時代の変化に取り残されない、強い組織を築き上げていくためには、優秀な人材の採用が欠かせません。きっと多くの企業が日々、頭を悩ませながら採用力の向上を図っていることでしょう。その方法は様々ありますが、中にはユニークなキャンペーンを実施して優秀な人材の採用に成功し、成長を続けている企業もあります。
その企業は恋愛マッチングサービスの「pairs」、カップルのためのコミュニケーションツール「Couples」を提供する株式会社エウレカ。
実施した採用キャンペーンは、「3ヶ月間リファラルのキャンペーンを実施し、紹介数100名、採用数25名という目標のもと全社員で人材確保に取り組む」というもの。海外に比べ、リファラルリクルーティングが一般的でない日本において、なぜこのようなキャンペーンを実施することにしたのか。採用担当の庄田一郎氏に詳しい話を伺ってきました。
【プロフィール】
京都大学卒業後、新卒でリクルートに入社、SUUMOの営業を経て、リクルートホールディングスへ異動後、エンジニア新卒採用に従事。退職後は個人事業主として採用業務の請負を行っていたが、請負先であったエウレカに採用広報担当として入社。
庄田:採用担当として、自分がエウレカにジョインしたのが11月。まだ3ヶ月くらいしか経ってないんですけど、入社してすぐに採用の体制にちょっとした違和感があったんです。
— ちょっとした違和感ですか?
庄田:弊社って創業から7年経つんですけど、実は採用・広報担当がこれまでいなくて。採用に関しては、役員の中だけで完結していたんです。特別何か問題があったわけではないんですけど、その状況を客観的に見たときに、会社を成長させる原動力である「人」に対して、社員が目を向いていないのは正しい状態ではないなと。
成長を続ける組織を作っていくためには、やっぱり全社員が採用に一定の興味は持つべきだと思ったので、すぐに役員陣と話をすることにしました。実際に話をしていく中で、これまでは採用の8割がエージェント経由だったことが分かって。
創業時から懇意にしているエージェントだったので、社内のこともある程度わかっているんですけど…とはいえ、日々の変化のスピードについてこれるわけではない。であれば、「全員採用を文化にする。そして採用人数の50%を社員経由にすることが健全な企業の状態だと思う」という考えを提案したら、納得してもらえたので目標を立てて、実行に移すことにしました。
— 具体的にどんな目標を立てたのでしょうか?
庄田:具体的な数値を説明すると、採用人数の50%は社員の紹介。残りは自社媒体からの採用が25%、媒体・エージェント様経由での採用が25%といった割合です。もちろん、定めた目標は全社会を通して全社員に共有したのですが、伝え方には気を配りました。
いきなり、「採用目標の半分を社員紹介で達成します。みなさん紹介してください」といったところで、誰も動いてくれない。それでは元も子もないので、自分が感じている違和感をきちんと言語化して、「なぜ、こうした体制にするのか?」を全員が分かるように伝えました。
確か…「企業という生き物の一部である以上、企業の進化を考えることは当然のことである」という前置きをした上で、「企業の進化および世の中への価値提供の媒介がプロダクトであるのならば、それを生み出すのは人であって、人が企業価値の根源であると考えたときに、新たな優秀な人材を獲得することは当たり前のこと」って言ったような気がします。
最初はその話をしただけで、全社会が終わりました。
— まずは、目的をきちんと理解させることが大切だと。
庄田:そうですね。時間をかけて目的を説明したこともあってか、社員の人たちにもある程度、納得してもらえた感触があったので、90人の社員を5人×18チームに分けて、「全員で25人の採用を目指し、100名の紹介人数を達成することを目標とする」キャンペーンをスタートすることにしました。
キャンペーンを進めていくにあたって、全社がどれだけ採用に意識を向けられるか。これがすごく大事だと思ったので、キャンペーンが始まってから、自分は黒子に徹し、「どういった制度があればリクルーティングしやすいか?」を考えたり、「会社が本当に求めている人材はどういった人か?」を共有したりしていました。
— 実際、キャンペーンをスタートさせてから順調に進んでいったんですか?
庄田:いやぁー、想像以上に順調に進んでいきましたね(笑)少しずつ、採用へのモチベーションが高くなっていったのか、自分たちでイベントを開催して集客をしようとする人たちが現れたり、逆に自分がイベントに行きまくって、優秀な人を自分で掴みに行こうとする人たちが現れたりっていう、すごく良い影響が出始めて、もう10名くらいの採用に成功してます。
— 1ヶ月半で10名ですか!?すごいスピードですね。
庄田:まだ面接できていない人が30~40名いるので、目標としていた人数は普通に超えるかなと。もちろん、一過性のもので終わらせたくないので、今後もやり続けていくんですけど、全社員で成功体験を積むことに価値があると考えています
きちんと全員で定性的・定量的な目標を立てて、それを追いかけ、達成する。この一連の流れをやり切ってこそ、初めて「全員採用が文化になった」と言える。短期間でその成功体験を作れることは想像以上だったと同時に、経営陣と社員の信頼関係、社員の当事者意識を感じましたね。(笑)
— リファラルリクルーティングの成功の秘訣として、全社員の”採用の自分ごと化”が挙げられると思うのですが、これは自然となっていったのでしょうか?
庄田:自然となっていきましたね。もちろん、モチベーションコントロールをするために、自分が人をたくさん連れてきたり、役員だけのチームを作ったり。ちょっとした工夫でモチベーションを向上させることもあったんですけど、多分、土台には「このままのメンバーでは、自分たちがやりたいことに近づけない……」という思いがあったからこそ、自然と”自分ごと化”されていったんだと思います。
— キャンペーンをスタートした月から上手くいったんですか?
庄田:最初の月から、すごく上手くいったんです。これも小さな成功体験だと思っていて。社員の人たちが「紹介した人が実際に同じ会社の社員になった」ことを嬉しく思ってくれたらしく、そこから上手く進んでいきました。
あとは、最初にも話したんですけど、採用・広報担当がこれまでいなかったので、広報やブランディングの材料がたくさんあったんですよ。でも、それが出来ていなかった。
「それは勿体ないな……」と思って、自分が入社してからは「eureka TechBlog」を作ったり、コーポレートサイトをリニューアルしたり、あとは外部のイベント登壇や自社イベントを増やしたりして、エウレカのコーポレートブランドを少しずつ醸成していったんです。ある程度、ブランド価値があったからこそ、最初からキャンペーンが上手くいったのかもしれません。
(後編へつづく)
後編では、採用キャンペーンの実施によって起こった、社内の変化について詳しく伺っていきます。
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