2016年03月01日
人気イラストレーターのJERRYが、偏愛た... 続きを読む
かつてはサン・シーロのファンからブーイングを浴びていた本田だが、今は惜しみない拍手が送られている。(C)Getty Images
それにしても、今シーズンのミランはサプライズに満ちている。サプライズの西の雄がミハイロビッチなら、東の雄は本田だろう。
11試合連続でベンチスタートとなった9月下旬から12月中旬にかけて、チームカーストの最下層に位置し、最後の数分だけしかプレーさせてもらえなかったのが、今や不動のレギュラーだ。まるで天地がひっくり返ったような違いである。
おまけに、かつて「なぜ自分を使わないのかわからない」と監督に問うていた本田が、今回のトリノ戦後にはこんなコメントを残したのだ。
「ミハイロビッチとともに前進しなくてはいけない」
本田の未来はミハイロビッチの去就にかかっている――。これまでは誰もがそう信じていた。つまりミハイロビッチが解任されれば本田は残るし、留任すれば退団するものだと。
しかしここにきて、それも完全に逆転だ。今の本田はミハイロビッチの重要な駒であり、本田自身もミハイロビッチの留任を願っている。
実際、本田は持てる力の全てを使ってミハイロビッチを助けている。先のトリノ戦でもマン・オブ・ザ・マッチ、もしくその一人と呼べる働きだった。26分の直接FKは惜しくもクロスバーを叩いたが(ついに直接FKも蹴らせてもらえた。結果を見る限り、これが最後ではなさそうだ)、いつもプレーの中心にいた。
2年前の入団当初は課題のひとつだった守備も、今や中盤の誰よりも精力的にこなしている。また、アバーテとの息の合ったコンビネーションも復活した。
最近では、本田がボールを失っても、サン・シーロの観衆はもうブーイングを浴びせたりはしない。
かつて「未確認物体」と揶揄されていた本田は、いつのまにかチームメイトに、監督に、そしてサポーターにまで“安心”を与える存在に変わったのだ。
文:マルコ・パソット(ガゼッタ・デッロ・スポルト紙)
翻訳:利根川晶子
【著者プロフィール】
Marco PASOTTO(マルコ・パソット)/1972年2月20日、トリノ生まれ。95年から『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙で執筆活動を始める。2002年から8年間ウディネーゼを追い、10年より番記者としてミランに密着。ミランとともにある人生を送っている。