WEDGE REPORT

なぜソーシャルゲーム業界はこんなにだらしないのか
続出する不祥事 度を越す”射幸心煽り”

WEDGE編集部 伊藤 悟 (いとう・さとる)

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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 そうすると、カード合わせの「徐々に出現率が下がっていく」という状態にはなっていないので、ギリギリセーフとも言えるんです。どう判断するかは議論がわかれるところですが、問題視する人も多くいます。

山本 ソーシャルゲーム業界の多くの企業がカード合わせ的なものを提供しており、それぞれギリギリのラインで何かしらの逃げ口をつくってやっているのが実情です。ガンホー、ミクシィ、スクウェア・エニックスなど、返金騒動に見舞われた企業は多くあります。

山本一郎(Ichiro Yamamoto)
   イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。データビークル取締役。東北楽天ゴールデンイーグルス編成・育成データ担当。1996年慶應義塾大学法学部政治学科卒業。ベンチャービジネスの設立や技術系企業の財務・資金調達など技術動向と金融市場に精通。ゲーム業界も熟知している。(写真・井上智幸)

 

「賭博場」開設で炎上したドーナツ社

 ──3件目の事案としてドーナツ社がリリースしたRMT(リアルマネートレード)仲介サイト開設の問題もありました。

山本 あれは問題外の事案です。「賭博場を開くので皆さん来てくださいね!」と宣言したに等しい。

木曽 RMTとは、ゲーム内で取得できるアイテムやゲーム内通貨を現金取引する行為のことです。使い方によっては射幸心を煽る賭博的なサービスの提供を可能とするもので、以前から問題視されていました。多くの企業は「ゲーム規約でゲーム内アイテムによる現金授受を禁止し、適切な監視を行っている」という理屈で、懸念をかわし続けてきました。

 ところが今回は、自社のゲーム内で獲得できるデジタルアイテムに加えて、あらゆるゲームのアイテムをユーザー同士が取り引きできるRMT市場アプリのリリースを行ったのです。その後ドーナツは「サイト上に誤って記載された」と主張したものの、このアプリの機能をAPI(ソフトウェアからOSの機能を利用するための仕様、またはインターフェースのこと)としてゲーム内に直接取り込めるような仕様とし、自社ゲームはもとより他社に対してもゲーム内公式RMT市場の採用を推奨しました。これは従来の「ゲーム機能が賭博的には利用されない」という論拠を根底から覆し、ゲーム内アイテムの現物資産としての価値を認めたうえで、その現金取引を公式に進めたということになります。

山本 ドーナツは基本的な法律すらわかっていなかったと思われます。賭博罪の可能性が高く、刑法で禁じられている賭博開帳図利に引っ掛かる可能性すらあります。これは賭博場を開き、人を集めて賭博による利益を図った者を罰する法で、主に胴元の取り締まりに適用されるものです。まともな企業とはおよそ無縁な法律のはずです。

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WEDGE編集部 伊藤 悟(いとう・さとる)

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