく露出補正ダイヤルを回し、一番美しく見える露出を探る。ドット数が増しただけで、ファインダーでの画作りが圧倒的にやりやすくなりました。
レンジファインダーの魅力のひとつは、切り取る画角の外まで確認できること。逆に画面の中心でしかピントが合わせられないことは、弱みとして挙げられます。本機のハイブリッドなOVFはピント位置を簡単に変えられるので、その点を見事に克服しているのです。ピントは赤いヘルメットに、軽くシャッターに指をかけ緑の合焦サインを確認。フレーミングされた外から移動してきた赤いカバンを追う。完璧ですね!
熟成ポイント2:フォーカスレバー
ピント位置の移動がスムーズなのはこのフォーカスレバーのおかげ。従来機では十字キーだったものが、ジョイスティック方式に。上下左右斜めと、自由な動きを直感的に操作できるのです。
高感度はISO12800までが常用に
高感度で実用的に使えるのは、筆者の感覚では概ね最高感度の2段下くらいまででした。ですが、X-Pro2には良い意味で裏切られました。ISO1600、3200は、当たり前のように綺麗に写ってしまったのです。「えい」とばかりに12800に。コントラストは少々アップ、ノイズも乗りますが嫌な感じは全くありません。そして「ACROS」と高感度の組み合わせで新たな表現も。それはまた後ほど。
白い船体のペンキの質感、打たれたリベットの凹凸、レリーフの立体感、水面の写り込み。どこを見ても素晴らしいですね。これでISO 12800だなんて。
フラッシュ撮影禁止の室内です。もう心配することはありませんね。鮮やかな色彩もしっかりと表現されています。
先ほど申し上げた「ACROS」+高感度の組み合わせでモノクロフィルムを増感現像したかのような粒子が現れます。高感度のノイズが粒子に見えるのは、フィルムを作り続けてきたメーカーだからでしょうか。
熟成ポイント3:ISOダイヤル・露出補正ダイヤル
まずISOダイヤル。「良くやった!」と素直に感じました。これで背面モニターを使わずに撮影ができるようになりました。他の場所を占有することなくダイヤルを増設できる二重構造はベストな選択ではないでしょうか。そして露出補正ダイヤルは地味な変更ですが、ふた回りぐらい大きくなっています。小型であることが持て囃される風潮の中、クリエイディブな撮影に欠かせない露出補正ダイヤルを操作しやすくしたことは、大きく評価されるべきでしょう。
EVFが見やすいからなのか、新しいセンサーと画像処理エンジンが出力するトーンが絶妙だからなのか、気がつくと太陽の位置も気にせず逆光で撮っています。もちろんレンズも優秀なのですが、これだけオーバーに振っても青空のトーンが残るなんて、X-Pro2、想像以上です。
豊富なレンズが楽しめる、フジフイルム純正のMマウントアダプターを装着してみました。今回はZEISSレンズを。しっとりとした描写と独特の立体感が素敵ですね。
進化の中につくり手の思いが感じとれるボディ
X-Pro2のレビュー撮影、楽しませていただきました。X-Pro1のオーナーとしてとても待ち遠しかったのですが、気がつくと純粋に撮る楽しみに浸っていました。先代とどこが変わったのでしょうか? 冷静に見てみると新しい装備はエレクトロニックレンジファインダー(ERF)がついたことぐらいでしょうか。ではさほど変わらなかったのでしょうか? いえ、撮影をとことん楽しめるカメラへと大きく変わっていました。多くの意見を集め、一つ一つ真摯に検討し、実際に触って確かめ作り上げてきた。そんな物づくりに対する姿勢が、ファインダーやダイヤルはもちろん、レバーのような小さな部品からでも伝わってきました。短い試写でしたが、X-Pro2はまるでいい革製品が馴染んでくるかのように体の一部となっていました。そして使い込むほどに、さらに良くなるだろうなと想像させてくれました。みなさんも是非そんな感覚を味わってみてくだい。
最後に一つご報告が。別れがつらくてポチッとしてしまいました。夏のボーナス払いですが…
( 2016.03.03 )