「警察学校は、優秀な警察官を育てるための機関ではなく、適性のない人間をふるい落とす場である」。ベストセラーとなっているミステリー小説「教場」(長岡弘樹著、小学館)は、警察学校を舞台に、厳しい訓練や新人警察官の成長などを描く。市民生活の安全を守り、ときに危険な任務にあたる警察官はどのように養成されているのだろうか。その一端を知るべく、報道機関向けに今年2月に行われた滋賀県警察学校の体験入校に参加した。(北野裕子)
「番号1、2、3…」。午前6時半。朝の静寂を破り、昨秋警察官に採用されたジャージー姿の初任科生18人の声がグラウンドに響き渡る。体操と駆け足を20分ほどこなす。初任科生の長い1日の始まりだ。
滋賀県警察学校は、毎年100人前後の警察官の“卵”たちが学ぶ。大卒などの短期生は6カ月、高卒などの長期生は10カ月、寄宿舎で共同生活を送る。学校生活はあらゆる場面で厳しい規律が課せられている。
「3歩以上は走る」「授業開始5分前には、教官に全員そろったことを報告」「携帯電話を触ることができるのは、休日のみ」…。 日常生活で3歩以内で済む移動は少ないだろう。校舎、寄宿舎、グラウンド、と学校内では常に駆け足の音が響いている。
時間厳守は徹底。朝の点呼、授業開始など1人でも遅れたら連帯責任で、腕立て伏せやスクワットなどが全員に課される。5限目までの80分の授業が終わるまで、気の抜けない時間が続く。授業は、法学や一般教養など30近い科目を学ぶ座学から、拳銃操法や救急法、柔道や剣道、体育など多岐にわたる。知識、体力ともバランスよく身に付けることが求められる。
copyright (c) 2016 Sankei Digital All rights reserved.